欧州銀行のストレステスト(ユーロ圏)【キーワード】
2014年10月28日
<今日のキーワード>
「ストレステスト」は欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏の銀行を対象に行う健全性の審査です。10月26日、ECBは「ストレステスト」の結果を発表しました。2013年12月末基準で、不合格となった銀行は25行、資本不足額は合計で約250億ユーロとなりました。
【ポイント1】主要130行中25行が基準を満たせず
大手銀行の資本不足は認定されず
■ECBのストレステストはユーロ圏の主要130行を対象に行われ、今後3年間に経済が予想通り拡大した場合で自己資本比率8%以上、景気後退に陥った場合に同5.5%以上を満たすことなどが合格ラインでした。ストレステストの結果、主要130行中25行が2013年末時点で、合格ラインを満たすことができませんでした。大手銀行については、資本不足の認定はありませんでした。
【ポイント2】イタリアの銀行が最多
健全性を増す動きも顕在化
■25行の内訳を見ると、イタリアの銀行が9行と最も多く、次いでギリシャ、キプロスが各3行、ベルギー、スロベニアが各2行、フランス、ドイツ、スペイン、オーストリア、アイルランド、ポルトガルが各1行でした。
■ストレステストは、透明性の確保と信頼性の確立が目的です。不合格となった行数は極端に少ないわけではなく、資本の不足額も増強が可能な水準と言えそうです。今年に入り、12行が約150億ユーロの増資を行うなど健全性が増しています。今回の結果を受け、ECB及びユーロ圏の銀行に対する信頼がある程度高まったと言えそうです。

【今後の展開】市場に安心感が広がる可能性も
■資本不足の銀行は自助努力で増強
12行が増資したことを受け、指摘された資本の不足額は残り約100億ユーロとなりました。現時点で資本が不足している銀行は、今後2週間以内に資本計画を提出し、最長9カ月以内にECBから指摘された資本の不足分を自助努力で埋めることになります(注1)。
(注1)自助努力が困難な場合に公的資金を使います。利用順は①母国政府の破綻処理基金、②母国政府経由の欧州安定メカニズム(ESM)の支援、③ESMによる直接支援、となっています。
■市場に安心感が広がる可能性も
今回のストレステストは、大手銀行の資本不足が認定されなかったことや資本不足額を埋める手順も明確なこと等から、妥当な結果となりました。ECBはストレステストと資産査定を、単一銀行制度(SSM)(注2)発足に向けた大事な一歩としていただけに、市場には安心感が広がると期待されます。 11月4日からいよいよSSMが発足する予定です。
(注2)単一銀行制度:ECBが各国当局、欧州銀行監督機構と連携して銀行を直接監督する制度です。