ホームマーケット身近なデータで見た経済動向7月のトピック「『ドラゴン桜』最終回視聴率20.4%で上半期連ドラ視聴率首位、6月末時点で本塁打28本の大谷翔平の活躍など身近なデータで明るい動き。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響で4~6月期GDPは弱含むが、6月の日銀短観・大企業製造業DI は18年12月以来の水準まで回復」

7月のトピック「『ドラゴン桜』最終回視聴率20.4%で上半期連ドラ視聴率首位、6月末時点で本塁打28本の大谷翔平の活躍など身近なデータで明るい動き。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響で4~6月期GDPは弱含むが、6月の日銀短観・大企業製造業DI は18年12月以来の水準まで回復」

2021年7月1日

(『ドラゴン桜』・最終回視聴率20.4%、上半期連ドラ視聴率第1位。視聴者は、前向きな姿勢に共感か)

4~6月期のTBS日曜劇場「ドラゴン桜」は全話で二桁視聴率を記録する好調な推移をみせ、6月27日の最終回(第10回)で視聴率20.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区の平均世帯視聴率)の大台を記録した。1~3月期の「天国と地獄〜サイコな2人〜」最終回(第10回、3月20日)の20.1%を上回り、今年上半期連ドラで第1位となった。2005年7~9月期に放映された前作で最高視聴率だった最終回(第11回、9月16日)の20.3%も上回った(図表1)。


元暴走族の弁護士・桜木建二(阿部寛)が、元教え子の弁護士・水野直美(長澤まさみ)とともに東大に合格させるために奮闘し、高校生たちもそれぞれの家庭事情などの障害をはねのけて東大受験をした。 ドラマでは学園買収劇のドタバタも描かれた。最終回には、2005年と今回の新旧・東大専科の生徒役俳優の豪華共演も話題になった。「騙されたくなかったら、損して負けたくなかったら、お前ら勉強しろ」、「人生には正解がたくさんある。大学に進むのも正解。行かないのも正解。スポーツに夢中になるのも、音楽に夢中になるのも、友達ととことん遊びつくすのも。そして、誰かのためにあえて遠回りをするのも、全部正解だ。だから生きることに臆病になるな。自分の可能性を否定するな。受かったやつも、落ちたやつも、堂々と胸を張って生きろ」などのドラマの中のセリフは、心に刺さり、前向きにしてくれる言葉と言えるだろう。


人々を前向きな気持ちにしてくれる「ドラゴン桜」が前回放映された2005年7~9月期は、2002年1月を谷、08年2月を山とする戦後最長の景気拡張局面である「いざなみ景気」の途中に当たる。今回の放送も2020年5月頃を谷とする景気拡張局面に当たった可能性が大きいとみられる。2005年7~9月期で最高視聴率を記録したのは「電車男」(フジテレビ系列)で、最終回(第11回)の視聴率が25.5%で「ドラゴン桜」最終回を5.2ポイント上回った。主演は伊東美咲・伊藤淳史。インターネットの電子掲示板から生まれた物語をテレビドラマ化したもので、気弱なオタク青年と美人でお嬢様なOLの純愛物語であった。純愛ドラマがヒットする時は、景気は拡張局面であることが多いという傾向通りの視聴率だった。

(エンゼルス・大谷翔平はじめ、国民に勇気と希望を与えてくれる、日本人アスリートの世界の舞台での活躍)

コロナ禍での明るい話題は、日本人アスリートの、国民に勇気と希望を与えてくれる海外での活躍だろう。女子ゴルフのメジャー、全米女子オープン選手権は6月6日(日本時間7日)の最終日に、笹生優花と畑岡奈紗によるプレーオフが行われ、日本とフィリピンの両国籍を持つ笹生優花がメジャー初優勝を果たした。日本女子のメジャー制覇は1977年全米女子プロ選手権の樋口久子、2019年全英女子オープンの渋野日向子に続き3人目となった。


MLBでもエンゼルス大谷翔平が、ベーブ・ルースの再来のような二刀流での大活躍が話題になっている。メジャー4年目で投打ともに開花した。投手として先発ローテーションに入り、打者としては本塁打のタイトルを争っている。


