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健全化が進む「ユーロ圏の財政」(欧州) 【キーワード】

2016年8月26日

<今日のキーワード>
ユーロ圏各国の財政は、各年度の財政赤字をGDPの3%以内、公的債務残高を同60%以下に留めるルールとなっています。現在、これらがルール内に収まっていない国は、ルール内に収める目標達成の時期が設けられています。リーマン・ショック後の景気減速において、多くの国では「財政赤字」が拡大しました。また、その後の景気回復局面においては、この財政政策のルールに収めるべく財政緊縮的な政策が採られています。

【ポイント1】ユーロ圏全体では、財政赤字はルール内にまで縮小

未達成の国は、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、フランスの4カ国

■ユーロ圏各国は、リーマン・ショックに際して大規模な景気対策を実施しました。このため、ユーロ圏全体では、それまでは概ねGDP比3%程度の財政赤字であったところから、2009年には同6%超にまで拡大しました。その後は改善が続き、2016年には同2%以下にまで縮小する見込みとなっています。

■国ごとに見ると、2015年末時点では、ギリシャ(GDP比7.2%の赤字)、スペイン(同5.1%)、ポルトガル(同4.4%)、フランス(同3.5%)の4カ国がルールの範囲を超えた財政赤字となっています。

【ポイント2】ポルトガル、スペインは目標達成を延期

ポルトガルは2016年、スペインは2018年までに

■財政赤字が大きい国のなかでも、ポルトガルは2015年、スペインは2016年を期限として、それぞれ財政赤字をルール内にまで縮小すると、EU理事会との間で取り決めていました。しかし、この目標は達成できないことが明らかとなり、8月のEU理事会では、ポルトガルは2016年、スペインは2018年まで目標達成時期を延長することが合意されました。今後は、10月15日までに財政赤字縮小に向けた有効な措置を実施するための報告書を提出しなければなりません。

【今後の展開】 財政緊縮のペースを緩めながら、財政再建と景気回復を両立

■最近のユーロ圏では、財政目標の達成時期を先延ばしにする形で財政緊縮のペースを緩めています。足元のユーロ圏のGDP成長率は、前年比+1%台の緩慢なものにとどまっているうえ、今後は英国のEU離脱決定の影響なども考えられることから、こうした目標達成の時期の延長は、財政再建と景気回復を両立させるために必要なことと考えられます。

■財政赤字の目標達成の時期は延期されているものの、ユーロ圏では公的債務残高の比率が低下するなど、財政の健全化が着実に進展しています。このことは、今後景気が悪化した際に、より財政出動が行いやすくなることにも繋がります。経済成長は緩慢ながらも、ユーロ圏の脆弱性は着実に改善してきていると言えそうです。

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