ホームマーケット身近なデータで見た経済動向2月のトピック「景気動向指数の機械的景気判断は当面「足踏み」継続か。身近な社会現象は景気の底堅さを示唆するも、盛り上がりに欠ける場面も。「BRAVE」を歌う嵐、活動休止に向けてイベント効果にも期待」

2月のトピック「景気動向指数の機械的景気判断は当面「足踏み」継続か。身近な社会現象は景気の底堅さを示唆するも、盛り上がりに欠ける場面も。「BRAVE」を歌う嵐、活動休止に向けてイベント効果にも期待」

2019年2月4日

(今回の景気拡張局面は1月で74カ月と戦後最長になった可能性)

政府は1月29日に公表した月例経済報告で、景気の総括判断を「緩やかに回復している」に13カ月連続で据え置いた。この総括判断からみると、2012年12月から始まった景気拡張期間が74カ月と、いざなみ景気(02年2月~08年2月)の73カ月を抜いて戦後最長になったとみられる。正式な判定は半年~1年以上あとに「景気動向指数研究会」の意見を踏まえて決定されることになる。なお、今回の景気拡張局面ではかつての高度経済成長期のいざなぎ景気などと比較して経済成長や賃金の伸びが低水準になっていて、実感なき景気回復という感が強い。足もと消費者マインド、企業マインドとも非常に不透明感が強いため、今後過度に財布の紐を締める行動がとられると判定が微妙になる可能性も皆無ではないだろう。

また、今回の月例経済報告では海外経済の景気判断を「世界の景気は一部に弱さがみられるものの、全体として緩やかに回復している」と、35カ月ぶりに「一部に」の部分を入れる形で下方修正した。「通商問題の動向、中国経済の先行き、政策に関する不確実性、金融資本市場の変動等によるリスクに留意する必要がある」と足もとにある景気の下振れリスクを指摘している。

(12月分の景気動向指数による景気の基調判断は「足踏み」のまま「改善」に戻れず)

18年12月分の景気動向指数・一致CIに採用されている生産関連や商業販売に関する指標は11月分に比べ、一部を除いて弱含んだ。例えば、鉱工業生産指数は事前の市場予想を上回ったといっても、前月比▲0.1%と2カ月連続して落ち込んだ(図表1)。また、商業販売額(小売業)(前年同月比)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)とも鈍化した。このため12月分の一致CIの前月差は▲0.6程度の下降が予測される状況だ。

昨年夏の自然災害の影響で6月分から9月分の経済指標は弱含んだものが多かった。このため、18年8月分まで23カ月間続いていた「改善」という最上位の景気の基準判断が9月分で「足踏み」に変わった。9月分の一致CIの前月差が下降、かつ一致CIの3カ月後方移動平均は前月差の3カ月の合計下降幅が振幅目安に達してしまったのだ。一度「足踏み」になると「改善」に戻るのは時間がかかる。当該月の一致CIが前月差上昇、かつ3カ月後方移動平均の前月差が3カ月連続上昇しなければならないからだ。後者の条件は10~12月分で満たすが、肝心の前月差が下降になってしまっては意味がない。

1月以降に「改善」になることを期待するしかないが、今度は前月差が+3.2と大きく改善した10月分がはずれることの影響が大きく、3カ月連続の条件を満たすのには時間がかかることになる。戦後最長タイに戻るタイミングで「改善」に戻るチャンスを逃した景気動向指数の基調判断は、しばらく「足踏み」が続きそうだ。万一、先行きの採用系列が弱含み傾向になると、7カ月後方移動平均の前月差を使った判断から「下方への局面変化」になる可能性も皆無ではないが、その確率はまだ低いと言えそうだ。

(中央競馬売上高は8年連続前年比増に向け好スタート)

1月の身近なデータでは先月指摘した、正月3が日の初詣の人出の数や、豊洲市場初のマグロの初競りに代表されるように、景気が底堅いことを示唆するものが多かった。その他のものをみても明るい材料の方が多かった。