4月26日(日本時間27日)のレンジャーズ戦で「2番投手」として先発登板し今季初勝利を挙げた。本塁打数で首位につけている選手が先発登板するのは、1921年6月13日のベーブ・ルース(ヤンキース)以来で、100年ぶりの歴史的登板を白星で飾った。米国の景気で1921年6月は20年1月を山とする景気の後退局面の最終局面で、21年7月を谷として景気は23年5月まで拡張局面になった。ベーブ・ルースの活躍が当時の米国の人々を勇気づけたと思われる。


大谷翔平は6月29日のニューヨークでのヤンキース戦で「2番・DH」でスタメン出場し、第2打席に両リーグ単独トップに立つ3試合連続27号ソロ、さらに続く第3打席でも3年ぶり2度目となる2打席連発の28号2ランを放ち、本塁打王争いで他を引き離した(図表2)。なお、大谷翔平は6月30日(日本時間7月1日)、敵地ニューヨークでのヤンキース戦に初の「1番・投手」で、二刀流出場した。残念ながら、初登板となったヤンキースタジアムで、初回に2安打5四死球で7失点、2死しか取れず無念の降板となった。

(日本の金メダル数が2ケタに達した五輪で、メキシコ大会以降、日経平均株価は大会期間中にすべて上昇)

紆余曲折があった東京オリンピック2020大会。いよいよ7月23日に開会式が行われる見込みだ。オリンピックと経済の関係というと、すぐ経済効果はいくらだという人も多いが、今回はスタジアムなどの建設は昨年までに終了している。またコロナ禍で一般の外国人の来日がないのでインバウンド需要もほとんどない。今大会は、選手の活躍が人々の気持ちを前向きにさせる面の影響が大きいと思われる。


2016年のリオオリンピックで日本は金メダルを12個獲得し、ランキングは第6位。ランキング10位までの国の金メダル数と当時の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.868と高い。選手育成などにお金をかけられる国が強いともいえるし、金メダルを獲るとその国の人々が元気になって、景気が良くなるともいえ、相乗効果が生み出されたようだ。


日本の金メダル数が2ケタに達した大会は、東京(1964年)、メキシコ(1968年)、ミュンヘン(1972年)、ロサンゼルス(1984年)、アテネ(2004年)、リオ(2016年)の6大会だ。このうち、建設投資の反動でオリンピック開催月の10月が景気の山となった1964年の東京大会を除き、日本の金メダル獲得数が2ケタに達した5大会では、日経平均株価は大会期間中にすべて上昇した。ちなみにモントリオール(1976年)以降、10個に到達しなかった大会は、1大会を除いてすべてマイナス推移だ。唯一の例外は2012年のロンドン。金メダルは7個と少なかった、銀・銅を含めたメダル数が38と当時で史上最多となりマインドに大きくプラスに働いたと考えられる(図表3)。山下JOC会長は今大会の獲得目標を過去最高の16個(東京、アテネ)を上回る30個としている。

(景気ウォッチャー5月調査で「オリンピック」先行き判断コメント数最多タイに増加。「今年の漢字」は「金」か)

5月の景気ウォッチャー調査での「オリンピック」先行き判断DIは49.3と4月の46.4から上昇したが、景気分岐点の50に僅かに届かなかった。東京オリンピックに対する人々の考え方が分かれていることを示す数字と言えよう。オリンピックに対する関心は高まっている。コメントしたフォーキャスターは5月調査で152人、4月調査の90人から大きく増加し、20年1月の152人以来の最多タイなった(図表4)。新型コロナウイルス感染拡大をコントロールし開催される、東京オリンピックでの選手の活躍に注目していきたい。


年末の12月12日(いいじひとじ)の漢字の日に清水寺で発表される「今年の漢字」はそのときどきの景気局面や経済状況を映している。景気が良く明るいムードが社会に満ちているときは、前向きな意味の漢字が選ばれる傾向にある。夏のオリンピックの開催年では、「今年の漢字」は「金」になることが多い。調査期間直前の新潟中越地震や史上最多の台風10個上陸で「災」となった2004年や、リーマンショックの2008年の「変」のようなショッキングな出来事がない場合、2000年、12年、16年と夏季オリンピック開催年の漢字は「金」になっている。五輪の「金」メダルが注目されるようだ。新型コロナウイルス感染拡大で東京オリンピックは2021年に延期になり、2020年の「今年の漢字」は新型コロナウイルス関連から「密」が選ばれた。今年は、新型コロナウイルス関連などではなく、他の事件や災害もなく、「金」が選ばれることを期待したい。

