ホームマーケット身近なデータで見た経済動向4月のトピック「東京の桜の早い開花と、開花から満開までの長さが、経済統計とともに、景気拡張局面を示唆」

4月のトピック「東京の桜の早い開花と、開花から満開までの長さが、経済統計とともに、景気拡張局面を示唆」

2017年4月4日

(平年の開花より5日早く、春の訪れを告げた東京の桜は、景況感にプラスの作用)

今年の東京の桜の開花日は3月21日で平年より5日早かった。なお、東京の桜の標本木は靖國神社の能楽堂の隣にある桜で、今年の開花は境内の他の桜よりも開花は早めだったようである。
桜の開花のデータは気象庁「生物観測調査」が実施されるようになった1953年から存在する。3月21日の開花は8位タイである(図表1)。3月21日以前に開花した12回では一度も景気後退局面に当たったことがない。桜が早く咲くのは早く暖かくなっているということを意味し、春物などの商品が買われやすい。また、四季のある日本では、桜が咲くことで厳しい寒さの冬が終わり春の訪れを感じることで、マインド面で明るくなるだろう。不思議なことに、日本の戦後の景気の谷は15回あるが、そのうち年度の後半に谷があるのが14回もある(図表2)。新年を迎えること、あるいは新年度を迎えることは、気分を新たに頑張ろうとする元気が出るきっかけになるのであろう。
さらに今年は東京で桜が開花したあと、一気に暖かくならずに寒い日が多かった。このため桜が満開になったのは4月2日と、開花から12日目になった。平年では開花から8日目に満開になる。桜が平年より早く開花し、開花から満開までの間が長い年は1年超にわたり景気拡張局面が続くことが多い(図表1)。お花見をする機会も多く、英気を養うチャンスがたくさんあることになるのだろう。

(エルニーニョ現象発生確率40%)

なお、今年の桜の開花で気懸りな点は、大阪の開花日が東京より9日遅い3月30日だったことだ。平年は、東京が3月26日、大阪が3月28日で、東京から2日遅く大阪で開花する。
72年以降のデータを調べてみると、東京の7~9月期の気温が23℃台で米の作況指数が「不良」ないし「著しい不良」になった年は76年、80年、93年の3回あるが、大阪の桜の開花は東京から7日目、3日目、5日目で、いずれも平年よりは遅れていた。但し、大阪の桜の開花が遅れたからといって、必ずしも冷夏になるわけではない。例えば06年は大阪の開花は東京の開花から7日目だったが、7~9月期の気温は平年比▲0.2℃の25.5℃、米の作況指数は98と平均に近かった。
気象庁が発表しているエルニーニョ監視速報では3月10日に「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態が続いている。春から夏にかけてエルニーニョ現象が発生する可能性もある(40%)が、平常の状態が続く可能性の方が高い(60%)」と発表した。エルニーニョ監視指数の基準値偏差は2月分で+0.5℃になったが、3月上旬に+0.3℃と一時落ち着いた。しかし3月中旬では+0.5℃に戻った(図表3)。エルニーニョ現象が夏に発生すると冷夏になりやすく、夏物消費などにマイナスの影響を及ぼすことが多い。
東京と大阪の開花日の間が長く開いたことが、冷夏の予兆にならないことを祈りたいところだ。

(新横綱・稀勢の里の優勝は、景気拡張局面を示唆)

フィギュアスケートの世界選手権で羽生結弦選手が3月30日のショートプログラム5位から、4月1日のフリースケーティングで世界記録を更新しての逆転優勝を果たし、3年ぶりに世界王者の座を奪還した。このことは、諦めないことの大切さを多くの人に伝えた。
大相撲でも、19年ぶりの日本出身新横綱の稀勢の里が、怪我に負けずに千秋楽、本割・優勝決定戦の2回とも大関・照ノ富士を破って優勝したことも、多くの国民に勇気を与えたと思う。
この60年間で攻守のバランスを重視するタイプの雲竜型土俵入りを行う横綱で、新横綱の場所に初日・2日目と連勝した力士は稀勢の里を入れて11人いる。過去10回は新横綱の場所が全て景気拡張局面に当たる。国民の期待に応えて新横綱が活躍するとみている方も元気をもらえるのだろうか。
また、15日制になって新横綱で優勝したのは稀勢の里が、大鵬、隆の里、貴乃花に次いで4人目である。過去3人の新横綱の優勝時は全て景気拡張局面である。稀勢の里の新横綱としての明治神宮土俵入りには金曜にもかかわらず、18,000人のファンが集まった。これは土曜日に行われた貴乃花20,000人に次ぐ記録である。こうした人気のある稀勢の里が、期待通りの活躍を果たした意味は、マインド面からの景気のプラス効果として無視できないと思われる。

(鉱工業生産は4~6月期にかけ5四半期連続前期比増加か)

