【キーワード No.1,376】拡大が続く「知的財産権等収支」(日本)
2014年7月23日
1.「知的財産権等収支」とは?
日本企業が海外から得る工業権や著作権などの使用料収入と海外企業に支払う同使用料の差額です。国際収支統計におけるサービス収支の一項目に分類されています。財務省・日銀が毎月発表する国際収支状況によって把握することができます。
2.最近の動向
財務省・日銀は8日、5月の国際収支状況(速報)を発表しました。そのうち「知的財産権等収支」は+2,754億円(月次データは季節調整前、以下同様)と前年同月比+556億円増加しました。同収支は工業権・鉱業権等使用料(以下工業権)収支と著作権等使用料(以下著作権)収支に分かれ、工業権収支が同+526億円の+3,389億円と大幅に増加しました。著作権収支は▲634億円と赤字ながら、同+31億円と赤字幅が縮小しました。工業権収支は、日本メーカーの海外生産に伴い、製造ライセンス料などが増加しています。比較可能な1996年以降を年毎に見ると、1997年に初めて黒字化し、2013年は1兆9,643億円に拡大しました。一方、著作権収支は、音楽や映像などの輸出額は増加しているものの、コンピュータの基本ソフトなどの輸入額も増加していることなどから、近年は▲5,000~▲6,000億円の赤字となっています。

3.今後の展開
アベノミクスでは、成長戦略の一つとして、日本のコンテンツ(音楽や映像など)やファッション、文化などの海外展開を進める企業を支援する「クールジャパン機構」を2013年11月に設立しました。また、2013年12月には「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、日本の伝統的文化が世界に認められつつあり、日本の特許権や著作権などが、今後注目されてくると思われます。
5月の「知的財産権等」の受取額は4,810億円と「輸出額」の5兆7,188億円と比べ水準はまだ低いものの、燃料輸入の増加などによる経常収支(5月は5,228億円の黒字)の悪化を抑制する要因の一つとして注目されます。