ブルーウェーブ、米大統領選後の見通し

2020年10月28日

1.米大統領選後に予想される政策の変化

2.バイデン候補の政策は、財政支出増と規制強化の組み合わせか

3.バイデン候補が勝利すれば、株価と金利が上昇し、米ドルは下落か

1.米大統領選後に予想される政策の変化

■米大統領選挙が11月3日に迫ってきました。現時点の世論調査では、バイデン候補の勝利を示唆する内容となっています。同時に行われる議会選挙では、下院は民主党が過半数を維持することが見込まれています。接戦が予想されている上院も民主党が制すると、大統領と議会の両方を民主党が押さえることとなり、新大統領の政策が推進される可能性が高まります。

■なお、大統領も上下院議会も民主党が勝利するケースは、民主党を表す“青”の波が共和党を飲み込む動きになぞらえて「ブルーウェーブ」と呼ばれています。ブルーウェーブ・シナリオが実現した場合、これまでの共和党、トランプ大統領の政策から大きく変わることになります。双方の選挙公約を下表にまとめました。

2.バイデン候補の政策は、財政支出増と規制強化の組み合わせか

■バイデン候補の政策としては、(1)インフラ投資と増税、(2)規制強化、(3)対中を含む対外政策が注目されます。
■(1)インフラ投資は、公共投資やエネルギー網・ブロードバンド網などの未来型のインフラ投資が中心にあげられています。クリーンエネルギーへの投資は4年で2兆米ドルという巨額なもので、他の公共投資と共に経済を浮揚させる効果が見込まれます。
■景気対策の財源は、法人税の増税等です。トランプ大統領によって35%から21%に引き下げられた法人税を28%に引き上げる予定です。ただし、公共投資の増額と増税の効果を比較すると、財政支出はこれまでよりも増加すると見込まれます。また、少なくとも、新型コロナ感染拡大による景気への悪影響が残る中で増税を行うことは考えにくく、当初は、財政支出増の効果が強く出ることが期待できます。

■(2)規制強化は、民主党内の左派勢力の影響力の大きさに注目が集まります。現時点では、エネルギー業界への規制緩和の巻き戻し、金融規制の強化、製薬会社への税制優遇の撤廃があげられています。左派への配慮から規制強化が強くなると、企業経営への制約となるため、関連する業界では警戒心が高まっています。

✓米中対立懸念は一旦後退する公算が大きい

■(3)対外政策で最大の懸念材料である対中政策では、バイデン候補も民主党も中国の台頭に危機感を強めていることは共和党のトランプ大統領と同じですが、強硬姿勢をとるトランプ大統領と比べ、やや対立姿勢が弱まるとみられます。
■バイデン候補は、経済全般や環境問題等に関しては、中国と宥和的なスタンスです。条件付きですが、トランプ大統領によって実施された対中関税の巻き戻しにも言及しています。
■ただし、ハイテクや軍事の分野では、トランプ政権よりも強硬姿勢をとる可能性があり、全面的な対立解消は見込めないと考えられます。

3.バイデン候補が勝利すれば、株価と金利が上昇し、米ドルは下落か

■大統領選挙の結果に関しては、バイデン候補が選ばれ、上下院とも民主党という「ブルーウェーブ」になる、または、トランプ氏が勝利し、現状の「ねじれ議会」が続く、といった場合は市場が混乱する可能性は低く、総じて好感されそうです。いずれの場合でも、財政政策やコロナ対策が期待され、景気回復の方向性自体は変わらないためです。

■特に、バイデン候補が勝利し、上下院ともに民主党が勝利するブルーウェーブ・シナリオが実現する場合、増税リスクが懸念されるものの、⽶中対立の緩和やインフラ投資の拡充などにより成長への期待が徐々に高まり、株価は上昇すると想定されます。また、金利は上昇、米ドルは下落すると見込まれます。

■なお、今回の選挙は接戦が見込まれる他、新型コロナの感染リスクを抑制するため郵便投票の割合が急増しており、関連して訴訟リスクや開票の遅れ等から混乱することが見込まれます。2000年の大統領選挙では、大接戦となったフロリダ州の票の集計について訴訟となり、最高裁での判決が出るまで約1カ月、選挙結果が確定しませんでした。その間、米国株式は軟調に推移したため、今回の選挙が紛糾した場合も相場が調整すると見込む声もあります。確かに、選挙結果が確定しない状況は不透明感を高めますが、2000年の年末はITバブル崩壊の影響が大きく、今回とは状況が異なるとみられます。

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