ホームマーケット宅森昭吉のエコノミックレポート身近なデータで見た経済動向1月のトピック「11月の景気動向指数CIは先行・一致とも2カ月連続上昇見込み。21年の自殺者数は2年ぶり減少の見込み。今年の漢字「金」、JRA売得金10年連続増加、Da-iCEのレコード大賞受賞など、身近なデータでは景気回復を示唆するものが多い」

1月のトピック「11月の景気動向指数CIは先行・一致とも2カ月連続上昇見込み。21年の自殺者数は2年ぶり減少の見込み。今年の漢字「金」、JRA売得金10年連続増加、Da-iCEのレコード大賞受賞など、身近なデータでは景気回復を示唆するものが多い」

2022年1月4日

(オミクロン型変異株の動向次第だが、生産は10~12月期・1~3月期と前期比上昇か)

鉱工業生産指数・11月分速報値・前月比は+7.2%と、部材供給不足の影響などが10月分から一段と緩和されたことを受けて、2カ月連続の上昇となった。季節調整値の水準は97.7で、21年7月の98.1以来の水準である。全体15業種のうち、自動車工業、プラスチック製品工業、鉄鋼・非鉄金属工業など11業種が前月比上昇となった。

鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると12月分は前月比+1.6%の上昇、1月分は前月比+5.0%上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、12月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲1.3%の低下になる見込みである。先行きの鉱工業生産指数、12月分を先行き試算値最頻値前月比(▲1.3%)で延長すると、10~12月期の前期比は+1.0%の増加になる。さらに1月分を製造工業予測指数前月比(+5.0%)で、2・3月分を前月比ゼロで延長すると、1~3月期の前期比は+6.4%の増加になる。また、12月分を製造工業予測指数前月比(+1.6%)で延長すると、10~12月期の前期比は+2.1%の増加になる。さらに1月分を製造工業予測指数前月比(+5.0%)で、2・3月分を前月比ゼロで延長すると、1~3月期の前期比は+8.6%の増加になる(図表1)。

新型コロナウイルスの新たな変異株オミクロン型の今後の動向など、懸念材料もあるが、今のところ生産指数は、7~9月期の5四半期ぶり前期比低下の後、10~12月期、1~3月期と連続して、前期比上昇基調に戻る可能性が大きいだろう。

(景気動向指数CI・先行一致とも2カ月連続上昇見込み。3月8日には「改善」に戻るか)

11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが2カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差プラス寄与に、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストックの4系列が前月差マイナス寄与になろう。また、11月分の一致CIも2カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列が前月差プラス寄与に、投資財出荷指数1系列が前月差マイナス寄与になるとみた(図表2)。

11月分での景気の基調判断は、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」が継続してしまうと予測する。3カ月後方移動平均は上昇に転じるが、「改善」に戻るためには、「3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇」という条件があるため、12月分まで「足踏み」のシグナルが点灯し、前月差上昇の条件も満たせば、早ければ3月8日発表の1月分で「改善」に戻りそうだ。

(前回マイナスからプラスに転じた12月調査の日銀短観の全規模・全産業・業況判断DI)

2021年12月調査の日銀短観では、大企業・製造業・業況判断DIは原材料価格高などが悪材料になり+18と横ばいだったが、前回先行き見通しからは4ポイント改善し事前に思ったよりも良かったという結果になった。大企業・製造業・業況判断DIの先行き見通しは+13と悪化の見込みだ。DIは「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合だ。DIの中身をみると、「悪い」は減少、中間項目の「さほど良くない」が大きく増加というかたちでの悪化だ。調査期間中に突然登場した、オミクロン型変異株の先行き動向の不透明さが影響したようだ。

一方、大企業・非製造業・業況判断DIは+9と前回から7ポイント上昇、コロナ前の19年12月の+20以来の水準になった(図表3)。全規模・全産業・業況判断DIは+2と前回▲2のマイナスからプラスに転じ、緩やかな回復基調継続を示唆する内容になっている。

政府は11月19日に新たな経済対策を閣議決定した。規模は財政支出ベースで過去最大規模の約55.7兆円、金融機関の融資や民間の投資も含めた事業支出ベースでは約78.9兆円規模となる。財政政策のGDP押し上げ効果は、ESPフォーキャスターの平均で1.79%、高位8人の平均で3.15%の見込みであり、それなりに期待される。

