世界を支える強力なリフレ政策(吉川レポート)

2020年11月12日

1.二つの不確定要因

2.「リフレ的」ポリシーミックス

3.投資対象の範囲が広がる方向か

1.二つの不確定要因

■主要国の金融市場は10月以降、新型コロナウイルス感染が再拡大する中での世界経済の行方と、米国の政策見通しという二つの不確定要因を注視しています。
■世界景気については、ユーロ圏が感染抑制のため11月から規制強化に踏み切り、10-12月に一旦マイナス成長になるとみられる一方、中国は製造業の好調に加え、感染が抑制されており、全般的に好調を持続しています。こうした中、グローバル経済の腰折れ回避は、米国経済が左右する構図となっています。米国では重症・死亡率が低目で推移しており、欧州対比で医療体制に余裕があるとみられる上、低金利のサポート効果(住宅投資・自動車消費の増加)もあります。米国経済が多少減速しても回復基調を維持し、世界経済全体の腰折れは避けられるというのがメインシナリオですが、金融市場が米国の感染状況を注視する状況はしばらく続くと思われます。

■米国の選挙結果については流動的な要素が残っています(バイデン候補が過半数の選挙人を得たとの開票結果に関してトランプ大統領が訴訟をどこまで継続するかという点に加え、上院の多数党確定はジョージア州の2議席に関する1月初の決選投票まで待つ必要があります)。こうした中、選挙後の財政支出の規模、税制改革、巨大企業分割論の行方、対中政策、規制改革などが論点となっており、金融市場の判断が揺れる余地は残っています。しかし、新型コロナの影響が続く中、2年後に中間選挙を控え、新政府・議会の下での2021年経済政策の軸は財政刺激による景気サポートとなります。1月中に追加のコロナ対策が決定されれば、米景気の失速は避けられるとみられるため、1月初旬までに新政権・議会が経済政策を巡る議論を再開できれば、不透明感は低下すると考えられます。

2.「リフレ的」ポリシーミックス

■2020年末~2021年初の金融市場は、以上みてきた二つの不確定要因を巡り、リスクオン(選好)・オフ(回避)の両方向に振れる可能性があります。しかし、中央銀行の潤沢な資金供給の下で大規模な財政支出が行われる「リフレ的」ポリシーミックスが引き続き強力であり、ダウンサイドは限定されると考えます。3月にコロナ危機が発生して以降、米国など主要国の中央銀行が量的緩和によって長期金利を低位に押し下げる中、政府が債券発行によって資金を調達、その資金は給付や融資を通じて家計や企業に移転され、預金として積み上がっています。主要国のM1(家計・企業が保有する現金及び流動性預金の残高)は高い伸びを示しており、特に米国(2020年9月)は前年同月比41.0%、1.6兆ドル増となっており、当分の間、景気や金融市場の下支え要因となります。

■また、国際通貨基金(IMF)が10月に発表した財政モニター報告によると、先進国、新興国共に2020年は財政赤字が対GDP比で10%ポイント以上拡大しており、大規模な財政出動が行われたことがわかります。2021年について現時点では各国共に財政赤字を縮小させる見通しとなっていますが、米国の追加財政対策やユーロ圏の復興財政が具体化すると、高水準の財政赤字=財政刺激が続く形になる可能性が高いと思われます。

■金融緩和も強化される方向とみられます。主要国の中央銀行はインフレ期待を押し上げることの重要性を意識し始めており、豪州中銀(RBA)が11月に追加の金融緩和を実施したほか、欧州中銀(ECB)も11月の理事会後の声明文で12月の追加緩和実施を強く示唆しました。米連邦準備制度理事会(FRB)は、一時的なインフレ上振れを容認する平均インフレ目標を8月に導入しており、追加緩和(債券購入の拡大など)を検討する可能性があります。

3.投資対象の範囲が広がる方向か

■大規模な財政支出が続く中、中央銀行の量的緩和維持(一部強化)によって長期金利の上昇を緩やかなものに抑えるというポリシーミックスは簡単には変わらないと考えます。利回り追求型の資金フローが基調となりますが、景気の不透明感低下、ないしはワクチン開発などに進展があれば、投資対象が米国以外の株式や債券などに徐々に広がる可能性があります。

■為替面では米連邦準備制度理事会(FRB)の大規模緩和の浸透をうけ、実効レートベースではドル安傾向と思われますが、欧州中銀(ECB)も金融緩和を強化する見込みであり、緩やかな動きとなりそうです。中国が金融緩和を一旦打ち止めとしているほか、日本は追加緩和の手段が限られるため、人民元や円が堅調に推移する可能性に注意したいと考えます。 
                                         (吉川チーフマクロストラテジスト)

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