ホームマーケット身近なデータで見た経済動向1月のトピック「2020年緩やかな回復を裏付ける、ESPフォーキャスト総合景気判断DI上方修正。「パプリカ」Foorinレコード大賞、今年の漢字などの身近なデータも拡張局面継続示唆」

1月のトピック「2020年緩やかな回復を裏付ける、ESPフォーキャスト総合景気判断DI上方修正。「パプリカ」Foorinレコード大賞、今年の漢字などの身近なデータも拡張局面継続示唆」

2020年1月6日

(ESPフォーキャスト総合景気判断DI、2020年10~12月期は12月調査では50超の見込みに上方修正)

「ESPフォーキャスト調査」における、フォーキャスター全員の総意を示す「総合景気判断DI」を、9月調査から12月調査までの4回分並べて示したグラフ(図表1)を見ると、2019年7~9月期は景気判断の分岐点にあたる50を上回っていた。消費税増税が実施された10~12月期には「総合景気判断DI」は大きく一時低下するものの、2020年1~3月期には分岐点の50を再び上回る水準まで回復し、直近の12月調査では2020年4~6月期、7~9月期と80以上となっている。その後オリンピックの反動などが懸念される10~12月期は11月調査までは50を下回る見込みだったが、12月調査では50超の見込みとなった。12月調査回答日前の12月5日に、政府が国や地方からの財政支出が13.2兆円程度となる「安心と成長の未来を拓く経済対策」を閣議決定したことを反映したと思われる。経済対策は民間の支出も加えた事業規模では26兆円程度になる。①災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、②経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、③未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上が3本の柱である。2021年に入ると1~3月期、4~6月期、7~9月期と再び上昇し、緩やかな景気回復が続くというのがエコノミストのコンセンサスである。

(「景気ウォッチャー調査」にも取り上げられる、嵐の紅白出場からみる景気)

国民の多くが注目する大晦日のNHK紅白歌合戦と景気の間には密接な関係がある。例えば、北島三郎さんが紅白歌合戦で元気に明るく「まつり」を歌った全ての年の大晦日は景気拡張局面だった。数あるヒット曲の中から時代の雰囲気にふさわしい曲を選んだ結果であろう。人気グループの嵐が紅白歌合戦に出場した2009年以降の大晦日は、全て景気拡張局面である。2012年は3月の景気の山のあと後退局面に入ったが11月には景気の谷をつけたので、大晦日は拡張局面になっていた。なお、2019年末の景気局面に関してはエコノミストで見解が分かれるところだが、ESPフォーキャスト調査12月調査では拡張局面とみるエコノミストが34人中25人と7割超で多数だ。紅白での嵐はメドレーが恒例だが、「まつり」と同様に過去3回歌われた「Happiness」など前向きで国民を元気づける曲が多い。2019年の紅白歌合戦で、嵐は11回目の出場を果たし、恒例のメドレーとしてA・RA・SHI、Turning upを大トリで歌ったほか、特別企画として米津玄師が書き下ろした2020年NHK応援ソング「カイト」を初披露した(図表2)。

嵐が景況感に影響を及ぼしていることは、直近2019年11月の「景気ウォッチャー調査」でも明らかである。公的調査であるので個別のアーティスト名は出せないが、北海道の景気ウォッチャーの現状判断理由に人気アイドルグループとして嵐の札幌ドームでのコンサートの影響が以下のコメントにも垣間見られた。「人気アイドルグループのコンサートが貢献してくれたことで、前年並みの売上を確保できた。コンサート前後の数日間は、ファンとみられる客の来店があり、幅広い料理の注文がみられた。」(高級レストラン(スタッフ))、「人気アイドルグループのコンサートイベントがあったことなどで、11月は前年よりも若干プラスになっている。ただ、そうしたプラス要因を除くと、消費税増税後の旅行控えが顕著にみられる」(一般小売店[土産](経営者))。

嵐が活動休止する前の最後の仕事は2020年の紅白歌合戦となる可能性が大きそうだが、嵐と紅白歌合戦との関係から見ると少なくとも2020年末まで、景気拡張局面継続の可能性が大きいと言えそうだ。