1月4日には日本最大のプロレス団体である新日本プロレスが行う一年で最大の興行東京ドーム大会が開催された。平日金曜日にもかかわらず38,162人という現在の景気拡大局面で最大の観客数を集めた(図表2)。メインイベントのIWGPヘビー級選手権で、ケニー・オメガを破り新日本プロレスの正統派エースの一人と言える棚橋弘至がタイトルを約4年ぶりに奪回したことも、景気が芳しくない時には邪道のチャンピオンが求められることが多いことから考えると明るい材料と言える。

JRA中央競馬の売上高(売得金)の年初からの累計前年比は、1月最終週の27日までで+9.4%と堅調である。8年連続の増加に向けて好調なスタートを切っている。

(サッカー日本代表のアジア杯準決勝までの活躍は日経平均株価の上昇もサポートしたが、惜しくも決勝で敗退)

テニス全豪オープンで、大阪なおみが全米に続いて2大会連続して4大大会制覇したことも、国民に元気を与えてくれる明るい活躍と言えよう。

サッカー日本代表の森保ジャパンは決勝でカタールに敗れたものの、アジアカップの準決勝までは快進撃を続けた。昨年10月16日ロシアW杯ベスト4のウルグアイに4-3で勝った翌日、10月17日に日経平均株価は291円88銭上昇した。1月のアジアカップでも同様な現象がみられた。アジア杯1次リーグの突破を決めたウズベキスタン戦は、1月17日に行われ日本が2対1で勝利し3戦全戦で決勝トーナメントに進んだが、翌日18日の日経平均株価は263円80銭上昇した。1対0で勝利した準々決勝24日のベトナム戦の翌日25日は日経平均株価は198円93銭上昇した。28日のイランとの準決勝は3対0の勝利。深夜になるので視聴率は15.5%だったが、翌日の29日日経平均株価は前日のNYダウが208ドル98セント下落したにもかかわらず、15円64銭高と上昇して引けた。優勝できず悔しい思いをしている人も多いが、大会期間中は日経平均の下支え要因にはなった可能性があるとみられる。

(大相撲初場所の懸賞は2場所連続前年比減少したものの、千秋楽結び豪栄道と貴景勝との取組には59本)

大相撲初場所の懸賞は1,843本で前年比7.5%減であった。昨年秋場所に史上最高の2160本を記録したものの、九州場所は前年比減少、初場所も続いて減少と一見企業の広告費に異変が生じたようにもみられるが、初場所の事前の申し込み段階では2,127本と、前年比+6.7%の増加であった。(図表3)

初日の結び、横綱稀勢の里と小結御嶽海の取組みには55本の懸賞がかかった。その日本出身横綱の稀勢の里の引退が大きかった。平成戦後の天覧相撲となった中日結びの一番となった横綱白鵬と碧山の取組にかかった懸賞は40本にとどまった。人気のあった横綱の引退が響いたとみられる。初場所は15日間満員札止めであった。千秋楽はファン投票で決める森永賞こそ初優勝した関脇・玉鷲の取組にかかったものの、結びの大関・豪栄道と関脇・貴景勝との取組には59本という多くの懸賞がかかった(図表4)。基調はしっかりしていても特殊要因で弱含んでしまう足もとの景気に反映しているようだ。

(気懸りな消費マインドの昨秋以降の弱含み、消費者態度指数(二人以上の世帯・季節調整値)は低下基調)

1月の消費者態度指数(二人以上の世帯・季節調整値)は41.9になった。これで9月分43.4、10月分43.0、11月分42.9、12月分42.7と連続して低下している(図表5)。年齢別にみると、水準がもともと高かった29歳以下の落ち込みが一番で、次いでもともと低水準だった70歳以上の10月以降の落ち込みが目につく。消費税引き上げまで1年を切ってきた状況下で、70歳以上の高齢者の消費者マインドが悪化している。クレジットカードを使ったポイント還元などの対策が打ち出されても、年金以外は収入がなくクレジットカードが作れない高齢者には負担増の不安が大きいのではないか。

海外経済のリスクに経営者がおびえるように、消費者も必要以上に不安感が高まるとそれにより悪くない景気が悪くなるという景気悪化の自己実現が生じることがないことを祈りたい。

(21,000人を割り込んだ18年の自殺者数、今年の東京の桜の開花は景気拡張局面を示唆するか)

