TCFDに基づく情報開示

当社は、2019年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。資産運用会社として、気候変動問題が投資先企業に及ぼす影響をリスクと機会の両面から分析し、お客さまに長期にわたり質の高い投資リターンを提供します。同時に、エンゲージメントを通して温室効果ガス(GHG)削減に向けた投資先企業のイノベーションやトランジションを後押しすることで、サステナブルな社会の実現に貢献します。

Ⅰ. 基本的な考え

1 ガバナンス

(1) 取締役会による監督
当社は、経営理念ならびに企業活動の基本方針である「FD・サステナビリティ原則」に資産運用会社として、また一企業市民としてサステナブルな社会の実現に貢献することを明記しており、気候変動を含むサステナビリティの取り組みは最重要経営課題と位置付けています。

全社的な基本方針や実行計画については、実務レベルでのサステナビリティ推進部会およびCEOおよび執行役員が出席する経営会議で十分に検討を行ったうえで、取締役会が決議するプロセスが定められています。また、取締役会は年2回の頻度で実行計画の進捗に関する報告を受け、業務が適切に執行されているかモニタリングを行っています。

取締役会は、ESG投資の取組み状況の確認、スチュワードシップ活動への助言のほか、当社のマテリアリティを中心に幅広いサステナビリティ課題について中長期的視点から活発な議論を行い、経営陣への提言も行っています。

(2) 経営陣の役割
気候変動を含むサステナビリティに係る全社的な方針や実行計画はCEOの責任のもとで遂行されています。全社的な方針・計画の下、スチュワードシップ活動については責任投資オフィサー、資産運用業務については運用部門の各担当役員、レピュテーショナルリスクについては商品・アドミニストレーション部門の各担当者役員および、当社自身のリスクと機会はコーポレート部門の各担当役員がそれぞれリーダーシップを発揮し、個々のリスクと機会への対応をスピーディーに行っています。

2 戦略

(1) 気候変動のリスクと機会
当社は、気候変動がもたらすリスクと機会について、以下の通り認識しています。

リスク

            

  • 地球温暖化がもたらす経済的損失による世界的な株式市場の下落に伴う運用資産残高の減少
  • 脱炭素経済への移行により当社の投資先企業がネガティブな影響を受けることによる相対的な投資パフォーマンスの悪化
  • 当社の投資行動が温室効果ガス排出量削減の観点で不適切と見做されることや、当社の運用商品がいわゆる「グリーン・ウォッシュ」と見做されることによるレピュテーショナルリスクの増加
  • 国内外の気候変動関連情報開示に係る規制強化への対応、自社の温室効果ガス排出量削減のための再生エネルギー調達などによるコスト増
機会
  • 脱炭素経済への移行に貢献する革新的技術を有する企業や、ビジネスモデルの変革により成長が期待できる企業など、新たな投資機会の増加
  • 気候変動問題への取り組みなどの非財務情報の調査・分析能力を向上させることによる相対的な投資パフォーマンスの改善
  • 気候変動問題の解決ないしは適応をテーマとする運用商品に対する投資家ニーズの高まりによるビジネス機会の拡大

(2) ビジネス・戦略への影響

運用

            

  • 当社はすべてのアクティブ運用商品について、サステナビリティを考慮した運用を行っています。近年、こうした気候変動を含む非財務情報の重要性の高まりを踏まえ、私たちは、非財務情報の株価や債券価格への影響について定性的・定量的な調査分析を行うことによる投資パフォーマンスの一層の向上に努めています。また、当社は責任ある機関投資家として、投資先企業等との対話であるエンゲージメントや議決権行使を通して、脱炭素社会への円滑な移行、気候変動問題の解決に資するイノベーションの実用化を後押ししています。
商品開発
  • 当社は、サステナビリティを一貫性のあるかたちで運用プロセスに統合した商品、サステナビリティの向上を目的とする商品など、顧客ニーズの変化に対応した運用プロダクトの開発・提供に努めています。
  • 当社は、お客さまに誤解を与えないようにファンド名称や情報開示の適切性に十分に留意します。
事業運営
  • 当社は2030年までに温室効果ガスの自社排出量(スコープ1~2)の実質ゼロを目標に、オフィスの効率的な利用促進、再生可能エネルギーの調達、ペーパーレス化の促進等により、エネルギー消費量の低減に努めています。また、2021年7月に「サステナビリティ調達方針」を定め、当社のサプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量(スコープ3)の削減にも努めています。