(「パプリカ」Foorin、最年少での日本レコード大賞受賞は、景気面での明るい現象)

子どもたちを中心に人気を集める小中学生5人組ユニット・Foorinが「パプリカ」で第61回日本レコード大賞を受賞した。平均年齢11.2歳での受賞は史上最年少での快挙である。 「パプリカ」はNHKの「2020応援ソングプロジェクト」から生まれた曲で、作詞・作曲は「Lemon」で知られる米津玄師が手がけた楽曲だ。「パプリカ」は特に小さな子どもたちに大人気で、全国の幼稚園、保育園、小学校の運動会や学芸会で使われてきた。「パプリカ」を流せば、「子どもが踊りだす」と言われている。Foorinのミュージックビデオは、動画サイトYouTubeで1.5億回という再生回数を記録している。また、Foorinは昨年のNHK紅白歌合戦に初出場を果たした。

子ども向けの曲のCD売り上げがミリオンセラーを記録すると、景気拡張局面というジンクスがある。親の懐具合と直結することが影響していると考えられる。オリコンのデータがある60年代後半以降で、これまでにミリオンセラーとなったキッズソングは5作品。「黒ネコのタンゴ」(1969年)、「およげ!たいやきくん」(1975年)は、高度成長期、「おどるポンポコリン」(1990年)はバブル最盛期に当たっている。「だんご3兄弟」(1999年)は、1999年1月の景気の谷から景気拡張局面に入った3月に発売された曲で、「慎吾ママのおはロック」(2000年)も景気拡張局面での発売だった。一方、「パプリカ」のCD売上は、100万枚には到底及ばない。音楽配信や動画サイトが人気の現在は、昔のようにレコードやCDの売上でヒットを判断できる時代ではないからだ。日本レコード大賞受賞曲の「パプリカ」は、昨年のNHK紅白歌合戦のオープニング曲でもあり、ミリオンセラーと肩を並べる存在であると言え、景気へのプラスの効果が期待される。

(2019年の漢字は「令」。2・3位に「新」「和」と新元号に因んだ漢字。「災」、「税」は各々5位と10位にとどまる)

日本漢字能力検定協会は清水寺で12月12日に毎年、その年1年の世相を表す「今年の漢字」を発表する。子どもから大人まで一般の人がはがきやインターネットなどで投票し、多く票を集めたものが選ばれる仕組みで、どんな漢字になるかで、足元の景況感を推し量ることができる。

2019年の「今年の漢字」は「令」が選ばれた(図表3)。新元号が「令和」になったことから、その最初の文字を素直に選んだ人が多かったのだろう。第2位は「新」。新天皇即位による新元号決定が、新たな時代の幕開けを告げた年だということで選ばれた。○○ペイといった新しい支払方法など新たな時代の到来を感じた人が多かったのだろう。第3位は「和」。これも新元号「令和」からだが、こちらはラグビーワールドカップで初のベスト8に進出した日本代表の「ONE TEAM」などと絡めて選ばれたのだろう。昨年1位だった「災」は第5位にとどまった。

国民的グループ嵐の活躍と台風の嵐から「嵐」が第6位に、洪水被害などで第7位に「水」が選ばれたが、災害に関する文字のランキング順位は低めだった。第4位は「変」だった。元号や消費税率の変更を意識した人も多かったのだろう。

2014年の消費税率増税の年に第1位に選ばれた「税」は2019年では第10位にとどまった。税率の引き上げ幅は前回の3%に対し今回は2%だったこと、軽減税率の導入やポイント還元などの消費税増税のマイナスの影響に対する対策も取られたことで、消費税増税の影響は14年よりは軽微だった可能性が今年の漢字にも表れているようだ。

(11月分鉱工業生産指数前月比2カ月連続減少。基調判断「弱含み」に据え置き。10~12月期前期比減少不可避)

