ホームマーケット日々のマーケットレポート【キーワード No.1,354】足元の「地政学リスク」と金融市場(グローバル)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【キーワード No.1,354】足元の「地政学リスク」と金融市場(グローバル)

2014年6月20日

1.「地政学リスク」とは?

 一般に「地政学リスク」とは、政治的・軍事的な緊張の高まりによる、世界経済や金融市場の不確実性のことを指します。特に、中東地域の紛争などでエネルギー供給が妨げられた場合、市場では深刻な「地政学リスク」と受け止められやすく、一般に「株安・債券高・原油高」要因となります。

2.最近の動向

 今年3月、ウクライナの内紛に乗じてロシアがクリミア半島の併合を宣言したことは、記憶に新しいところです。同事件は欧州において、冷戦終了後、最大の「地政学リスク」とも評されました。
 ただし、新大統領の高い支持率での当選が、ウクライナの転機となりました。新大統領は東部の混乱について、親ロシア派武装勢力の強制排除も辞さない一方、自治権拡大のような懐柔策を用意するなど、硬軟織り交ぜて対応し、事態は収まりつつあります。一方ロシアは、ウクライナの親ロシア派住民への攻撃やガス代金の未払いを非難しています。テロと見られるパイプライン火災も発生しており、両国関係の安定化への早期合意が待たれます。
 6月に入ると、「イラク」が新たな地政学リスクとなりました。イスラム教スンニ派の反政府勢力が、同シーア派政権の軍隊と衝突し、対立が激化しています。南部の主要な油田にはまだ衝突が及んでいないとされますが、影響を恐れた外資企業の社員が一部退避を始めたとも伝えられ、供給縮小を懸念させる要因となっています。

3.今後の展開

 13日には、NY市場の原油先物が一時1バレル=107ドル後半と、9カ月ぶりの水準まで上昇しました。近年は複数の要因から、地政学リスクによる原油価格の押し上げの影響が和らいでいますが、要注意です。要因とは、①米国などで非在来型のエネルギー生産が拡大したこと、②先進国で燃費向上車が普及し、ガソリンに余剰感もあること、③米欧が緊急時の備蓄協調放出などの経験を積んだこと、④最大の産油国かつ親米国のサウジアラビアが価格急騰時は増産に踏み切ると見られること、などです。
 また、「地政学リスク」は株式市場で高値が警戒されている際には、利食い売りのきっかけともなります。日米欧が金融緩和を続けるなか、比較的規模の小さい商品市場に投機的資金が流れ込めば、商品価格の乱高下により実体経済に悪影響が及ぶ可能性もあります。市場参加者はこれまでも数多くの「地政学リスク」を乗り越えてきましたが、今後も注意を怠ることなく、国際情勢を見ていく必要がありそうです。

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