ユーロ圏の金融政策(2014年11月) 1兆ユーロの量的金融緩和を明確化【デイリー】
2014年11月7日
【ポイント1】緩和の規模と時間軸を明確化
追加金融緩和の準備開始
■欧州中央銀行(ECB)は6日、政策金利、預金金利を、それぞれ0.05%、マイナス0.20%に据え置くことを決定しました。
■今回の声明文と総裁発言のポイントは概ね3つです。一つ目は、TLTRO(注)と民間資産の購入などの非伝統的な手段により、2016年6月までにECBの資産残高を足元の2兆ユーロから2012年3月時点の約3兆ユーロに増やすというものです。これにより、金融緩和の規模と時間軸について明確にしました。
■二つ目は、追加緩和策の準備をECBスタッフなどに指示したとし、必要があれば今後機動的に対応することを示唆したことです。
■三つ目は、こうした非伝統的な資産購入は政策委員会メンバーの全員一致の賛成が得られていると、ECBが一枚岩であることを示した点です。
(注)対象を定めた長期リファイナンスオペ。

【ポイント2】経済見通しは下方修正へ
物価は低位の上昇率にとどまる
■ECBは経済見通しの悪化を指摘し、物価も当面は現在の低水準(10月の消費者物価指数(速報値)は前年比+0.4%)にとどまるとの認識を示しました。これらは12月に予定される経済見通しに反映されるとみられます。

【今後の展開】資産購入の対象は社債や国債に拡大も
■今回の理事会では、新たな決定は無かったものの、これまでのドラギ総裁の発言が声明文で明確化され、透明性が高まりました。株式市場は今回の公表を好感し上昇しました。為替市場では、ユーロがドルや円に対して下落し、来月以降の追加金融緩和を織り込み始めています。
■今回明確化された1兆ユーロの資産拡大のための手段は、これまでのTLTROやABSなどの民間資産の購入だけでは不十分で、対象となる資産 は社債や国債などに拡大される可能性が高まったとみられます。
■債券市場では、金融緩和が長期化するとの観測から、国債利回りは低位で推移する見込みです。
■為替市場では、ドルに対してはユーロ安が見込まれますが、日銀が金融緩和を拡充したことから、対円では方向感が出にくいとみられます。