ホームマーケット身近なデータで見た経済動向4月のトピック「遺失届現金に対する拾得届現金の比率の改善継続、東京の桜の開花日、JRA売得金など、身近なデータでは明るい話題が多い。国内新型コロナ感染者数の足元でのリバウンド、ロシアのウクライナ軍事侵攻、原油価格等の上昇と内憂外患の状況下だが、もたつきながらも景気拡張局面は継続か」

4月のトピック「遺失届現金に対する拾得届現金の比率の改善継続、東京の桜の開花日、JRA売得金など、身近なデータでは明るい話題が多い。国内新型コロナ感染者数の足元でのリバウンド、ロシアのウクライナ軍事侵攻、原油価格等の上昇と内憂外患の状況下だが、もたつきながらも景気拡張局面は継続か」

2022年4月4日

(景気腰折れリスク、新型コロナ感染を押しのけて、原油価格上昇が第1位、国際関係の緊張や軍事衝突が第2位)

ロシアはウクライナに対し2月24日に軍事侵攻を開始した。3月29日には4回目の両国の対面の停戦協議がイスタンブールで開かれ、ウクライナは「中立化」に関して具体的な提案をおこなった。これを受け入れるかどうかはロシアのプーチン大統領の判断に委ねられた。しかし4月初めになってもロシア軍は、ウクライナ東部への攻勢を強めている。また、ロシアが軍事作戦を縮小するとする首都キーウ周辺については、NATOの事務総長が「今後さらなる攻撃が予想される」と述べるなど、依然、緊張が続いている。ロシアへの経済制裁のそれなりの効果が表れるのには、ある程度の時間がかかることもあり、戦争の終結は依然見通せない状況だ。ロシアのウクライナ侵攻の影響で、天然ガス、原油などのエネルギー価格や、小麦などの食品価格は高騰している。

エコノミストのコンセンサス調査であるESPフォーキャスト3月調査が3月16日に発表された。20年9月から奇数月に行っている特別調査で「3つの景気腰折れリスク」について尋ねているが、これまでは「新型コロナウイルスの感染状況」が概ね第1位だった。しかし、3月調査では「新型コロナウイルスの感染状況」が初めて第3位まで低下した。代わりに3月調査で上位に来た項目は、第1位が「原油価格上昇」、第2位が「国際関係の緊張や軍事衝突」になった(図表1)。ロシアのウクライナ軍事侵攻の影響が大きいことがわかる。なお、22年1月調査では「原油価格上昇」が3位タイ、「国際関係の緊張や軍事衝突」は6位であった。

(景気ウォッチャー調査2月調査で「ウクライナ」関連コメントが226件に1月の5件から増加。先行き判断関連DI28.7)

ロシアのウクライナへの軍事侵攻の開始直後の2月25日~28日が調査期間である景気ウォッチャー調査2月調査では、「ウクライナ」関連が226件、「ロシア」関連が135件と1月調査の1ケタからどちらもコメント数が先行き判断で大きく増加した。各々関連データをつくると、各々28.7、27.6と、全員が「悪くなる」と答えたときの25.0にかなり近い弱い数字である。ウクライナ情勢は足元で景況観の悪化材料になった(図表2)。
景気ウォッチャー調査の現状判断DIは21年12月では57.5と過去2番目の高水準であったが、22年2月は37.7へ低下した。21年~22年2月の14カ月で、緊急事態宣言またはまん延防止等重点措置発令月の平均39.8、非発令月・平均54.5となっている。2月が低水準になったのは、まん延防止等重点措置が発令された影響が大きいが、2月25日~28日が調査期間なのでウクライナ情勢も影響したとみられる。新型コロナウイルス関連現状判断DIは、20年1月以来最高水準になった21年11月が63.3で最高だが、新型コロナウイルス第6波の影響から22年1月には29.8へと急落し、2月は31.9となった(図表3)。また。2月のワクチン先行き判断DIは62.1と50超になった。3回目ワクチン接種への期待が出ているようで、120人が回答した。景気ウォッチャー調査の現状判断DI、先行き判断DI、現状水準判断DIは、緊急事態宣言またはまん延防止等重点措置発令の度に影響を受けた変動が生じていて、ジグザグと推移している。

