ホームマーケット身近なデータで見た経済動向8月のトピック「星稜高校、軍師官兵衛など身近なデータで最近『逆転』目立つ。4~6月期大幅マイナス成長の実質経済成長率は『逆転』で7~9月期しっかりした伸び率に」

8月のトピック「星稜高校、軍師官兵衛など身近なデータで最近『逆転』目立つ。4~6月期大幅マイナス成長の実質経済成長率は『逆転』で7~9月期しっかりした伸び率に」

2014年8月4日

 12年11月の暫定的な景気の谷からアベノミクス効果で日本の景気は拡張を続けてきたが、消費税率引き上げが実施された4~6月期に前期比▲3.7%と四半期ぶりのマイナスになった鉱工業生産指数に続き、8月13日発表の実質GDP成長率第1次速報値は一時的に非常に大きく落ち込むことになりそうだ。但し、次の7~9月期の実質GDP成長率は「ESPフォーキャスト調査」では予測値平均は調査する度に上方修正が続いていて、しっかりしたプラスの伸び率に戻りそうだ。

 6月調査日銀短観はしっかりした内容だった。大企業・製造業の業況判断DIが6期ぶりに悪化したものの、5期連続「良い」超のプラスとなっており、「先行き」DIは改善見込みである。13年12月調査では中小企業の製造業、非製造業ともにプラスになったが、これは90年代初以来のことだ。その後6月調査まで3期連続してプラスを維持している。

 鉱工業生産指数・6月分速報値は前月比▲3.3%と2ヵ月ぶりの減少になった。減少率は東日本大震災のあった11年3月分の▲16.5%以来の大きさだった。消費増税に伴う駆け込み需要の反動減や海外需要の減速などを背景に、予想外に生産が落ち込んだようだ。但し、自動車などで生産の季節的パターンが最近変化しているということが、季節調整値でみた月々の動きを読みづらくしているようだ。生産指数など景気動向指数・一致系列採用指標の動きから単純に判断して「景気の山は1月」説が出るリスクがあり、注意が必要だろう(実際には認定されないだろうが)。

 「景気ウォッチャー調査」によると5月分で日経平均株価の買いシグナル点灯、6月分でも買建てが継続した。6月分の内閣府まとめは「景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある」とした。22年ぶりの高水準1.10倍を6月分で記録した有効求人倍率の先行指標と言える、雇用動向の現状水準判断DIは6月分が61.2と高水準を維持している。

 雇用は堅調である。5月分失業率は3.5%と16年5ヵ月ぶりの低水準(但し、6月分は3.7%に上昇)になった。雇用環境の良さなどで自殺者は2年連続3万人割れと4~6月も前年同月比で減少した。ホームレスも減少傾向だ。

 6月分の全国消費者物価・生鮮食品を除く総合指数は2010年を100とした指数は103.4で、前月比横ばい、前年同月比は+3.3%と5月分の+3.4%から0.1ポイントの鈍化となった。前年同月比は13ヵ月連続で上昇した。13ヵ月連続でのプラスは07年10月から08年12月にかけて15ヵ月連続で上昇して以来、5年6ヵ月ぶりである。増税分を除いたベースでみると、13年11月から8ヵ月連続+1%台となっていて、足もとも前年同月比+1%台前半で推移しそうだ。季節調整済み前月比は4月以降6月まで上昇している。もはやデフレではないと言えよう。

 5月分・6月分と消費者態度指数は持ち直し基調にある。3~5月分の機械受注は乱高下しているが、均せば今後の機械の設備投資や輸出に期待を持てる内容であろう。

 身近な社会現象は景気の補助信号である。これらは消費増税後も景気がしっかりしていることを概ね示唆している。日曜夕方の放送の「笑点」視聴率が、今年は「その他の娯楽番組」で第1位になることがほとんどなく、消費の底堅さを示唆している。

 消費税率引き上げから約1ヵ月後の発売、「嵐」の新曲「GUTS!」初動CD売上は50.1万枚だった。7月27日までの累計は59.7万枚である。AKB48新曲も初日146.2万枚の売り上げを記録、史上最高だ。初動は166.2万枚だった。7月27日までの累計は177.7万枚である。嵐ファン、AKB48ファンには節約感を感じられない。

 中央競馬のGIレースの売上(売得金)は、今年3レース目4月13日の桜花賞で前年比+8.5%と増加に転じ、5月25日オークスの同+13.0%まで6レース連続で増加した。6月の最初の2レースは出走取り消しと雨で前年比若干減少したが、6月29日宝塚記念は同+2.3%となった。

 大相撲懸賞は初場所1198本(過去最高)、春場所1166本、夏場所1165本で1100本台が続いた。懸賞1本6万円が、夏場所で6万2千円になった影響はなかった。名古屋場所は初日103本と初の100本台、名古屋場所全体で1166本と名古屋場所初の1100本台になった。4場所連続1100本台は初めてで、企業の広告費がしっかりした動きであることがわかる。

