【デイリー No.1,924】最近の指標から見る日本経済(2014年7月)
2014年7月30日
<ポイント>
・輸出が2カ月連続の減少となった一方、輸入が2カ月ぶりに増加し、6月の貿易収支の赤字額は拡大しました。
・生産は消費税増税後の反動減の影響がまだ残っていると見られます。
・消費は増税後の影響が和らぎつつあり、また雇用環境の改善などから、今後緩やかな回復が期待されます。
⇒4-6月期は駆け込み需要の反動減などでマイナス成長が見込まれますが、消費や輸出が緩やかに回復することで、7-9月期には回復に向かうと思われます。
1.輸出が2カ月連続の減少、生産は2カ月ぶりに低下
①貿易統計
6月の貿易収支は、▲1兆808億円(季節調整後)と3カ月ぶりに1兆円を超える赤字となりました。前年同月比で輸出が2カ月連続の減少となった一方、輸入は2カ月ぶりに増加しました。
輸出額(季節調整前、以下同様)は前年同月比▲2.0%と、5月の同▲2.7%から減少幅は縮小したものの、2カ月連続の減少となりました。品目別に見ると、半導体等電子部品が同▲8.7%、有機化合物が同▲12.8%と大幅に減少しました。また地域別では、欧州向けは増加しましたが、北米、アジア向けが減少しました。一方、輸入額は同+8.4%と5月の同▲3.5%から増加に転じました。消費税率や環境税率引き上げ後の反動減が一巡し、鉱物性燃料や一般機械、電気機器など幅広い品目が前年比で増加しました。
海外景気は緩やかながら回復が続くと見られ輸出の増加が期待されるものの、輸入も増税後の反動減が和らぐことや、国内景気も回復基調となっていることなどから、当面の貿易収支の赤字額は縮小しにくい状況が続くと見られます。
②鉱工業生産
6月の鉱工業生産指数は前月比▲3.3%と5月の同+0.7%から2カ月ぶりに低下しました。業種別では、その他工業を除く全業種で低下し、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、情報通信機械工業などが主に低下しました。前回の消費税増税後(1997年)は5月が同+2.8%、6月が同▲0.6%であったことから、今回の増税後の反動減はやや大きいと見られます。また、在庫指数は同+1.9%と2カ月連続の上昇となりました。
今後の生産動向の見通しを示す製造工業生産予測調査(企業の生産計画に基づく)を見ると、7月は同+2.5%、8月は同+1.1%と持ち直しが見込まれています。足元の輸出や国内消費の回復がやや弱いこともあり、計画は下回る可能性もあり、今後の動向を注視する必要があると思われます。

2.消費、物価は増税後の影響が和らぐ、雇用は堅調
①消費・物価
6月の商業動態統計調査では、商業販売額は前年同月比▲0.7%と3カ月連続で減少しましたが、前月比では+2.5%と2カ月連続で増加しました。消費税増税後の反動減が和らぎつつあると見られます。小売業の内訳を見ると、自動車が前月比+10.0%、機械器具が同+14.7%と持ち直しました。また、形態別では百貨店が同+5.6%、スーパーが同+1.0%、コンビニエンス・ストアが同▲1.1%となりました。緩やかながら消費は回復傾向が見られます。
一方、6月のコア消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比+3.3%と上昇しましたが、前月比では横ばいとなりました。日銀は消費税増税の影響を2.0ポイントと試算していることから、増税の影響を除くと同+1.3%になります。また、物価の基調をより反映する米国型コア消費者物価指数(食料(酒類除く)、エネルギーを除く)も前年同月比は+2.3%と9カ月連続のプラスとなりましたが、前月比は▲0.1%と小幅に低下しました。家庭用耐久財や衣料、保険医療などは5月以降、2カ月連続で前月比低下しており、物価の上昇の勢いは、円高是正による物価押し上げ効果が薄れてきたこともあり緩やかになりつつあります。
②雇用
6月の完全失業率(季節調整値、以下同様)は3.7%と、前月比0.2ポイント上昇しました。就業者数が前月比横ばいの6,359万にとどまった一方、完全失業者数は244万人と同+11万人増加しました。また有効求人倍率は前月比+0.03ポイントの1.10倍と、8カ月連続で1.00倍以上となりました。労働市場の先行きを示す新規求人倍率も同+0.03ポイントの1.67倍と上昇しました。有効求人倍率は1992年6月以来、22年ぶりに高水準となりました。
完全失業者は前月比増加しましたが、内訳をみると自発的な離職(自己都合の退職)が同+3万人、新たな求職+3万人、非自発的な離職+1万人(定年または会社都合の退職)となりました。雇用環境の改善でより良い待遇を求める人や、新たに就職を希望する人が増えていると見られます。また、有効求人倍率が高水準で推移していることなどから、今後、所定内賃金(基本給等)の上昇も期待されます。

3.今後の見通し
消費税増税の影響は、前回の1997年と比較すると、消費面は概ね前回と同じような動きとなっていますが、生産面では増税後の反動減がやや大きくなっているようです。これは主に輸出の低迷が要因となっていると見られますが、米欧を中心に海外の景気は回復傾向を示していることから、今後、徐々に回復が期待されます。一方、雇用については有効求人倍率が22年ぶりの高水準になるなど好環境にあることなどから、個人消費については、今後、緩やかな回復に向かうと見られます。
景気は、4-6月期は駆け込み需要の反動減で減速が見込まれますが、消費や輸出が緩やかに回復することで7-9月期以降は徐々に持ち直し、回復に向かうと思われます。