(2月分生産指数の基調判断は「持ち直しの動き」だが、2月分景気動向指数の判断は「足踏み」か。両者の差は紙一重)

2月分鉱工業生産指数は3カ月ぶりに前月比上昇した。先行きも上昇見込みで、基調判断は4カ月連続で「持ち直しの動きがみられる」になった。新型コロナウイルス、ウクライナ情勢という景気下押し要因が多い中でも、何とか「持ち直しの動き」の判断が続いていることは、景気の底堅さを裏付けていると思われる。需要の動向は底堅いとみられる。景気一致指数の代表的な系列である生産指数の動きは、20年5月を谷とする緩やかな景気拡張局面継続を示唆すると言えよう。
但し、景気動向指数の最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、21年3月分~8月分では「改善を示している」であったが、21年9月分~22年1月分では「足踏みを示している」の判断が継続している。鉱工業生産指数が「持ち直し」なのに、景気動向指数が「足踏み」では判断が違うようにみられる。しかし、両者の差は紙一重である。景気動向指数は1月改定値で前月差が速報値の▲0.5から▲0.1に上方修正された(図表4)。もし、改定値があと0.2ポイント大きく上方修正され+0.1になっていたら、一致CIの1月分の3カ月後方移動平均・前月差は3カ月連続の上昇、かつ一致CIの前月差が上昇になり、「改善」に戻る条件を満たしたのである。
鉱工業生産指数・2月分速報値・前月比は+0.1%と、新型コロナウイルス感染症急拡大や部材供給不足などの影響緩和などを受け3カ月ぶりに上昇となった。しかし、4月7日に発表される景気動向指数・一致CIは前月差が僅かな下降になると予測される。紙一重で「足踏み」継続となりそうだ。

(WTI一時、約13年8カ月ぶりの高値。米国の戦略石油備蓄放出発表などで4月1日終値は100ドル/B割れ)

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響でエネルギー価格や穀物価格が高騰している。両国が主要輸出国だからだ。原油価格は3月1日のWTIが1バレル=103.41ドルと2014年7月以来7年8カ月ぶりの水準に上昇した。3月8日にはWTIが一時1バレル=130ドル台と2008年7月以来約13年8カ月ぶりの高値を付け、終値も1バレル=123.70ドルであった。その後はやや落ち着いた動きになり4月1日の終値は1バレル=99.27ドルになった(図表5)。OPECプラスは3月31日にオンラインで閣僚級会合を開き、追加増産の見送りで合意した。G7の首脳は3月24日の共同声明で追加増産を呼び掛けたが、OPECプラスは声明で「現在の価格変動の原因は市場の需給ではなく、地政学的なものだ」と指摘し、5月は追加増産を見送った上で、生産調整基準の見直しを踏まえて日量約43万バレル増やす方針を維持した。
バイデン米大統領は3月31日、米国の戦略石油備蓄から日量100万バレルを今後6カ月間放出すると発表した。総量は過去最大の1億8,000万バレルの規模に上る。また、IEAは4月1日に緊急会合を開催し、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰を受け、原油高に一定の歯止めをかけるため、加盟国が協調して石油備蓄を追加放出することで合意した。会合では米国から備蓄石油の追加放出について提案があり、議論の結果、追加放出を実施することで合意した。ただ、放出の規模や、各国の負担割合、実施時期などについては意見がまとまらず、今後IEAの事務局と各国の間で調整を続けることで一致したという。

(国内企業物価指数3月分前年比80年12月分以来の高水準か。東京都区部消費者物価指数3月分で伸び高める)