(3) 財務への影響
2100年における世界の一人あたりGDPは、2000~2010年から気温が上昇しない場合と比べて、2100年時点で2℃上昇した場合は約15~20%減少するとの研究結果もあり※1、世界の株式市場の時価総額減少を通して、当社の収益にマイナスの影響を与えると想定されます。そうしたなかでも個々の業種や企業レベルでは、ライフスタイルの変化や技術的イノベーションにより業績を伸ばすケースも考えられます。当社はアクティブ運用に強みを持つ資産運用会社として、成長が期待できる業種や企業を見極めて投資を行うことで、財務への悪影響を最小限に留めるよう努めます。

一方、資産運用会社である当社は、温室効果ガスを排出する生産設備を保有しておらず、オペレーションに伴う重大な移行リスクは想定していません。また、事業運営は国内外の主要都市に有する比較的小規模なオフィスで行っており、気候変動に伴う重大な物理的リスクも想定していません。2030年までの温室効果ガス自社排出量実質ゼロの達成に必要とされるカーボンオフセットはコスト増加要因となりますが、軽微な影響に留まると考えられます。

  • 1. IPPC「1.5℃特別報告書」の概要(2019年7月版)、環境省

3 リスクマネジメント

(1) 気候変動のリスクの評価
当社は、独自のESG評価において投資先企業の気候変動リスクを評価しており、同一セクター内の相対評価によってスコアを付与しています。また、気候変動問題は当社のマテリアリティの一つであり、温室効果ガス排出量が多い業種やESGスコアの改善余地が大きい企業を中心に、エンゲージメントを行っています。一方、主要な運用プロダクトではポートフォリオ単位で気候変動リスクの測定を行い、ポートフォリオ全体ならびに構成する投資先企業の測定値を確認し、銘柄選択に係る投資判断に活用しています。

また、MSCI社の分析ツールCVaRを用いて、当社全体のポートフォリオの移行リスクおよび物理的リスクを計測して評価しています。当社ポートフォリオの移行リスクおよび物理的リスクについては、「Ⅲ.当社ポートフォリオの状況」をご覧ください。

(2) 気候変動リスクのマネジメント
気候変動リスク指標が特定の運用プロダクトの投資ガイドラインに含まれている場合には、他の制約条件と同様に運用部門が自律的な管理を行うことに加え、リスク管理部が順守状況のモニタリングを行い、閾値に抵触または接近した場合には運用部門に必要な対処もしくは対処方針の決定を求めることとなっています。

4 指標と目標

項目 説明 補足
対象 当社のポートフォリオ
GHG排出量
指標 投資時価100万ドルあたりの
ポートフォリオGHG排出量
(カーボンフットプリント)
加重平均炭素強度、炭素強度なども参考指標としてモニタリングしています。
目標 2050年までにネットゼロ
2030年までに2021年3月末比
50%削減
基準日 2021年3月末 96tCO2e/百万米ドル
計測日 2023年3月末 74tCO2e/百万米ドル
スコープ 投資先のスコープ1~2 投資先のスコープ3を含めた指標もモニタリングしています。投資先のスコープ1~3を対象とする目標の設定は、投資先のデータ開示の進捗を踏まえて検討する予定です。
カバレッジ 当社運用資産(AUM)の
54%相当(2022年3月末)
国際的な基準に基づき GHG 排出量の計算が可能な資産の拡大に合わせて、対象運用資産を適宜拡大する方針です。

【用語説明】

項目 説明 補足
当社ポートフォリオ 当社が自社運用
または 外部委託する
国内株式、外国株式、
国内債券および外国債券
2023年からファンド・オブ・ファンズ(FOF)形態による外部委託運用資産を対象に加えました。
GHG 温室効果ガス Greenhouse Gas
二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、特定のフッ素化合物
ポートフォリオ
GHG排出量
ポートフォリオに紐づく
GHGの総排出量
Σ[発行体GHG排出量×{発行体保有時価÷(発行体株式時価総額+発行体有利子負債総額)}]
カーボンフットプリント TCFDでは
「ポートフォリオ時価
100万米ドルあたりの
GHG排出量」
Carbon Footprint
ポートフォリオGHG排出量÷ポートフォリオ時価
加重平均炭素強度 投資先企業等の
個社毎炭素強度を
保有ウエイトで
加重平均した値
Weighted Average Carbon Intensity(WACI)
Σ{(発行体GHG排出量÷発行体売上高)×(発行体保有時価÷ポートフォリオ時価)}
炭素強度 投資先企業等の
売上高100万米ドルあたりの
GHG排出量
Carbon Intensity
ポートフォリオGHG排出量÷Σ[発行体売上高×{発行体保有時価÷(発行体株式時価総額+発行体有利子負債総額)}]