鉱工業生産指数・11時月分速報値・前月比は▲0.9%と2カ月連続の減少になった(図表4)。2015年を100とした季節調整値の指数水準は97.7と、2013年3月分・4月分(97.7)以来の低水準になった。11月分鉱工業生産指数では、自動車工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、電子部品・デバイス工業の3業種が前月比増加で、生産用機械工業、電気・情報通信機械工業、その他工業等の12業種が前月比減少となった。生産用機械工業の前月比は▲8.9%で、12業種中で減少率が一番大きかった。台風19号の影響で部品供給が滞ったショベル系掘削機械や海外向け生産が減少した半導体生産装置などの影響が大きかった。一方、自動車工業の前月比は+4.5%の増加になった。台風による減産の影響が薄れたようだ。

経済産業省は基調判断を8月分・9月分の「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から、10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正したが、11月分でも判断を据え置いた。鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると12月分は同+2.8%の増加、1月分は前月比+2.5%の増加の見込みである。そのうち、生産用機械工業は12月分同+11.6%の増加、1月分は前月比+5.8%の増加の見込みである。台風の悪影響から脱しそうな様子が窺われる。但し、過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、12月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.4%の増加にとどまる見込みになる。なお、製造工業予測指数の調査時点は12月10日なので、米中貿易協議進展に対する期待の高まりで日経平均株価が前日比598円高となった12月13日の影響は含まれていない。このため、12月分、1月分が上振れる可能性もあると思われる。

先行きの鉱工業生産指数を、12月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.4%)、1月分を前月比(+2.5%:製造工業予測指数)、2・3月分の前月比を横ばいで延長すると、10~12月期の前期比は▲4.3%の減少、1~3月期の前期比は+2.5%の増加になる。また、12月分を製造工業予測指数前月比(+2.8%)、1月分を前月比(+2.5%:製造工業予測指数)、2・3月分の前月比を横ばいで延長すると、10~12月期の前期比は▲3.5%の減少、1~3月期の前期比は+4.0%の増加になる。両者の試算値から見て、10~12月期の前期比減少は避けられないものの、生産の持ち直し基調が年末頃からしっかり出てきて、1~3月期の前期比は増加に転じそうな局面と言えよう。

(12月調査日銀短観 製造業の弱さと非製造業の底堅さを示唆)

12月調査日銀短観(12月13日発表)では、大企業・製造業・業況判断DI(「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いたもの)が0と前回9月調査の+5から悪化した。悪化は4期連続で、2013年3月調査(▲8)以来の低水準になった(図表5)。米中貿易戦争に起因する世界経済減速や、台風19号など自然災害による工場の操業停止などが影響した。

2020年3月までの大企業・製造業の先行き判断のDIは横這いの0である。12月短観の調査期間は11月13日~12月12日と、翌月初に発表される3・6・9月短観が当月末までであることと比べ早めだったことは残念だ。ひとまず世界経済の不透明要因を緩和する結果となった12月13日の米中通商交渉での「第1段階」の合意や、12月12日の英国総選挙の結果が反映されていれば、先行き判断DIはプラスになっていたことだろう。

一方、大企業・非製造業・業況判断DIは、9月調査の+21から12月調査では+20と1ポイント低下はしたものの、消費税増税が実施された四半期でも3年(12期)連続+20台と高水準が続いている。消費税増税対策として導入されたキャッシュレス決済へのポイント還元制度などの対策や、ラグビー・ワールドカップ日本大会に絡んだインバウンド需要の盛り上がりなどが景況感の下支え材料になっているようだ。中小企業・非製造業の業況判断DIも12月調査は+7と長期間プラス継続で、非製造業のDIは、内需の底堅さを示唆している。

全規模・全産業の業況判断DIは、12月調査で+4と9月調査の+8から4ポイント低下したものの、9月調査の先行き見通しの+2よりはしっかりした数字になり、全体の景況感としては「良い」超のプラスを維持した。

年初から米国・イランが一触即発の状況になるなど、2020年も国際環境は予断を許さない状況が続いている。しかし、外需・製造業の落ち込みに歯止めがかかれば、内需の堅調さを保てる景況感を維持していよう。2020年の日本経済は、極めて緩やかながらも景気回復が継続する見込みである。