18年の自殺者数は速報値で20,598人と、21,000人を割り込んだ。9年連続減少で、20世紀の終わりの金融危機時からしばらく3万人台が当たり前だった時代とは隔世の感がある。経済生活関連の自殺が景気回復、雇用環境の改善とともに減少していることが大きいだろう。なお月ごとにみると、18年10月から12月まで3カ月連続して前年同月比で増加となっていることは気懸りだ。17年の同時期が低水準だった反動面が大きそうだが、今後の動向を注視する必要がある。

ウェザーニュースが発表した今年の東京の(靖国神社)桜の開花予想(第1回)は3月18日になった。18年の3月17日より1日早いが、平年の3月26日より大幅に早い予想だ。1953年から実施されている気象庁の生物観測調査で、東京の桜の開花が3月21日以前と早い時は13回あり景気は拡張局面である。早く春が来ると春物も売れるし、お花見で人々の気分が高揚しよう。

(突然の人気グループ嵐の活動休止発表が大きな話題に)

国民的人気グループの「嵐」が1月27日、20年12月31日での活動休止を発表した。NHKは夜7時のニュースでトップニュースとして伝えた。夜8時からのジャニーズ事務所での記者会見はネットで噂された生中継こそなかったが、フジテレビ系「Mr.サンデー」が夜10時から一番早く放送した。平均視聴率は13.6%で、前週の9.7%から3.9ポイントアップした。瞬間最高は16.2%を記録、関心を持った視聴者が多かったことがわかる。

人気絶頂の中での活動休止宣言だ。オリコンが15年間にわたり実施している「2万人が選ぶ好きなアーティストランキング」で昨年「嵐」は2年ぶりに8回目の第1位に返り咲いた。「嵐」は10年から16年まで7年連続で第1位だった。また記者会見での「無責任」との質問にも、メンバーの櫻井翔が「およそ2年近く期間をかけて感謝の思いを伝えていく期間を設定した。これは我々の誠意です。それが届くようにこれからもたくさんの言葉をお伝えし、たくさんのパフォーマンスを見てもらい、その姿勢と行動をもってそれは果たして無責任かどうかというのを判断していただければ」とファンを大切に思う回答をした。

1月27日は、全国で50公演行う20周年記念5大ドームツアーの中で「and more」という追加公演分のファンクラブ先行受付が開始される前日だった。ツアーは50公演で、237.5万人を動員するという。昨年引退し大きな話題を呼んだ安室奈美恵の引退ツアーが国内外合わせて23公演、観客動員が80万人。その3倍の動員数になる。「嵐」のファンクラブ会員数は230万~240万人と言われていた。これまではプラチナチケットで見られない人も多かったようだが、今回ファンクラブ会員はコンサートに皆1回は参加できるようにという配慮がなされていると思われる。活動休止宣言後、ファンクラブへの入会が10万人増えたという報道もある。入会費1千円、年会費4千円なので、5億円が動いたことになる。

(19、20年と活動休止に向け駆け抜ける「嵐」への期待)

ファンクラブ会員のチケット代は9,000円で計算して237.5万人分は213.8億円になる。これに関連グッズやファンの移動の交通費、宿泊費を考慮すると、20周年記念ツアーで相当の金額が動くことになる。おそらく20年にはこのDVD等が出るだろう。10周年の翌年10年のオリコン年間ランキング「アーティスト別トータルセールス」で「嵐」は売上総額171.6億円で第1位に輝いた(図表7)。この自身最高額を20周年の翌年の20年には更新しそうだ。

今年の秋に開催されるラグビーワールドカップ日本大会で「嵐」は日本テレビ系の「ラグビーワールドカップ2019」のテーマソング「BRAVE」を歌う。シングルCDの発売日は未定だが、注目を集めよう。

「嵐」と言えば旧・国立競技場との縁が深い。10年には4日間公演を行い、86万人を動員した。東京オリンピック・パラリンピックで使われる新・国立競技場で、「嵐」のコンサートが実施される可能性は大きいとみられる。

19年・20年の日本は様々なイベントが目白押しで、経済効果も期待されているが、「嵐」の活動休止直前の時期ということもあり、人口の約2%に当たるファンクラブ会員、さらに広義のファンを巻き込み、景気面を盛り上げることにもなりそうだ。