日本国債の「格下げ」(日本)【キーワード】
2014年12月2日
<今日のキーワード>
格付け会社は、国債や社債などの債券を発行する国や企業の元本や利息の返済能力などを、それぞれ独自の評価基準を基に「格付け」しています。一般的に、債券の格付けはアルファベットや数字を用いた記号(AAAやAa3など)で示されます。国際的な格付け会社には、米国のムーディーズ(Moody’s)やスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などがあります。
【ポイント1】ムーディーズが日本国債をAa3からA1へ「格下げ」
同社による格下げは3年4カ月ぶり
■12月1日、米国の大手格付け会社ムーディーズは、日本国債の格付けをAa3(AA-相当)からA1(A+相当)へと、1段階引き下げました。引き下げ後の格付けは、最上位から5番目となります。一般的にBaa3(BBB-相当)以上が投資適格とされます。今回の格下げにより日本の格付けは、それまで同等だった中国や韓国などを下回り、イスラエルやチェコなどと同格となります。
【ポイント2】消費税増税延期が主因
財政赤字削減への不確実性を指摘
■ムーディーズは、今回の格下げの主な要因として、
①財政赤字の削減目標達成への不確実性の高まり、
②成長促進策に関する不確実性、
③それに伴う国債利回り上昇リスクの高まりと債務負担能力の低下、
を挙げています。
■市場では、消費税再増税の延期により、2015年度および2020年度に向けた財政赤字削減目標の達成が困難との見方が強まっています。また、4月の消費税増税により日本経済が2四半期連続のマイナス成長となったことや、経済構造改革を通じた成長促進が滞っていることなどが、格下げに繋がったと見られます。
【今後の展開】国債市場は当面多少の変動を伴うものの、影響は限定的
■今後の格付け見通しは「安定的」
ムーディーズは、今後の見通しについて、向こう12カ月から18カ月にわたって、同格付けが維持されることを示す「安定的」としています。厚みのある国内債券市場、民間部門の黒字、日銀の積極的な姿勢が維持されることがその理由です。また、日本が対外純資産残高を対GDP比で60%超も有していることにより、世界的な経済や金融市場のショックに強いと見られていることも、プラスに評価されています。
■再び財政再建の道が示されることが重要
他の格付け会社では、S&PやR&Iは再増税延期の決定後もすぐには格下げしないとの見方を示しています。一方、フィッチは年内にも格付けの見直しを行う方針を示しています。ただし、日本国債は多くが国内投資家によって保有されており、当面は多少の相場変動を伴うと思われるものの、影響は限定的となる見込みです。衆議院総選挙を通じて、財政再建の道がより明確に示されることが重要と思われます。