(4~6月期実質GDP、米国はプラス成長継続だが、日本ではマイナスは回避されても、もたつく成長率に)

1~3月期実質GDPは、米国で前期比年率+6.4%のプラス成長になったのに対し、日本は前期比年率▲3.9%のマイナス成長になった(図表5)。米国では新型コロナウイルスワクチンの普及、政府の大規模な財政出動が成長を後押しした。最大の需要項目である個人消費は、米国では前期比年率+11.4%の増加だったのに対し、日本では2度目の緊急事態宣言発令の影響で個人消費支出が前期比年率▲5.8%の減少と逆方向の動きになった。但し、日本の1〜3月期・実質雇用者報酬は前期比+2.3%と3四半期連続増加になったことは、コロナが収束すれば消費が戻る可能性が大きいことを示唆していよう。


3度目の緊急事態宣言が発出されたことを受けて、4~6月期はGDPの過半を占める個人消費が落ち込みそうだ。しかし、家計調査など需要サイドの4月のデータは底堅く、4~6月期GDP はもたつくものの必ずしもマイナス成長になるとは限らない状況だろう。家計調査と同時に発表された総務省の総消費動向指数は、個人消費の97%に当たる家計最終消費支出の推移を様々の月次データによる時系列回帰モデルによって求めたものだ。実質総消費動向指数4月の前月比は▲0.1%の微減にとどまり、4月の対1~3月平均比は+1.3%の増加となった。5月の落ち込みを考慮しても4~6月期は大幅なマイナスにはなりにくいと思われる。また、消費総合指数は4月の対1~3月平均比は+0.2%とプラスの伸び率になっている。


米国の4~6月期実質GDP は、アトランタ連銀のGDPナウ(6月25日時点)では+8.3%、NY連銀のGDPナウキャスティング(6月25日時点)では+3.4%とどちらもプラス成長の見通しである。日本の4~6月期実質GDP は、ESPフォーキャスト調査6月調査によると、フォーキャスター37人の平均で前期比年率+0.17%、高位8人の平均は+1.85%、低位8人の平均は▲2.15%である。実質個人消費の平均は前期比▲0.34%のマイナスにとどまっている。見方に幅があるものの、4~6月期実質GDP はもたついた伸び率というのがコンセンサスだ。

(ワクチン接種加速見込みを好感、5月「ワクチン」先行き判断DI再び50超。コメント数は初の500人超)

NHKのHPに掲載されている日本の新型コロナウイルスのワクチン接種回数(100人あたり)は、5月6日に取得したデータでは、2.76回にすぎず、米国の74.08回に比べかなり少ない状況だった。「景気ウォッチャー調査」の先行き判断で「ワクチン」に言及した人は20年12月・113人、1月・226人、2月・379人と月を追うごとに増加したが、3月では230人に、4月では306人にとどまった。「ワクチン」関連先行き判断DIは12月43.4から上昇し1月では50.1と僅かだが分岐点の50超になった後、2月で61.2まで上昇した。しかし、3月は57.0、4月には47.0に低下した。期待が大きかった「ワクチン」の接種進捗の遅れなどが意識され、やや失望感が出ていることを示唆する数字になった。


5月24日から、自衛隊による新型コロナ・ワクチンの大規模接種が、東京と大阪の会場で始まり、接種に加速感が出た。それを受けてか5月25日~31日が調査期間の5月の景気ウォッチャー調査では「ワクチン」関連先行き判断DIが持ち直した。先行き判断で「ワクチン」についてコメントする景気ウォッチャーが506人と初めて500人を超え、「ワクチン」関連先行き判断DIは56.2と再び50超になった(図表6)。


NHK・HPの接種回数(100人あたり)データは、6月1日に取得したデータでは、日本は9.76回、米国は88.19回だった。7月1日に取得したデータでは、日本は34.40回、米国は97.22回。1カ月間での増加幅は、日本が24.64回で米国の9.03回の約2.7倍の増加ペースとなった。日本の接種回数(100人あたり)は、この期間に、インドネシア、インド、ロシアを上回り、メキシコの34.43回に迫ってきた。日本での接種回数が加速していることがわかる。


