2022年11月分鉱工業生産指数・速報値について

●鉱工業生産指数・１１月分速報値・前月比は▲０．１％と３カ月連続低下した。海外需要・国内需要の減少等を受けて、汎用・業務用機械工業や生産用機械工業などが低下したことが影響し、弱含んでいるようだ。季節調整値の水準は９５．２で、２２年５月の８８．０以来の低い水準になった。前年同月比は▲１．３％で４カ月ぶりの低下である。

●１１月分鉱工業生産指数では、全体１５業種のうち化学工業（除、無機・有機化学工業・医薬品）、プラスチック製品工業など７業種が前月比上昇し、汎用・業務用機械工業や生産用機械工業など８業種が前月比低下した。

●経済産業省の基調判断は２１年１１月分から２２年３月分まで、「生産は持ち直しの動きがみられる」になっていたが、２２年４月分で「生産は足踏みをしている」に下方修正され、5月分では「生産は弱含んでいる」に連続して下方修正されていた。6月分で、「生産は一進一退で推移している」に上方修正され、７月分でも、「生産は一進一退で推移している」の判断は継続であった。８月分では、「生産は緩やかな持ち直しの動き」に上方修正され、９月分でも同じ判断だった。前回１０月分では「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に下方修正された。生産は均してみると緩やかに持ち直しているものの、電子部品・デバイス工業など一部に弱さがみられる状況だというのが、経済産業省の基調判断だった。今回１１月分では、６カ月ぶりの「生産は弱含んでいる」に下方修正された。

●製造工業予測指数１１月分は前月比＋３．３％の上昇であった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値では、１１月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲０．８％の低下の見込みで、９０％の確率に収まる範囲は▲３．１％～＋１．５％になっていた。実際には、鉱工業生産指数の前月比が▲０．１％の低下になったが、これは製造工業予測指数の前月比を３．４ポイント下回ったが、試算値最頻値に対しては　０．７ポイント上回った。

●１１月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲０．５％と３カ月連続の低下になった。前年同月比は▲０．９％と４カ月ぶりの低下になった。

●１１月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比＋０．３％と２カ月ぶりの上昇になった。前年同月比は＋３．８％と１５カ月連続の上昇となった。

●１１月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比＋３．３％と２カ月ぶりの上昇になった。前年同月比は＋６．９％と１５カ月連続の上昇となった。

●鉱工業全体の在庫循環の動きをチェックするために、縦軸に鉱工業在庫指数・前年比、横軸に鉱工業出荷指数・前年比をとった在庫サイクル図をつくると、２０年１０～１２月期、２１年１～３月期では「意図せざる在庫減局面」に、４～６月期、７～９月期では「在庫積み増し局面」だった。１０～１２月分では、「在庫積み上がり局面」となった。２２年１～３月期、４～６月期、７～９月期も「在庫積み上がり局面」継続となった。１０～１１月分では、在庫が前年比＋３．８％、出荷が前年比＋１．５％で、引き続き「在庫積み上がり局面」になっている。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると１２月分は前月比＋２．８％の上昇、１月分は前月比▲０．６％低下の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、１２月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲１．３％の低下になる見込みである。９０％の確率に収まる範囲は▲３．６％～＋１．０％になっている。

●先行きの鉱工業生産指数、１２月分に先行き試算値最頻値前月比（▲１．３％）で延長すると、１０～１２月期の前期比は▲３．７％の低下になる。さらに、１月分を製造工業予測指数前月比（▲０．６％）で延長し、２月分・3月分を前月比横這いとすると、１～３月期の前期比は▲１．５％の低下になる。一方、１２月分を製造工業予測指数前月比（＋２．８％）で延長すると、１０～１２月期の前期比は▲２．４％の低下になる。さらに、１月分を製造工業予測指数前月比（▲０．６％）で延長し、２月分・３月分を前月比横這いとすると、１～３月期の前期比は＋１．２％の上昇になる。生産指数前期比は１０～１２月期に低下に転じることがほぼ間違いなさそうだが、１～３月期は上昇・低下の両方の可能性がありそうだ。

●１１月分の景気動向指数・速報値では、先行ＣＩが前月差▲１．４程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な９系列では、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の４系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しＤＩの５系列が前月差寄与度マイナスになると予測した。

●１１月分の一致ＣＩは前月差▲０．４程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な８系列では、耐久消費財出荷指数１系列が前月差寄与度プラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の７系列が前月差寄与度マイナスになるとみた。

●１１月分で景気の基調判断は、１０カ月連続して、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になると予測する。予測通りだと前月差は３カ月連続下降、3カ月後方移動平均の前月差は２カ月連続下降と厳しい内容になると予測されるが、3カ月後方移動平均の前月差の2カ月累計が１標準偏差の▲１．００に届かないため、「足踏み」に下方修正されるための「3カ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅（１カ月、２カ月または３カ月の累積）が１標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たさないと予測される。

●１１月分の先行ＤＩは３３．３％程度と景気判断の分岐点の５０％を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な９系列中、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数の３系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しＤＩの６系列がマイナス符号になるとみた。

●１１月分の一致ＤＩは２５．０％程度と景気判断の分岐点の５０％を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な８系列中、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率の２系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の６系列がマイナス符号になると予測する。