(11月景気ウォッチャー調査でオミクロン型変異株の影響が表れたが、判断DIは底堅い)

11月の「景気ウォッチャー調査」は、現状判断DIが56.3と前月比0.8ポイント上昇した。新型コロナウイルスの感染が落ち着いたことで、3カ月連続改善し、2005年12月(57.5)に次ぐ過去2番目の高水準になった。但し、10月に前月比12.9ポイント上昇し、56.6と、2013年11月(57.6)以来の高水準となった先行き判断DIが、11月には4.1ポイント低下の53.4に低下した。11月調査では25日から月末までが調査期間なので、オミクロン型変異株への懸念が先行き判断に表れたかたちだ(図表4)。

そこで、オミクロン型を意味する「新変異株」というコメントをした回答数は現状判断では10人だけで関連DIをつくると52.5だったが、先行き判断では168人と3ケタの回答数で、関連DIは46.5と「悪い」超を意味する50割れになった。大幅な悪化要因ではないものの、「新変異株」が先行き判断の不透明材料となっていることが確認できる。

「景気ウォッチャー調査」では「新型コロナウイルス」という言葉が2020年1月調査で初めて登場した。それ以降、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が景況感の大きなマイナス材料となっていたが、最近ではプラス要因として働くようになった。11月調査で新型コロナウイルスに触れたコメントから関連現状判断DIを作成すると63.3と20年1月以降最高となった。新型コロナウイルス関連先行き判断DIの方は10月に61.4と最高水準を更新したあと、11月は56.5へとやや低下した(図表5)。

(インフレ加速するとはみていない、消費者マインドアンケート調査とESPフォーキャスト調査)

最近、懸念されている材料を11月の「景気ウォッチャー調査」でウォッチャーがどう判断したかを見てみよう。今後発生が懸念される第6波について先行き判断でコメントした人は129人と、比較的多くの人が触れているが、第6波関連先行き判断DIは53.7で「良い」超になっていて、影響は比較的軽微であるという判断が多いようだ。旅行業界が期待するのはGo Toトラベルの再開である。コメントした人は94人で、Go To関連先行き判断DIは69.1と高水準である。

半導体不足に関し現状判断でコメントした人は32人で関連DIは46.1と、景気判断の分岐点50を僅かに下回ったが、一方、半導体不足に関し先行き判断でコメントした人は30人、関連DIは50.0となった。総じてみると先行きの悪化材料にはなっていない。

足元、高水準の原油価格、それを受けてのエネルギー価格の上昇などが話題になっている。また食品の値上げなども多く報道されている。電力、都市ガスは足元の原油価格や為替動向が反映されるのに時間がかかるため、当面上昇が見込まれる。しかし、ガソリン価格は最近低下傾向である。11月8日時点のレギュラーガソリン1ℓ当たりの全国平均・店頭価格は、169円00銭であった。2014年8月以来、約7年ぶりの高値である。その後高値圏継続ではあるが、12月20日時点では165円10銭へと6週連続で低下した。景気ウォッチャー調査の11月の価格・物価関連先行き判断のコメント数は135人と10月の69人から増加したものの、関連DIは10月の34.1という厳しい数字から11月は44.6まで上昇した。

消費者マインドアンケート調査で物価上昇(1年後)の5段階の判断から景気ウォッチャー調査と同様の手法でDIを算出すると、12月は75.4で、11月の78.6から低下、21年7月(72.6)の水準に戻った(図表6)。また、12月のESPフォーキャスト調査で消費者物価指数(生鮮食品除く総合)の予測平均値の先行き推移をみると、21年7~9月期の0.0%(実績)から、10~12月期に+0.38%に上昇する。22年1〜3月期に一旦+0.23%にやや低下するが、携帯電話のマイナス寄与度が一巡し剥落する4〜6月期に再び0.87%まで上昇、ここをピークとして、以降0.7%程度で推移する見立てである。市井の人々とエコノミストのどちらも、どんどんインフレが進むとはみていないことがわかる。

(11月自殺者数は前年比▲18.6%、5カ月連続で減少。21年は年間で2年ぶり減少に)

完全失業率は2021年1月~11月までの平均で2.8%(2.82%)である。2021年平均では2.8%と2020年と同じになりそうである。この期間で最も高かった月は5月の3.0%で一番低いのは3月の2.6%である。小数点第2位まででみると、5月は2.97%、3月は2.63%であった。10月は2.7%(2.68%)だったが、11月は新たな職を探しに動いた人が多く2.8%(2.82%)と若干上昇した(図表7)。