 前述のように実質GDP成長率は4~6月期の大幅マイナスから7~9月期はそれなりのプラスの伸び率へと「逆転」しそうだが、景気と関連性が深い身近なデータで「逆転」を示唆しているものが多い。

 夏の高校野球の地方大会石川大会・決勝戦で、星稜高校は9回裏の0対8からの逆転劇で甲子園出場を決めた。

 4~6月期の連続テレビドラマで一番視聴率が高かったのは、6月18日に放送された「花咲舞が黙ってない」最終回の18.3%だった。原作者は昨年大ヒットした「半沢直樹」の池井戸潤氏だ。第2位は6月21日までは5月22日放送の「BORDER」第7回の16.7%だった(最終回は14.4%)。同じ池井戸作品のドラマ化として注目されていた「ルーズヴェルト・ゲーム」は5月25日の第5回で16.0%を記録したものの、第3位に甘んじていて、評価は高くなかった。

 野球で一番面白いゲームスコアは8対7だとルーズヴェルト元米国大統領が言ったことが「ルーズヴェルト・ゲーム」のタイトルの由来だという。決して諦めない主人公たちの逆転につぐ逆転の物語だが、視聴率も6月22日の最終回で17.6%を記録し、「逆転」で第2位に浮上した。

 また、ビデオリサーチは7月14日、13年10月から関東地区で試験的に測定していたテレビ番組の録画再生率(録画番組を放送当日と翌日から1週間以内に再生した割合)を初めて公表した。公表したのは14年3月31日から6月29日の調査結果だ。トップは連続ドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」の7.7%(全話平均)。2位は「笑っていいとも!」最終回(3月31日)と連続ドラマ「MOZU」の全話平均で、ともに7.5%だった。後になって、「ルーズヴェルト・ゲーム」の評価が高まったかたちだ。

 NHK大河ドラマでは、戦国武将の出世物語が放送されると視聴率が高く、それを受け景気がしっかりすることが多い。代表的なものは87年「独眼竜政宗」(平均視聴率39.7%)、88年「武田信玄」(平均視聴率39.2%)、バブル崩壊後では96年「秀吉」(平均視聴率30.5%)といったところが挙げられる。今年の大河ドラマ「軍師官兵衛」は戦国ものだが、1月5日放送の初回の18.9%から低下基調を辿り、5月4日の第18回には12.3%まで低下した。しかし、その後流れは逆転した。6月15日の第24回「帰ってきた軍師」と第28回「本能寺の変」では17.5%を、7月20日の第29回「天下の秘策」では19.4%とこれまでの最高を記録し、5月25日放送の第21回から7月27日放送の第30回までの平均は16.5%になった。黒田家ゆかりの福岡が入る北部九州地区では、概ね20%を超える視聴率だ。

 7月30日発売の「テレビガイド」に掲載されている7月20日第29回分の視聴率をみると、関東地区は19.4%だが、名古屋地区19.8%、関西地区20.5%、北部九州地区23.7%と西に向かうほど好調となっている。

 プロ野球セ・リーグのペナントレースも巨人が逆転してきた。巨人は交流戦直前では貯金わずか3で第3位に甘んじていた。しかし、そこから「逆転」した。巨人は交流戦で16勝8敗、優勝した。交流戦終了時には貯金11でセ・リーグ首位に立った。その後、7月16日に首位のまま前半戦を終了した。2位阪神とのゲーム差は3.5だ。巨人が前半戦2位のチームを3.5ゲーム差以上引き離して前半戦を折り返した過去22回は、全てセ・リーグ制覇である。優勝確率は100%と言える。7月末現在で2位の阪神を3ゲーム引き離して首位にいる。人気球団の優勝は景気にプラスに作用しよう。

 7月10日の気象庁「エルニーニョ監視速報」で、今夏に5年ぶりの発生が予想されていたエルニーニョ現象について、秋に発生する可能性が高いとの見通しに変わった。エルニーニョ現象は、東風が弱まって暖水の移動が滞り、ペルー沖の水面温度が高くなって発生する。6月上旬~中旬に発生した中部太平洋の水深100~200メートル付近の冷水が東に移動して、南米ペルー沖の暖水と混ざり、海水温の上昇が当初の予想より抑えられる見通しとなった。このため発生時期が後ズレすることになった。海面水温基準値偏差は6月下旬に+1.0℃だったが、7月中旬には+0.5℃まで急低下してきた。

 エルニーニョ現象が夏に発生すると日本は冷夏になり、個人消費などに水をかけるが、通常の夏になると夏物などの需要がしっかり出てきやすい。景気への悪材料のひとつが「逆転」で消滅しそうだ。