ホームマーケット日々のマーケットレポート【キーワード No.1,334】環境改善が見込まれるアジアの「新興国通貨」(アジア)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【キーワード No.1,334】環境改善が見込まれるアジアの「新興国通貨」(アジア)

2014年5月23日

1.昨年の「新興国通貨」の動向は?

 昨年5月ごろから、「新興国通貨」は大きく下落しました。米国で量的金融緩和策(QE)の縮小が始まるとの見方が強まり、投資資金が新興国市場から逃避する懸念が高まったことが背景にあります。
 新興国の多くは、経済成長を海外からの投資や輸出に依存しており、世界的な金融緩和策の解除などの場合には投資資金や輸出代金が減少する影響を比較的大きく受けると考えられます。また、その国の対外的な収支の状況を示す経常収支が赤字の場合、その国の通貨は下落圧力を受ける傾向が強まります。経常収支の赤字が大きい状況で、投資資金の引き揚げ懸念が高まる場合には、経済悪化の懸念とあいまって、通貨安が加速することもあります。

2.最近の動向

 今年に入り、アジアの「新興国通貨」は底堅く推移しています。昨年、下落のきっかけとなった米国のQE縮小は今年1月から開始されていますが、実際には大きな通貨安要因とはなりませんでした。
 昨年に下落傾向に転じて以降、通貨の下落率の大きかった国では政策金利が引き上げられ、通貨下落に歯止めがかかりました。インドネシアでは累計1.75%、インドでは同0.75%引き上げられました。また、インドネシア・ルピアや、インド・ルピーは経常収支の赤字が大きかったことも通貨売りの対象となりました。しかし、インドネシアやインドでは昨年後半以降に経常収支の赤字が大きく縮小し、外貨の流出が減少傾向にあり、このことも通貨上昇の一因と考えられます。

3.今後の展開

 アジアの「新興国通貨」は、各国の経常収支が改善傾向にあることなどから、当面は堅調に推移しそうです。ただし、米国のQE政策は今秋に終了が見込まれており、その後の利上げのタイミングは「新興国通貨」の新たな変動要因となりそうです。
 また、政治的な転換期にあることにも注目です。インドでは5月16日に開票された下院総選挙で、インド人民党が単独で過半数を確保し、10年ぶりの政権交代となることから、経済構造改革への期待が高まっています。インドネシアでは7月に予定されている大統領選挙で、経済政策に定評のあるジョコ・ウィドド氏の当選が確実視されています。一方で、タイではインラック首相の失脚など政情不安があり、ベトナムでは反中デモが継続するなど、周辺国への影響も懸念され、今後の動向に注目です。

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