「自由貿易試験区」が4カ所に拡大(中国)【キーワード】
2015年5月11日
<今日のキーワード>
「自由貿易試験区」(以下、自貿区)は、貿易、金融、サービス業の規制を緩和して、輸出入と海外企業の進出を容易にする経済区域のことで、2013年9月に上海で初めて発足しました。2015年4月に、天津、広東、福建でも発足し、上海では対象地域が拡大されました。現代版シルクロード(一帯一路)推進と並び、「新常態」を目指す中国の成長戦略の鍵を握ると見られています。
【ポイント1】上海自貿区への外国企業の進出が増加
人民元取引や外貨取引の規制緩和は金融自由化のテストとの見方も
■先行する上海自貿区の2014年の海外からの直接投資は、契約件数が前年比4.5倍に増加し、契約額は約92億米ドルと中国全体の約9%を占めました。通関などの貿易手続きが簡単なうえ、関税も優遇されているため、物流関連などのサービス業へ外国企業の進出が相次ぎました。
■自貿区では金融面での規制も緩和されました。人民元や外貨取引の規制緩和が進められ、国内で進めようとしている金融自由化のテストを兼ねていると見られています。
【ポイント2】新成長モデル模索へ
「一帯一路」推進とも密接に連携
■上海で好スタートを切ったことから、自貿区は、広東、天津、福建でも設置され、さらに上海は対象面積が4倍以上に拡大されました。
■政府はこれらの4大自貿区の規制緩和を一層進めて、対外開放の促進、貿易振興、サービス業の活性化を図り、これまでの労働集約的な輸出主導型とは異なる経済成長を目指す狙いと見られます。

【今後の展開】自貿区を活用した経済の活性化が期待される
■消費者にも輸入の利便性が増すメリット
自貿区への海外企業の進出により、消費者もその恩恵を受ける見込みです。例えば、海外通販を利用した商品の購入は、配送時間が短縮されるだけでなく、購入制限も緩和される見込みです。輸入車にかかる税金の軽減も見込まれ、より安価での購入が期待されます。
■本土居住者の米株投資も可能に
自貿区内で自由貿易口座を個人が開設出来るようになり、細則が決まれば、米株など中国本土以外への投資が可能になると見られます。また、外資による病院の設立規制が緩和され、高度な医療サービスをこれまでもよりも安く受けられる可能性が出てきました。自貿区を活用した経済の活性化が期待されます。