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低下した米国の「自然利子率」(米国) 【キーワード】

2016年9月15日

<今日のキーワード>
「自然利子率」とは、景気を刺激も抑制もしないと考えられる短期金利の水準のことをいいます。景気に対して中立的な金利であることから、中立金利とも呼ばれます。金融市場の需給関係で決定される市場金利が「自然利子率」より高い場合には金融引き締め、逆に市場金利が「自然利子率」よりも低い場合は金融緩和となる傾向が強くなります。

【ポイント1】なかなか追加の利上げに踏み切れないFRB

「自然利子率」の低下が原因のひとつ

■米連邦準備制度理事会(FRB)が、昨年12月に利上げを実施して以降およそ9カ月が経過しました。この間に失業率は5%を割り込み、完全雇用の水準に到達したと見られるにもかかわらず、FRBは追加の利上げに踏み切れずにいます。「自然利子率」が低下しているため、早急に利上げをすると、すぐに「自然利子率」を上回り、金融が引き締まってしまうからです。

【ポイント2】「自然利子率」はゼロ近傍まで低下

高齢化の進展や労働生産性の鈍化などが原因

■FRBの推計によると、1980年代半ばから2000年代半ばまでの「自然利子率」は物価上昇率を控除した実質値で2~4%でしたが、2008年のリーマン危機以降はゼロ近傍まで低下しています。

■低下の要因として指摘されるのは、高齢化の進展による労働力人口の伸び悩み、労働生産性上昇率の鈍化、世界的な貯蓄の余剰と、その裏返しである投資の不足などです。

■FRBのブレイナード理事は、失業率の低下にもかかわらず加速しない物価上昇率、低下した「自然利子率」等を受けて、米国経済がニュー・ノーマル(新しい常態)に移行した可能性を指摘しています。

【今後の展開】利上げのペースは緩慢なものとなる可能性が高い

■国債利回りは安定した推移、株価は景気・企業収益の拡大を織り込む展開へ
「自然利子率」の低下は、金融政策の自由度を低下させます。景気後退期に金利を引き下げようにも、引き下げ幅が小さくなっているからです。この点を踏まえると、FRBは利上げを継続するとしても、景気に大きなショックを与えて失速させることのないよう、緩やかなペースで行う可能性が高いと考えられます。従って、国債利回りは安定的に推移すると予想され、株価は景気や企業収益の拡大を織り込む展開になる見通しです。

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