もし米大統領選で勝者が決まらなかった場合はどうなるか?
2020年10月23日
●今回は郵便投票の割合増加などで、選挙後もしばらくの間は、勝者が決まらないことも想定される。
●両候補とも選挙人270人の過半数を獲得できなければ、大統領は改選後の下院議会で選出へ。
●下院でも決まらなければ、副大統領や下院議長が代行するケースも、混乱時の株安には要注意。
今回は郵便投票の割合増加などで、選挙後もしばらくの間は、勝者が決まらないことも想定される
11月3日の米大統領選挙が間近に迫ってきました。今回の選挙では、新型コロナウイルスの感染予防の一環として、多くの州が郵便投票の制度を拡充しました。その結果、全投票に占める郵便投票の割合は、大幅に増える見通しです。そのため、①集計が遅れるリスク、②集計結果が僅差で再集計となるリスク、③郵便投票がトランプ氏に不利な結果となった場合、トランプ氏が郵便投票の不正を訴えるリスク、などを考慮しておく必要があります。
これらのリスクが顕在化した場合、11月3日の選挙を終えても、しばらくの間は勝者が決まらないことも十分想定されます。実際、2000年の米大統領選挙では、共和党のブッシュ候補が民主党のゴア候補を僅差で上回ったフロリダ州の得票再集計を巡り、法廷闘争が繰り広げられました。最終的には米連邦最高裁の判断に基づき、ゴア氏が敗北宣言、ブッシュ氏が勝利宣言を行い、選挙日から36日でようやく勝敗が決まった経緯もあります。
両候補とも選挙人270人の過半数を獲得できなければ、大統領は改選後の下院議会で選出へ
世論調査では、バイデン氏支持者の多くは郵便投票を利用し、トランプ氏支持者の多くは投票所で投票すると回答していることから、開票の早い段階ではトランプ氏が優勢となり、その後、郵便投票分も含めて集計が進むにつれ、バイデン氏の得票数が増加する展開が予想されます。なお、投票は州ごとに行われ、勝者はその州の選挙人を獲得します。538人の全選挙人のうち、過半数の270人以上を獲得した候補が勝者となります(図表1)。
各州の選挙人が大統領候補に投票する日は12月14日ですが、接戦となれば、いずれの候補も270人の過半数を獲得できないことも考えられます。この場合、大統領の選出は、2021年1月3日に招集される新たな議会に委ねられます。具対的には、下院議会において、50州の代表が1票ずつ投じ、26票を得た候補が勝利します。現有議席では共和党が26票を持ちますが、投票は改選後の下院で行うため、民主党が議席を積み増せば状況は変わります。
下院でも決まらなければ、副大統領や下院議長が代行するケースも、混乱時の株安には要注意
なお、副大統領の選出は、改選後の上院議会において、上院議員100人が1票ずつ投じ、51票を得た候補が勝利します。なお、トランプ氏の任期は2021年1月20日正午です。これまでに、下院投票で大統領が決まっていない場合、上院投票で副大統領が決まっていれば、次期副大統領が大統領代行を務め、副大統領も決まっていなければ、下院議長が大統領代行を務めます。
また、トランプ氏は、郵便投票は不正として米連邦最高裁に提訴する恐れがあります。トランプ氏は、保守派のエイミー・バレット氏をリベラル派の最高裁判事の後任に指名しましたが、これは最高裁の保守派支配を強め、自身に有利な判決を狙ったものとの見方もあります。選挙後の展開は、投票結果を見極めざるを得ませんが、前述の2000年の大統領選後に株価は大きく下落しており(図表2)、勝者が決まらないリスクには注意が必要です。