身近なデータは景気の良さを示唆するものが多いが、主要経済統計の多くもそうだ。
鉱工業生産指数・2月分速報値前月比は+2.0%と2カ月ぶりの増加になった。2月分速報値前年同月比は+4.8%と4カ月連続の増加になった。経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値最頻値で、2月分の前月比は+1.1%だったが、実績は+2.0%としっかりした数字になった。中華圏の春節の時期が今年は1月に早まったこと、トランプ米大統領が就任した直後先行きの不透明感がかなり高まったことも影響し1月分は前月比減少だったが、2月分はその反動もありしっかりした増加に転じたと思われる。
製造工業生産予測指数は3月分前月比▲2.0%、4月分前月比+8.3%で、先行きも振幅を伴いつつしっかりと増加する見込みである。予測修正率も2カ月連続上方修正となっており、強気の生産計画になっていると言える。4月分では運搬用や建設機械などのはん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、スマホ関連の生産増加が見込まれる電子部品・デバイス工業は前月比2ケタの大幅増加見込みである。
先行きの鉱工業生産指数3月分・4月分を製造工業予測指数前月比(▲2.0%、+8.3%)で延長し、5・6月分を横這いとした場合、1~3月期の前期比は+1.3%の増加に、4~6月期の前期比は+7.5%の増加になる見込みだ。一方、3月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.3%)、4月分は予測指数の前月比で延長し、5・6月分を横這いとした場合は1~3月期の前期比は+1.8%に、4~6月期の前期比は+9.4%の増加になる見込みだ。いずれのケースでも16年4~6月期から17年4~6月期にかけて前期比プラスは5四半期連続になりそうだ(図表4)。
鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~2月分では出荷の前年比が+4.0%、在庫が同▲3.3%となっている。在庫サイクル図からみて、現在生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていると言えよう。

(1~3月期GDPは5四半期連続して前期比プラスか)

GDPの6割のシェアを占める個人消費をみると、供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1~2月平均対10~12月平均比は▲3.3%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+1.9%の増加だ。商業販売額指数・小売業の1~2月平均対10~12月平均比は▲0.4%の減少である。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1~2月平均対10~12月平均比は+2.1%の増加になった。乗用車販売台数の1~2月平均対10~12月平均比は▲2.0%の減少になった。供給サイドと需要サイドのデータともまちまちの動きをしている。さらにGDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の1月分対10~12月平均比は+0.8%とプラスである。総合的に考えると、1~3月期第1次速報値の個人消費は、前期比で若干増加となる可能性が大きいとみられる。他の需要項目を総合的に判断すると、5月18日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値は5四半期連続してプラス成長になりそうだ。

(企業の予想物価上昇率は下げ止まり状態に)

日銀短観17年3月調査で大企業・製造業・業況判断DIは16期連続でプラスを維持し、2四半期連続前期より改善した。生産回復で「はん用機械」、輸出増で「自動車」などが改善を牽引した。今回から調査が始まった研究開発投資額の16・17年度前年比は製造業・非製造業の2業種、大企業・中堅企業・中小企業の3つの規模を掛け合わせた6カテゴリー全てで増加した。
日銀短観「企業の物価見通し」の全規模・全産業ベースをみると、販売価格見通しの平均は、1年後が0.1ポイントだが上昇した。3年後と5年後は前回12月調査と同じ上昇率であった。一方、全規模・全産業ベースの物価全般の見通し平均は、1年後、3年後、5年後全てが前回12月調査と同じ上昇率になった。14年3月調査の調査開始以来全規模・全産業ベースの物価全般の見通しの予想物価上昇率は16年9月調査までは低下方向の動きしかなかった。販売価格見通しと物価全般の見通しで2期連続して全ての先行き年限で下落がない状況は14年3月調査の調査開始以来初めてだ。デフレからの脱却の動きが、企業の予想物価上昇率の下げ止まりとして現れるようになったとみられる(図表5)。
日本の予想物価上昇率は足元の物価動向に左右される適合的期待の部分が大きいと言われる。足元の企業物価指数などの前年比がしっかりとプラスに転じてきたことなどが反映されていると言えよう。国内企業物価指数の前年同月比は2月分で+1.0%の上昇、企業向けサービス価格指数は同じく2月分で同+0.8%まで上昇してきた。全国消費者物価指数・生鮮食品除く総合は2月分で同+0.2%と、日銀の物価目標の+2%にはまだまだ届かないが、プラスの伸び率にはなってきた。
足もとの日経CPI Now T指数が弱含んでいるため、家計の予想物価上昇率は3月分でもたついた感もあるが、昨年秋からは上昇傾向にある(図表6)。日銀の物価目標にははるかに遠いものの、デフレ脱却は着実に進展している感じだ。

(2017年4月4日現在)