ホームマーケット日々のマーケットレポート投資テーマから考えるポートフォリオ戦略 資産形成のモデルケース(その2) 63歳4人家族、楽しく老後を送るには

資産形成のモデルケース(その2)

63歳4人家族、楽しく老後を送るには

2022年11月9日

1.資産形成の4つの「基本動作」のおさらい

2.モデルケースの資産配分

3.65歳以降は「資産活用」が重要

はじめに

本年2月の前回は「45歳4人家族、豊かな老後を送るには」として、資産形成のモデルケース(その1)をご紹介させていただきました。今回は「63歳4人家族」を想定して、どのような資産形成が望ましいのかを考えてみたいと思います。今回のモデルケースは以下の通りです。

まず、資産形成を考える際に欠かせない4つの「基本動作」をおさらいしましょう。これはライフプラン実現のためのカギとなります。

 


1.資産形成の4つの「基本動作」のおさらい

(1)「ライフイベント」の想定

■「基本動作」の1つ目は、「ライフイベント」の確認です。人生には様々な「ライフイベント」があります。「ライフイベント」とは、結婚、出産・子育て、進学、退職、老後の暮らし、介護など、年齢と共に起こると想定できるイベントの他、転職、住宅の購入、自動車の購入、旅行等を指します。人生を楽しむためには金銭面の準備が必要です。その準備のための計画が「ライフプランニング」です。しっかりと準備することによって、夢や思い描いた生活設計を実現できるようになります。「ライフプランニング」は大変重要です。

 


(2)大切な「お金の色分け」

■「基本動作」の2つ目は、「お金の色分け」です。これからの収入見込みやライフイベント等を考えてみて、どんな収支になりそうか、おおよそでいいので数字で出してみること、つまり「お金の色分け」が大切です。「お金の色分け」ができれば、どの程度運用に振り向けることができるか、あるいは運用をしなければならないかがわかります。

 


(3)リスク許容度の目途を持つ

■「基本動作」の3つ目は、「リスク許容度、つまり、どの程度のリスクを取った運用を行うことができるか、の目途を持つこと」です。高いリターンが期待できる資産は価格変動が大きく、値動きが激しくなります。低いリスクと高いリターンを長期間実現できる資産はありません。運用にフリーランチはないと言われるゆえんです。どの程度のリスクなら許容できるかによって、株式と債券等資産の組み合わせ比率が変わってきます。

   


(4)資産形成の基本は「長期・分散・複利」

■「基本動作」の4つ目は、「長期・分散・複利」です。「長期」投資のメリットは、投資対象資産が大きく下落してもその回復を待つことができ、高リスク高リターンの資産に投資する割合を高くすることができるため、相対的に高いリターンが期待できるようになります。「分散」投資のメリットは、保有する資産を分散させ、互いに別の動きをする資産を組み合わせればリスク対比のリターンが向上する点です。「複利」のメリットは、複利効果を活かすことで長期的にリターンを積み上げることができる点です。今回のモデル家族は世帯主が63歳ですが、日本人男性の63歳の平均余命は20年以上あるとみられ、まだ長期の運用が可能です。

2.モデルケースの資産配分

■資産形成の基本を押さえましたので、実際にどのように運用するかを考えてみます。ここでは、実現したい夢(ゴール)毎に運用の仕方を考えるのではなく、ゴール全体をひとまとめにして運用の仕方を考えることとします。

(1)お金を色分けして、必要収益率を計算し、ポートフォリオを試作してみる

■それでは、実際の運用プランを検討します。必要な資金として生活資金を半年分現金(210万円)で確保し、それ以外(2,790万円)は投資に振り向けると考えて資産を運用することとします。1年間の生活資金を420万円とします。それ以外には、67歳で自動車を買い替え(250万円)、旅行や孫たちの教育費、自宅の修理等のために65歳から80歳まで、5年ごとに200万円支出すると想定しました。その他、実現したい夢をすべて達成するとした場合、弊社の試算によると、3.9%の収益率で運用することが必要になります。

(2)必要収益率とリスクの取り方を再確認する

■これを達成するための資産の組合せ(=想定ポートフォリオ)を計算すると右図のようになります。


■ここで改めて期待収益率に無理がないか、また、リスクの取り方が適切か、確認してみましょう。


■まず、期待収益率の3.9%という水準ですが、私たちの国民年金、厚生年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2001年度~2021年度の運用成果は年率3.69%です。GPIFは内外の株式や債券に分散投資しています。私たちも同じようなスタンスで十分に分散したポートフォリオで資産運用を行えば、3.9%の収益率は無理のない範囲だと判断されます。


■一方、この想定ポートフォリオで見込まれるリスク(標準偏差)は8.4%です。モンテカルロ・シミュレーションで計算すると、最初に2,790万円を投資した場合、20年後の運用成果の中央値は約5,640万円となります。一方、運用成果が初期の投資金額を下回る確率は20年後には3.0%となり、かなりの確率で投資金額を上回る投資成果が期待できることがわかります。


■参考までに、この想定ポートフォリオに基づいて2006年3月末から運用した場合の運用成果を図示しました。リーマン危機、コロナショック等、株式市場が大きく下落する局面が何度かありましたが、その都度回復し、16年半の間に運用資産は約2倍になりました。

3.65歳以降は「資産活用」が重要

(1)「資産寿命」を伸ばす工夫と努力

■65歳以降は、運用を継続しながら運用成果を取り崩していく「取り崩し期間」となります。運用しない場合、資産は早期に底をついてしまいます。「取り崩し期間」でも運用を行い、極力「資産寿命」を伸ばす工夫と努力が必要です。


■合わせて、取り崩すためには、投資資産の売却等を行う必要があります。十分な収入がある時は、資産を買い入れることと、必要に応じたリバランスが運用に伴う取引でしたが、老後は、資産の売却という新たな手続きが必要になります。

このように、65歳以上は資産の運用と売却等、資産を活用した取り組みや手続きを行う必要があります。

(2)資産取り崩しを仕組みとして持っている金融商品

■なお、取り崩し方については、自分で行う場合、毎年どの資産をどの程度売却する必要があるか等について、吟味した上で手続きを行う必要があります。これは大変な手間がかかります。また、それを高齢になっても継続することはかなり難しいことだと考えられます。


■そうした場合に例えば、定率取り崩し型という投資信託があります。このように、資産の取り崩しを仕組みとして持っている金融商品があれば、自動的に購入した投資信託の一定割合が分配金として計算され、それを受け取ることになります。細かい管理や現金化の手間が省略でき、透明性が高いなどのメリットがあり、便利な金融商品と言えそうです。

まとめに

以上、資産運用を行う際のプランニングから実際の資産配分を考えてきましたが、ポイントを以下にまとめます。

(1)資産形成の4つの「基本動作」を確認する:

   ①「ライフイベント」の想定、②お金の色分け、③リスク許容度の目途、④長期・分散・複利

(2)資産配分を検討する:その際、実現したい夢(ゴール)、リスク許容度等を十分吟味する

(3)資産配分を決定する

(4)65歳以降は「資産活用」。運用と活用(取り崩し)が同時にできる金融商品は利便性が高い


なお、1年に1度程度の割合で、ライフイベントも含めた資産形成についての見直しを行うことをお勧めします。以上の流れに沿った資産形成を行うことによって、多くの方が豊かな人生を送ることができるよう期待します。

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