早い企業は6月13日から職域接種が始まった。医療従事者や高齢者だけでなく、幅広い年齢層にワクチン接種が広がる局面に入った。国民一人一人の感染対策の実施、変異株に対するしっかりした水際対策などに加え、他国と比べ遅れていた日本のコロナ・ワクチン接種ペースの改善で、何とか新型コロナウイルスの感染拡大が収束していくことを期待したい局面だ。


ところが、6月下旬になって職域接種を希望する企業からの申請を停止する事態になった。また、自治体向けのワクチンの供給にも問題が生じている。6月末になってワクチン不足で予約停止となった自治体もあり、7月以降の接種計画が混乱しているようだ。配送や、都道府県内でのワクチンの分配がうまくいっていないようだ。現場のコントロールがうまく行っていないのは、IT化の遅れなど、行政の問題が根底にありそうだ。

(日銀短観6月調査も改善基調が継続。大企業・製造業・業況判断DIは18年12月調査以来の水準)

日銀短観6月調査で大企業・製造業・業況判断DIは+14と20年12月調査以来の水準になった。一方、大企業・非製造業・業況判断DIは+1と、足元のワクチン接種加速の動きなどを反映し20年3月調査以来のプラスに転じた(図表7)。


6月短観は大企業・中堅企業・中小企業と製造業・非製造業を掛け合わせた6つのカテゴリーすべてで、最近の判断は3月調査より改善した。先行きは新型コロナウイルス感染拡大への不安感から慎重な見方が継続していることを示唆する内容だった。「最近」で「良い」と回答したが、「先行き」は不透明だとみて「さほど良くない」にした人が多かった大企業・製造業など3つの組み合わせで、「先行き」の業況判断が「最近」よりやや悪化した。しかし、6つの組み合わせ全てで「悪い」の割合は低下している。先行きの景況感は悪くはないと言えよう。

(5月完全失業率は2.97%。自殺者数は11カ月連続前年比増加傾向だが、早ければ7月に減少か?)

5月の完全失業率は3.0%と4月から0.2ポイント上昇した。小数点1位でみると、昨年12月以来5カ月ぶりの3.0%だ。しかし、小数点2位でみると、2.97%とまだ2%台で、今年に入って5カ月連続で2%台継続となっていて、コロナ禍では比較的落ち着いているとみることもできる。(図表8)。5月の有効求人倍率は1.09倍で4月と同水準だった。5月の新規求人倍率は2.09倍で、前月に比べて0.27ポイント上昇した。景気動向指数の先行系列に採用されている新規求人数は5月の前月比+1.3%の増加だった。


警察庁の自殺者数は、新型コロナウイルス感染拡大により20年で前年比+4.5%の増加と11年ぶりに悪化した。月次でみると、21年5月は+12.6%と11カ月連続増加になった(図表9)。21年1月の前年同月比は速報値では減少したが、現在は+1.1%の増加となっている。21年1~6月の6カ月の自殺者数の1カ月平均は1,596人であったが、20年7~12月では同1,917人に増加した。21年1~5月の1カ月平均は1,808人で、20年1~6月よりは多いが、20年7~12月からは減少している。21年1~5月の傾向が続けば、早ければ7月にも前年同月比で自殺者が減少に転じる可能性があり、期待したい。

(ネットでの馬券購入好調、JRA売得金増加基調継続。G1レース売得金は11レース連続で前年比増加)

20年のJRA(日本中央競馬会)の売得金は前年比+3.5%と9年連続の増加になった。昨年、無観客レースになった直後は競馬場に来場する人の馬券購入がなくなり売上げが急減したが、徐々にネットでの馬券購入が増加し、20年5月初めを底に売得金・累計前年比が回復した。21年は6月27日時点までの累計前年比は+6.0%の増加になっている(図表10)。G1レースの売得金は3月28日の高松宮記念以降6月27日高松宮記念まで11レース連続で前年比増加している。


6月10日に気象庁が発表した『エルニーニョ監視速報』では、「昨年夏から続いているラニーニャ現象は終息したとみられる。今後、秋にかけては平常の状態である可能性が高い」とされた。この面から景気に与える影響は中立であろう。