Ⅱ. 足元の取り組み

当社は2022年3月にGHG排出ネットゼロ社会を目指す資産運用会社のイニシアティブであるNZAMIに加盟し、2023年3月に2030年時点の中間目標を設定・開示しています。設定した中間目標について進捗状況をモニタリングするとともに、AUMのカバレッジの拡大に努めています。
資産運用業務においては、2022年度に国内外で約600件の気候変動を含む環境をテーマとする当社単独エンゲージメントを実施しました。優れた開示事例をもとにした質の高い情報開示の働きかけなどの対話を行いました。また、CDPによる協働エンゲージメントに参加し、日本企業に対してCDPスコア取得を主導的に働きかけています。

一方、クリーンエネルギーの普及に向けた活動にも力を入れています。当社は一般社団法人水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)と協業し、日本における水素の普及を金融面から推進することを目的とした投資ファンドの設立準備を進めています。水素は使用時にCO2を排出しないエネルギーとして世界で注目されており、欧州では既に水素分野に特化した投資ファンドが設立され、水素プロジェクトへの投資が活発化しています。日本においても2023年6月に水素基本戦略が改定されました。今後、水素社会の実現に向けた取組みが加速化し、水素分野への資金ニーズは一層増加することが想定されます。私たちは本ファンドの設立を通じて、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた鍵となる水素に対し、「つくり」「はこび」「ためて」「つかう」それぞれの局面において必要な資金供給を行うことにより、日本における水素社会の実現に貢献したいと考えています。
その他、気候変動に係るリスクに対してタイムリーに対応できるよう、サステナビリティ関連業務の円滑な執行を目的としたサステナビリティ推進部会を毎月開催しています。

Ⅲ. 当社ポートフォリオの状況

1 ポートフォリオのGHG排出量

カーボンフットプリント(スコープ1~3)を各資産クラス別にベンチマークと比較分析すると、国内株式がベンチマークを上回る一方、外国株式および国内債券はベンチマークを大きく下回る結果となりました。当社の国内株式ポートフォリオはバリュー株の比率が高く、GHG排出量が多い資本財や素材セクターをオーバーウエイトしていることが影響しています。外国債券の大幅な数値の上昇は、外部委託FOFへの算出対象の拡大に伴いインドなど新興国への投資エクスポージャーが拡大したことが影響しています。

資産クラス別の当社ポートフォリオのカーボンフットプリント(各年3月時点)

カーボンフットプリント ベンチ―マーク=100
加重平均炭素強度 ベンチマーク=100

データ出所:MSCI※2、2021年はサステナリティックス
ベンチマーク:国内株式 TOPIX、外国株式 MSCI Kokusai、国内債券Nomura-BPI、外国社債 Bloomberg Global Aggregate Ex-Japan
対象は各年3月時点の当社が運用するポートフォリオ。カーボンフットプリントの国内債券および外国債券は国債・地方債および政府機関債を除く
GHG排出量の範囲はスコープ1~3
前年からの変更点 外部委託のFOFを新たに対象とした。また、社債・地方債・機関債を加重平均炭素強度分析に追加した

  • 2 本開示の基礎となる情報の提供者であるMSCI ESG Research LLCおよびその関連会社(以下「ESG関係者」)は、信頼性が高いと判断した情報等(以下「本情報」)を入手していますが、当資料に記載されているデータの独創性、正確性および/または完全性を保証するものではなく、商品性および特定の目的への適合性を含む一切の明示的または黙示的な保証を否認します。本情報は、いかなる形でも複製または再配布することはできません。また、いかなる金融商品の指数や構成要素として使用することはできません。さらに、将来のいかなる投資判断のために本情報自体を使用することはできません。ESG関係者は、本情報に関連する誤記や記載の欠落、または直接的、間接的、特別、懲罰的、結果的、その他の損害(逸失利益を含む)について、たとえその可能性を知らされていた場合でも、一切の責任を負わないものとします。なお、このディスクレーマーは英語版の抄訳であり、日本語版と英語の内容に相違がある場合、英語版が優先されます。
    This disclosure was developed using information from MSCI ESG Research LLC or its affiliates or information providers. Although SUMITOMO MITSUI DS ASSET MANAGEMENT COMPANY, LIMITED’S information providers, including without limitation, MSCI ESG Research LLC and its affiliates (the “ESG Parties”), obtain information (the “Information”) from sources they consider reliable, none of the ESG Parties warrants or guarantees the originality, accuracy and/or completeness, of any data herein and expressly disclaim all express or implied warranties, including those of merchantability and fitness for a particular purpose. The Information may only be used for your internal use, may not be reproduced or redisseminated in any form and may not be used as a basis for, or a component of, any financial instruments or products or indices. Further, none of the Information can in and of itself be used to determine which securities to buy or sell or when to buy or sell them. None of the ESG Parties shall have any liability for any errors or omissions in connection with any data herein, or any liability for any direct, indirect, special, punitive, consequential or any other damages (including lost profits) even if notified of the possibility of such damages.