4月12日に発表される3月分国内企業物価指数の前年同月比は2月分の+9.3%から伸び率を高め13カ月連続の上昇になると予測する。80年12月分+10.4%以来の高水準だった21年11月分の+9.2%をピークに12月分+8.7%と鈍化傾向だった伸び率は、22年に入り、1月分+8.9%、2月分+9.3%と伸び率は上昇傾向にある。関連指標の日経商品指数42種・3月分の前年同月比は+26.0%で、2月分の前年同月比+23.9%から上昇率が高まっている。
全国消費者物価指数・2月分は 「総合」の前年同月比が+0.9%と6カ月連続の上昇、 「生鮮食品を除く総合」の前年同月比が+0.6%と6カ月連続の上昇となった。 「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の前年同月比は▲1.0%と11カ月連続の下落である。「総合」は2年10カ月ぶり、「生鮮食品を除く総合」は2年ぶりの上昇幅になった。まぐろが円安、コロナ禍における海外の遠洋船出漁見合わせにより上昇、たまねぎが21年の猛暑による不作による在庫不足で上昇、いちごが温室の燃料に用いる重油価格の上昇など、一部の生鮮食品が輸送費の上昇や産地における不作などにより上昇した。原油価格の上昇や円安などにより、エネルギーは+20.5%と大きい上昇幅になった。
ウクライナへの軍事侵攻の影響は、東京都区部消費者物価指数・3月中旬速報値に表れた。「総合」の前年同月比が+1.3%と2月分の+1.0%から上昇率を高めた。 「生鮮食品を除く総合」の前年同月比は+0.8%と%と2月分の+0.5から上昇率を高めた。 「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の前年同月比は▲0.4%の下落だが、2月分の▲0.6%から下落率が縮小した。

(ESP調査予測平均、全国消費者物価指数「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」前年比は4〜6月期+1.65%に上昇)

ESPフォーキャスト調査・3月調査で、全国消費者物価指数・「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の前年比の先行き予測をみてみよう。エコノミストの予測平均値は、22年1〜3月期は+0.51%の見込み。携帯電話料金引き下げの影響が剥落することで4〜6月期に+1.65%まで上昇するが、以降24年1〜3月期まで徐々に低下する。年度では、22年度に+1.51%と上昇率を高めた後、23年度は+0.78%の見込みである。高位8人の予測平均値は、22年1〜3月期は+0.81%の見込み。4〜6月期に+1.95%まで上昇、7~9月期は+1.94%、10~12月期は+2.01%まで上昇するが、23年1〜3月期は+1.85%、4〜6月期に+1.49%まで鈍化以降24年1〜3月期の+1.16%まで1%前半で推移する見込みである。
内閣府の「消費者マインドアンケート調査」の物価見通し(5段階評価)から景気ウォッチャー調査流のDIを作成すると、直近22年3月調査で16年9月の統計開始以来の最高水準を2月調査に続き更新した(図表6)。

(刑法犯総数の認知件数。2月分前年比減少基調に戻る。21年に東京で現金を紛失しても6割近く戻ってきた)

全国の新型コロナウイルスの感染者数は22年2月5日には105,614人と第6波のピークを付けた。まん延防止等重点措置が3月21日まで発令され、人々の行動も自粛モードになっていたので、感染者数は3月22日には20,227人の直近のボトムをつけた(NHKまとめによる)。その後、感染者数は3月26日以降9日連続で前週の同曜日を上回っていて、リバウンドが懸念される状況になっている。3月30日は53,748人で3月17日以来の5万人台になった。直近4月3日は47,345人だ。
笑点の視聴率(関東地区、ビデオリサーチ)は16.0%と大相撲千秋楽と重なった1月23日までの週で、その他娯楽番組の中で第1位になった。翌週1月30日までの週でも17.7%で第1位。2月で1位になったのは13日までの週(14.5%)、20日までの週(16.5%)で第1位である。夕方に外出して消費行動をする人の割合が少なかったことを示唆していたが、3月で第1位になることはなかった。
刑法犯総数の認知件数は近年減少傾向にあり、昨年は56.8万件と前年比▲7.5%の減少であった。但し、22年になって最初の1月分で異変が起きた。4.2万件で、前年同月比+1.8%と増加に転じていた。2月分以降の動向が注目されたが、2月分は前年同月比▲10.6%の減少に転じた。1~2月の前年比は▲4.4%で、これまでの長期的な減少傾向に戻った(図表7)。
警視庁の遺失届現金に対する拾得届現金の比率は21年も改善傾向となった。遺失届現金の前年比は▲1.3%とコロナ禍でもあり2年連続の減少になったが、拾得届現金の前年比は+2.1%と2年ぶりの増加になった。遺失届現金に対する拾得届現金比率は12年の35.4%をボトムに9年連続上昇、21年は56.0%と20年54.2%をさらに上回った(図表8)。現金を紛失しても6割近く戻ってくるという社会の安定を示唆していよう。

