2021年7月分景気動向指数（速報値）

●７月分の景気動向指数・速報値では、先行ＣＩが前月差▲０．５の２カ月ぶりの下降になった。速報値からデータが利用可能な９系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数の４系列が前月差プラス寄与度に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しＤＩの５系列が前月差マイナス寄与度になった。

●７月分の一致ＣＩは前月差▲０．１と２カ月ぶりの下降になった。速報値からデータが利用可能な８系列では、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の３系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の５系列が前月差マイナス寄与になった。

●最近の、一致ＣＩを使った景気の基調判断をみると、１９年８月分～２０年７月分は「悪化」の判断だったが、景気の基調判断は８月分で１９年５月分～７月分以来１３カ月ぶりの「下げ止まり」に上方修正された。その後、２０年９月分から１２月分まで「下げ止まり」で同じ判断が継続した。２１年１月分で一致ＣＩを使った景気の基調判断が、事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「上方への局面変化」に上方修正され、２月分では判断が据え置かれた。３月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正され、4月分～６月分と「改善」の判断は据え置きになっていた。

●７月分は一致ＣＩの前月差が下降し、３カ月後方移動平均は前月差▲０．２０ポイント低下したものの、１標準偏差分の▲１．００には届かなかったので、一致ＣＩを使った景気の基調判断は「改善」継続となった。なお、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正される条件は「３カ月後方移動平均（前月差）の符号がマイナスに変化し、マイナス幅（１カ月、２カ月、または３カ月の累計）が１標準偏差分以上　かつ　当月の前月差の符号がマイナス」になることである。

●７月分の先行ＤＩは４４．４％と景気判断の分岐点の５０％を下回った。速報値からデータが利用可能な９系列中、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数の４系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しＤＩの５系列がマイナス符号になった。

●７月分の一致ＤＩは３７．５％と景気判断の分岐点の５０％を下回った。速報値からデータが利用可能な８系列中、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の３系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、輸出数量指数の５系列がマイナス符号になった。

●９月２７日発表予定の７月分景気動向指数・改訂値では、先行ＣＩに新たに実質機械受注（製造業）が加わる。機械受注の発表日は９月１５日である。また在庫率関連データが９月１４日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●７月分景気動向指数・改訂値で労働投入量指数が加わると、一致ＣＩは若干下方修正される可能性があると予測される。労働投入量指数は、雇用者数（非農林業）と総実労働時間指数（調査産業計）の２つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数（非農林業）は労働力調査のデータで前月比＋０．１５％であることが判明している。一方、総実労働時間指数（調査産業計）は毎月勤労統計のデータで前月比▲０．４％であることが判明している。７月分確報値は９月２４日に発表される。また、生産指数関連データが９月１４日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが同じく９月１５日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●８月分の先行ＣＩの採用系列で速報値からデータが利用可能な９系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しＤＩの４系列である。日経商品指数、中小企業売上げ見通しＤＩの２系列が前月差プラスである。消費者態度指数、東証株価指数の２系列が前月差マイナスである。

●また、８月分の先行ＤＩでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しＤＩの４系列では、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の３系列がプラス符号に、中小企業売上げ見通しＤＩの１系列がマイナス符号になることが判明している。８月分速報値段階の先行ＤＩは３３．３％以上８８．９％以下になることが確定している。