完全失業率と相関が高い自殺者数は、21年前半は前年同月比増加傾向だったが、後半は減少傾向だ(図表8)。11月の自殺者数の暫定値を1,541人になった。前年同月比は▲18.6%の減少である。前年同月比が減少になったのは、7月以降5カ月連続だ。21年1月から11月までの自殺者数の累計は19,285人で、前年20年の同期の19,386人と比べて▲0.5%少ない状況だ。12月速報値の自殺者が、万一前年より、100人多い1,795人になっても、2021年の自殺者合計は21,080人になり、2020年の21,081人を下回る。

(世の中の明るいムードと、景気回復傾向示唆する、21年「今年の漢字」と「新語・流行語」)

12月13日に清水寺で、2021年『今年の漢字』は『金』だと発表された(図表9)。オリンピック・パラリンピックで日本選手が活躍し多くの金メダルを獲得したことや、大谷翔平選手がメジャーリーグを舞台にベーブ・ルース以来のリアル二刀流での大活躍でMVP獲得という金字塔を打ち立てたことなどが選ばれた理由だそうだ。

夏のオリンピック開催年は、調査期間直前に新潟中越地震があった2004年の「災」、リーマンショックがあった2008年の「変」のようにショッキングな出来事が発生すると別の漢字になるが、2000年、2012年、2016年と夏のオリンピック開催年の漢字は「金」になっている。2021年は4度目の「金」になった。

そして、2021年の「新語・流行語」をみてみると、大賞にノミネートされた言葉は、感染症関連語で「自宅療養」「人流」などの全体の20%に当たる6語が選ばれた。2020年の感染症関連語は、年間大賞に選ばれた「3密」をはじめとして、「アマビエ」、「GoToキャンペーン」、「濃厚接触者」など15語で全体の50%だったので、大きく減少した。

2021年で多かったのは、「東京オリンピック・パラリンピック」関連語が9語で全体の30%だった。なお、年間大賞には、ア・リーグ最優秀選手(MVP)など11冠を獲得(図表10)するほど大活躍した「大谷翔平選手」関連語の「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれた。新語・流行語大賞も、『今年の漢字』と同様に、昨年の感染症関連語から、今年は前向きな言葉に変わり、景気が回復基調にあることを示唆している。

(11~12月シングルCD、3曲初週売上50万枚超。21年JRA売得金10年連続増)

コロナ禍でも順調に推移している身近なデータが多い。競馬売上高の足元のデータを確認しよう。JRA(日本中央競馬会)の12月26日の有馬記念の売得金が前年比+5.8%となったのをはじめとして12月のG1レースは5レースが前年比増加となった。昨年が有馬記念直前の土曜日開催だったホープフルSが、今年は12月28日(火曜日)に開催され前年比+86%の大幅増加となった。21年のJRA売得金は前年比+3.6%と昨年の+3.5%を上回る増加率になり、10年連続の増加になった(図表11)。

11~12月発売のシングルCDでは、INI「A(Rocketeer/Brighter)」が50.8万枚、なにわ男子「初心LOVE(うぶらぶ)」が70.5万枚、Snow Ⅿan「Secret Touch」が73.4万枚と、景気が拡張局面にあることを示唆する初週売上50万枚超が3曲続いた。

(日本レコード大賞はDa-iCE「CITRUS」。5人目連覇ソロ歌手出ず景気後退局面回避)

2021年の日本レコード大賞には、10組の優秀作品の中から5人組ダンス&ボーカルグループDa-iCEの「CITRUS」が選ばれた。事前には、昨年「炎」で大賞を受賞したLiSAが「明け星」で、ソロ歌手として5人目の連覇を果たすかどうか注目されていたが、大賞は逃した。これまでに連覇を達成したソロ歌手は、細川たかし、中森明菜、安室奈美恵、浜崎あゆみの4人だが、最初の受賞年と2回目の受賞年では、全て景気の局面が交替したというジンクスがある。2020年は5月を景気の谷とする拡張局面であった。このため、5人目の連覇ソロ歌手が出なかったことは、昨年末は景気後退局面になっていないことを示唆すると言えよう(図表12)。