生物多様性を考える万博
2025年7月25日
今年の一大イベントの一つである大阪・関西万博。始まる前は開催に関するネガティブなニュースも散見されましたが、実際に入場した人のポジティブな声が増えるにつれ、盛り上がりも見せてきました。大阪・関西万博のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」ということで、サステナビリティに関する内容で溢れています。人権や文化の多様性といった、人を切り口としたテーマもありますが、ここでは環境と生物多様性に絞って話を進めます。
責任投資推進室
穂坂 悠
生物多様性と環境KPI
環境に関するKPIで最も知られているものは、GHG(温室効果ガス)排出量ではないかと思います。いかに削減していくかが地球環境の維持に繋がりますが、特に気候変動に関するKPIとして知られています。一方、生物多様性に関するKPIが確立されているとはまだ言い難い状況ですが、指数化されたものの一つとしてグローバル生物多様性指数というものがあります。
グローバル生物多様性指数とは、維管束植物、哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、魚類の6つの生物グループから計算されます。各グループの種の数を比較し、生物多様性のスコアを算出します。
スコア結果の順位は、1位ブラジル、2位インドネシア、3位コロンビアです。生物多様性の高い国々の生態系を特に守っていくことが、地球全体の生態系を維持することにも繋がります。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)で提唱されているLEAPアプローチという手法でも、locate(発見する)を意味するLが第一段階で、このような国々で事業活動を行っているかを確認し、重点的にリスクや機会を評価していきます。
パビリオンの特色
これらの国々は万博でどのようにアピールしているのでしょうか。各国のパビリオンをチェックしてみます(筆者は万博に参加できていないので、間接情報に留まります)。
ブラジルパビリオンでは、入口に「我々の存在の真意とは。」という問いかけを日本語で掲げ、感覚的な体験やアートとして内容を提供しています。生命の移り変わり、自然保護、多様性、環境と人間の関わりなどが全体を通して表現されているようです。
インドネシアパビリオンでは、熱帯植物を配置してジャングルを作り出し、自然の美しさと保全の重要性を訴えています。また、環境への配慮としてプラナウッド(もみ殻とリサイクルプラスチックの複合材)と呼ばれる建築素材がインドネシア館で使われているようです。
3か国の中でも、特に生物多様性にフォーカスしているのはコロンビアパビリオンではないでしょうか。「美を生きる国」といったテーマを掲げており、黄色い蝶に導かれる形で進むと、生態系の展示スペースに辿り着きます。コロンビアの固有動植物などが紹介され、五感で体感できる展示となっているようです。

共通しているモノとは
これら3つのパビリオンに共通していることがあります。それはパビリオンでコーヒーが提供されていることです。コーヒーの原産地と生物多様性が高い地域は、どちらも熱帯に属しており地域特性が重なります。熱帯雨林が生物多様性を維持しているためです。
環境保護、労働環境配慮、トレーサビリティ等の基準を満たしたサステナブルコーヒーといったものがありますが、消費者としてそれらを選択することが生態系維持に繋がります。このような事も考えながら万博を楽しめると良いですね。会場の夢洲に構造物を建設すること自体が環境悪化に繋がり、生物多様性を損失させるという声もあるようです。
ただし、今回の構造物は万博終了後に撤去される仮設建築で、撤去後は中央にある静けさの森が残る形です。また、今回のコーヒーの話以外にも、様々なパビリオンで生物多様性を考える機会を与えており、参加した方々の考え方やこれからの行動変化に結び付くことで、全体的に生物多様性に対してポジティブとなるイベントだと言えるのではないでしょうか。
まとめ
大阪・関西万博が示すように、サステナブルな未来を築くためには、企業や個人が一体となって行動することが不可欠です。私たちは、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。万博の展示や取り組みは、私たちが推進するサステナブルな投資の重要性を再確認させるものであり、今後の投資活動においても生物多様性や環境保護に対するコミットメントを一層強化して参ります。
大阪・関西万博は、未来社会のデザインを実現するための具体的な行動を示す場として、多くの参加者にインスピレーションを与えています。私たちもこの機会を活かし、持続可能な未来の実現に向けて、引き続き努力して参ります。
<参考資料>
●The 10 Most Biodiverse Countries In The World – WorldAtlas
https://www.worldatlas.com/nature/the-10-most-biodiverse-countries-in-the-world.html
●EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト