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【デイリー No.1,837】ユーロ圏の金融政策(4月) ~金融政策は据え置き、量的緩和を検討~

2014年4月4日

<ポイント>
・欧州中央銀行(ECB)は政策金利を過去最低の0.25%に据え置いたほか、量的緩和の検討を明らかにしました。
・景気は上向いてきたものの、足元の物価上昇ペースが一段と鈍化したことなどが、量的緩和検討の背景です。
・物価の下振れが成長の足かせとなる可能性があり、ECBが量的緩和に踏み切る可能性は高まってきました。

1.金融政策は据え置き、量的緩和を検討

 ECBは3日、政策金利(主要リファイナンスオペ適用金利)を過去最低の0.25%に据え置くことを決定しました。
 また、ドラギ総裁は会見で、理事会が責務の範囲内で非伝統的な金融緩和策も利用することで満場一致し、実際に、量的緩和の実施などを検討したことを明らかにしました。
 ユーロ圏では、3月消費者物価指数(速報)が前年同月比+0.5%まで鈍化しました。これは2009年10月以来の低水準であるほか、ECBの物価誘導目標である年+2%弱も大きく下回り、 対応の有無が注目されていました。

2.景気は底堅いが、ユーロ高や地政学リスクに懸念

 ユーロ圏では昨年10-12月期までの実質GDP成長率が3四半期連続で前期比プラスとなるなど、景気は緩やかに回復しています。また、最近はイタリア、スペインなど南欧諸国の国債への需要も強く、利回りは約8年ぶりの低水準と、財政再建への負担が以前よりも軽減されてきました。
 こうした良好な局面にも関わらず、物価が押し下げられている背景には、なお高い失業率や長引く低成長といった景気要因に加え、ユーロ高による輸入物価の押し下げなども影響しています。年初から米国の寒波や新興国経済への懸念が高まった際、投資先を求める資金は、金融システムや景気が回復途上にある欧州へと向かいやすくなりました。その結果、ユーロ高が欧州のエネルギー輸入価格などを押し下げ、物価が想定以上に抑えられた格好となっています。
 加えて、春先にかけてはウクライナを巡る地政学リスクが浮上しました。このところ東欧などとの経済的なつながりが比較的強いドイツなどの企業景況感にも影響が見られ、ECBによる景気下支えを期待する声も増えていました。

3.今後の見通し

 これまで、法的な制限、購入対象となる資産の選定の困難さなどから、ECBは大胆な量的緩和に踏み切ることが困難との見方が根強くありました。しかし、このところの通貨高や低インフレは、従来から緩やかに留まる成長の足かせとなる可能性があり、ECBが何らかの追加緩和策を講じる可能性は高まっています。特に、今回のECB総裁の発言は、どのような量的緩和が有効となるかの検討を行っている、今後数週間のうちに議論を進めていく、など従来以上に踏み込んだものであり、早ければ次回会合にも政策が発表される可能性があります。
 ユーロ圏の株式市場では、量的緩和による景気テコ入れへの期待感に加え、米中景気の持ち直し観測などから、企業業績への見通しも上向いてきており、株価は底堅く推移しそうです。債券市場では、量的緩和への期待や従来からのフォワード・ガイダンスの影響から、ECBが金利を低水準に抑制する期間が長引くと予想され、債券価格は底堅く推移しそうです。為替市場では、量的緩和の可能性が意識されるなか、年初からユーロの上値は徐々に重くなっています。ただし、対円では、日銀にも根強い追加緩和観測があることから、今後ともユーロ円相場は底堅く推移しそうです。

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