2 ポートフォリオの移行リスク・物理的リスクの分析

MSCI社が提供する分析ツール「CVaR」を用いて、当社ポートフォリオの移行リスクおよび物理的リスクの分析を行いました。

移行リスク 政策リスク 現在から15年程度の期間で投資先企業等が排出するGHGに係るコスト増加
技術機会 低炭素社会への移行に関わる新市場開拓やGHG吸収などの貢献による収益拡大
物理的リスク 台風や洪水などの自然災害による固定資産減損や営業活動停止によるコスト

移行リスクおよび物理的リスクの分析には、2100年までの平均気温上昇を1.5℃にとどめる最も厳しいシナリオ、さらに2.0℃、3.0℃のシナリオを用いました。複数のシナリオによる分析は、気候変動ストレスによる潜在的な当社ポートフォリオ価値毀損を定量的に把握することが目的です。正確な予想値を導くよりも、十分な対応をしないままストレスを与えた場合の将来像を描けるように設計されています。

気温上昇シナリオ別/資産クラス別の潜在的ポートフォリオ価値毀損(2023年3月時点)

気温上昇シナリオ別/資産クラス別の潜在的ポートフォリオ価値毀損(2023年3月時点)

前年の分析結果からの変化は以下の通りです(数値は投資資産の潜在的価値の創出または毀損の比率)。

  • 2100年までの気温上昇を1.5℃にとどめる最も厳しいシナリオ(1.5℃シナリオ)において、ポートフォリオ毀損リスクが高まりました。
  • 移行リスクの技術機会・・・1.5℃シナリオで緩和効果が+2.6%(前年は+9.3%)に圧縮されました。
  • 移行リスクの政策リスク・・・1.5℃シナリオでスコープ3(サプライチェーン排出)リスクが-7.6%(前年は-4.0%)に拡大しました。
  • 物理的リスク・・・1.5℃シナリオで猛暑による影響(価値毀損)が-9.1%(前年は-5.7%)と悪化しました。

このような前年比の変化は、MSCIの評価モデル変更による影響が大きいと推察しています。例えば、技術機会の効果縮小は発電と自動車・輸送のエネルギー効率改善技術がもたらすコスト改善効果の算出前提となるコスト単価が引き下げによるもの、政策リスク増大はGHG削減を前倒しで達成するシナリオへの修正等によるもの、物理的リスク増大は、被害観測地点のカバーエリア拡大等によるものと考えられます。

3 ポートフォリオのパリ協定との整合性分析

潜在的気温上昇指標は、投資先企業等がコミットしたGHG排出削減目標等をもとに、整合する気候変動目標推計値を「℃」表示するものです。
当社のポートフォリオの64%(前年49%)は、パリ協定の2℃シナリオに将来整合的となる、との結果を得ました。一方、現状の計画ではパリ協定にまったく整合しない投資先企業(赤色棒グラフ部分)は10%(前年16%)にとどまります。
当社は投資先企業等に対してSBT1.5℃目標認証取得を働きかけていますが、今回の分析はそうした活動の成果を示す結果となりました。

潜在的気温上昇指標の分布(2023年3月時点)

潜在的気温上昇指標の分布(2023年3月時点)

2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、当社はダイベストメントを選択肢としつつ、Just Transition(公正な移行)やSDGsの「誰一人とり残さない」といった理念などさまざまなステークホルダーの利益を考慮したエンゲージメントに注力する方針です。
(2023年10月改訂)

その他の方針および取り組み実績