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機械株上昇の背景と今後の展開

2019年12月24日

1.機械株は製造業の景況感改善を先取りして上昇

2.企業業績もそろそろ底打ちへ

3.今後は業績の回復度合いを確認しつつ、更なる株価上昇を探る動きを想定

1.機械株は製造業の景況感改善を先取りして上昇

■東証株価指数(TOPIX)は2018年12月25日に1,415.55ポイントの安値を付けた後、景気回復期待と米中貿易摩擦の長期化などの悪材料との狭間で上げ下げを繰り返しました。その後、2019年8月26日の直近安値1,478.03ポイントを底に上昇に転じ、同12月17日には1,740ポイントを越えてきました。

■この中にあって機械株は電気株と共に今年の上昇相場をけん引してきました。今回は機械株上昇の背景と今後の展開について考察したいと思います。

■機械株は製造業受注や設備投資など景気の影響を受けやすいことから景気敏感株と呼ばれており、グローバル製造業購買担当者景況指数(PMI)に連動する傾向があります。

■PMIは50が景気拡大の境目となっており、50を超えると好況、50を下回ると不況となります。

■今回、グローバル製造業PMIは2017年12月をピークに下落に転じ、2019年5月に50を下回りました。7月に現時点でのボトムを付けた後、上昇に転じ、11月に7カ月ぶりに50を超えてきました。

■従来は、グローバル製造業PMIが50近くへ低下し景気減速が徐々に懸念され始めると機械株もピークアウトし、グローバル製造業PMIがボトムを付けると共に景気回復を期待して機械株もボトムアウトする傾向が見られました。

■今回はグローバル製造業PMIがピークアウトすると同時(2018年1月)に機械株もピークアウトしました。従来より早く景気の減速を織り込み始めたことになります。そのため、機械株のボトムアウトのタイミングも早くなりグローバル製造業PMIが50を下回る前の2018年12月から2019年4月にかけて景気回復を先取りする買いが入り、機械株は上昇しました。しかし、米中貿易摩擦が想定以上に激化・長期化したため2019年8月まで機械株は再び下落することとなりました。

■その後、前述の通りグローバル製造業PMIがボトムアウトしたことを背景に機械株も8月に底をつけた後、上昇に転じました。足元ではグローバル製造業PMIは50を上回っており、機械株はこのPMIの好転を先取りして上昇に転じたこととなります。

2.企業業績もそろそろ底打ちへ

■株価の財務的な背景となる機械銘柄の企業業績は2016年1~3月期以降、4四半期連続で増益を続けた後、2018年7~9月期以降は減益が続いています。

■景気との連動性が高いFA(ファクトリーオートメーション)銘柄、工作機械銘柄、ベアリング銘柄などの企業業績が受注減速に伴い減益に転じたことに加え、景気変動にやや遅行する産業機械銘柄の企業業績も遅れて減速したことによります。

■減益幅を見ると2019年度4~6月期・7~9月期がボトムとなり、弊社では10~12月期は減益幅は若干縮小すると予想します。

■又、幅広い機械に使われ機械産業のコメと言われるベアリングの在庫循環を見ると、需要減少による「在庫積み上がり局面」から、「在庫の調整局面」に入っており、在庫循環が進んでいることが見て取れます。

■在庫調整の進展やグローバル景気の底入れを前提に、弊社では来年度機械銘柄の業績は+11%増益を予想しています。

3.今後は業績の回復度合いを確認しつつ、更なる株価上昇を探る動きを想定

■今後の機械株の動向を考えるうえで、これまで見てきた(1)製造業の景況感、(2)企業業績の動向に加えて、(3)バリュエーションがポイントとなります。

■第一に、製造業景況感はグローバル製造業PMIが50を超えてきたことに加え、各国が金融緩和・積極財政政策を取っていることから、回復基調に復帰する可能性が高まってきたと考えています。

■足元、米中貿易交渉で第1段階の合意に達したことや英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に一定の道筋がついたことなどポジティブなニュースが続いています。但し、想定される景気の回復基調は緩やかであり不透明な外部要因も残っていることから、一方向での回復が描きにくい状況が継続しそうです。

■第二に、企業業績に目を移すと足元は低迷が継続しており、今後の受注見通しも総じて見れば明るさが持てない状況にあります。中間決算(9月決算)においても、半導体投資に回復の動きが見られましたが、その他設備投資関連(工作機械)、自動車生産関連(ベアリング・工具)、産業機械関連の需要は低迷し、見通しについても明るいコメントは聞かれませんでした。このため、現時点での来期業績は増益を予想するものの、収益レベルは低水準に留まると考えています。

■第三にバリュエーションです。機械株の株価純資産倍率(PBR)は割安感が薄れつつあります。又、株価収益率(PER)を見ると、過去の水準と比較しても業績の回復をある程度織り込んだ水準まで上昇してきたと言えます。

■短期的に株価上昇スピードが速かったことや現時点での業績予想をベースとしたバリュエーションが高水準になっていることから、機械株は景気回復とそれに伴う企業業績の回復度合いを確認しつつ、更なる株価上昇を探る展開を想定します。

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