(2月の自殺者数の前年同月比8カ月連続減少。失業率低下。東京の桜開花日3月20日。景気拡張局面にあることを示唆)

完全失業率と相関が高い自殺者数は、21年前半は前年同月比増加傾向だったが、21年後半と22年1月・2月は8カ月連続減少だ。警察庁発表の21年の自殺者数は、21,007人、前年比は▲0.4%の減少である。2月暫定値の自殺者数は1,426人、前年同月比▲16.1%で8カ月連続減少だ。22年1~2月暫定値の自殺者数は3,076人で、前年同月比▲11.0%の減少だ。完全失業率は21年平均では2.8%と20年と同じになった。22年2月分の完全失業率は2.7%で1月分の2.8%から低下した。コロナ禍でも、様々な対策の効果で、落ち着いた数字となっている。
東京の桜の開花日は3月20日になった。2年連続観測史上最速となった昨年の3月14日よりは遅かったが、平年の3月24日より4日早かった。1953年から実施されている気象庁の生物観測調査で、東京の桜の開花が3月20日以前と早い年は昨年までで10回あり、コロナ禍の影響が出た2020年を除き、全て景気は拡張局面である(図表9)。3年連続で新型コロナウイルスの感染拡大を予防するために、お花見の宴会は自粛されたが、早く春が来ると春物が売れるし、厳しい冬の期間が過ぎて桜の花を愛でると明るい気分になる人々も多いだろう。宴会は出来ずとも人々のマインドを明るくさせる効果がありそうだ。

(大相撲春場所懸賞5場所連続で前年比増加。サッカー日本代表の勝敗・視聴率・日経平均の関係は健在)

令和4年大相撲春場所で、新関脇の若隆景が初優勝を果たした。新関脇の優勝は昭和7年春場所の清水川、昭和11年夏場所の双葉山に続き、86年ぶり3人目の快挙。福島県出身力士の優勝は昭和47年初場所の栃東(初代)以来となった。横綱照ノ富士が休場となったので、事前申し込みで1,610本あった懸賞は、実績には1,494本が懸かった。前年比は+25.4%で、5場所連続前年比プラス。コロナ前の水準にはまだ戻っていないものの、それなりの底堅さが感じられる数字であろう(図表10)。
サッカー日本代表はワールドカップ・カタール大会アジア最終予選で地上波中継があった1月27日の中国戦と2月1日のサウジアラビア戦にともに2-0で連勝した。テレビ視聴率は各々16.2%、20.0%と高く、翌日日経平均株価は、各々647円04銭高、434円96銭と大幅上昇した。ワールドカップ出場を決めた3月24日のオーストラリア戦は地上波放送がなかった。結果だけ知らされた人も多かったため翌日日経平均株価は39円45銭高と小幅だったが上昇した。アジア最終予選最終戦の3月29日ベトナム戦の視聴率は13.6%だったが結果は1-1の引き分けと期待外れの結果となった。翌日日経平均株価は、▲225円17銭安と下落になった。視聴率が高く国民の多くが注目する日本代表の試合で、2点差以上で勝利すると翌営業日に日経平均株価が大幅に上昇する傾向は今年に入ってからも生きているようだ。
ワールドカップ・カタール大会の1次リーグ組み合わせ抽選会が4月1日(日本時間4月2日)にドーハで行われ、日本はE組に入り、11月23日にドイツ、11月27日に6月の大陸間プレーオフ(コスタリカ―ニュージーランド)の勝者、12月1日(日本時間12月2日)にスペインの順で対戦することが決まった。強豪チームと対戦する予選リーグだが、史上初の8強以上を目指す森保ジャパンの健闘を期待したいところだ。
JRA(日本中央競馬会)の売得金は21年で前年比+3.6%と10年連続の増加になった。22年は3月27日時点までの年初からの累計前年比は+10.3%の増加になっている。11年連続増加に向け、順調に推移している。今年初のG1レースは3月27日に行われた高松宮記念の売得金が前年比+17.2%の増加となった。これでG1レース昨年12月5日のチャンピオンズカップ以来7レース連続して前年比増加となっている(図表11)。