ホームマーケット経済指標解説2021年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2021年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2021年5月18日

―実質GDP成長率は前期比年率▲5.1%と、3四半期ぶりのマイナス成長―
―2回目緊急事態宣言発出の影響で実質個人消費は3四半期ぶりのマイナス―
―21年4~6月期実質GDPは3回目緊急事態宣言実施期間などに影響されよう―

●21年1~3月期第1次速報値では、実質GDP成長率は前期比▲1.3%、前期比年率▲5.1%とマイナス成長になった。また21年1~3月期第1次速報値では、名目GDP成長率は前期比▲1.6%、前期比年率▲6.3%である。名目GDPの季節調整値は542.5兆円で直近のボトムだった4~6月期の510.1兆円と比較すると32.4兆円高い水準だが、直近のピークだった19年7~9月期の562.8兆円から20.3兆円低い水準になった。


●20年度の実質GDP成長率は前年度比▲4.6%で、落ち込み幅はリーマン・ショックがあった08年度の▲3.6%を上回った。


●実質個人消費は、2回目の緊急事態宣言発令の影響で前期比▲1.4%と3四半期ぶりの減少になった。実質家計最終消費支出の前期比は▲1.4%の減少、実質国内家計最終消費支出の前期比は▲1.5%の減少である。その内訳をみると、まちまちで、耐久財の前期比は▲3.1%と3四半期ぶりの減少になった。半耐久財の前期比は▲3.0%で、こちらは6四半期連続の減少となった。非耐久財の前期比は+1.6%と2四半期ぶりの増加に転じた。サービスの前期比は▲2.6%と3四半期ぶりの減少となった。但し、実質雇用者報酬は前期比+2.2%と3四半期連続の増加になったことは、コロナが収束すれば消費が戻る可能性が大きいことを示唆していよう。


●実質住宅投資は前期比+1.1%と2四半期連続の増加になった。


●設備投資は前期比▲1.4%と2四半期ぶりの減少になった。新型コロナウイルスで先行きが不透明な中、企業が設備投資に慎重になっている感が強い。名目の前期比(季節調整済み)は▲0.6%と2四半期ぶりの減少である。名目の前年同期比は▲5.6%と6四半期連続の減少で、10~12月期の▲4.0%から減少率が拡大した。


●供給サイドのデータに基づいて算出した、1~3月期の名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+6.7%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+27.1%であると公表された。法人企業統計が出た時に前年同期比が▲11.6%程度より高いかどうか比較することで、1~3月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となろう。


●民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.3%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度+0.3%、流通品在庫は前期比寄与度▲0.2%となった。また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は+0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同0.0%だった。


●実質政府最終消費支出は前期比▲1.8%の減少だった。94年度から前期比がある現行統計では08年4~6月期の▲1.3%を上回る最大の減少率である。また、実質公共投資は前期比▲1.1%の減少になった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は0.0%であった。公的需要の前期比寄与度は▲0.4%だった。


●1~3月期外需(純輸出)の前期比寄与度は▲0.2%と3四半期ぶりのマイナス寄与になった。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ世界経済が持ち直し基調にあるため、実質輸出は前期比+2.3%と3四半期連続の増加になった。財は前期比+2.5%と3四半期連続の増加になったが、サービスは前期比+1.4%と2四半期連続の増加になった。実質輸入の前期比は+4.0%と2四半期連続の増加になった。財に関しては前期比+3.1%と2四半期連続の増加となった。サービスは前期比+6.9%と3四半期ぶりの増加になった。


●1~3月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲0.2%と、10~12月期の+0.2%の上昇から下落に転じた。国内需要デフレーターの前年同期比は▲0.5%と2四半期連続でマイナスの伸び率になった。一方、1~3月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは▲0.3%、国内需要デフレーターは+0.4%になった。


●「令和3年度の経済見通し」の21年度実質GDP成長率見通し・前年度比+4.0%を達成するには、21年度各四半期、前期比年率+3.8%(前期比+0.92%)が必要である。20年度から21年度へのゲタは+1.6%である。なお、21年度各四半期が前期比+0.5%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+2.9%になる。21年度各四半期が前期比+0.8%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+3.6%になる。

●また、6月8日公表予定の1~3月期第2次速報値では、6月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や民間在庫変動が改定される。


●法人企業統計では民間在庫変動の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.4%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目で一番大きなマイナス寄与は流通品在庫、次に大きなマイナス寄与は仕掛品在庫、そして製品在庫が続くということだ。原材料在庫だけがプラス寄与ということだ。


●先行き、新型コロナウイルス感染急拡大防止のため3度目の緊急事態宣言が発出された4~6月期の成長率が注目される。ESPフォーキャスト調査5月調査の4~6月期実質GDP成長率見通しは36人の平均で前期比年率+1.84%、高位8人の平均は+5.88%、低位8人の平均は▲1.89%となった。エコノミストにより見方に幅がある状況だ。5月調査の平均は前回4月調査の平均+5.63%から3.79%低下している。


●第3回目の緊急事態宣言発令のマイナスの影響が懸念される4~6月期の個人消費だが、3回目緊急事態宣言実施期間が延長・拡大されるかどうかに影響されよう。総務省の実質総消費動向指数の1~3月期から4~6月期へのゲタは前期比+1.6%、日銀の実質消費活動指数の1~3月期から4~6月期へのゲタは前期比+1.1%であることから、ゲタは高そうで、大幅な減少になることは回避されそうだ。また、日銀、実質輸出の1~3月期から4~6月期へのゲタは前期比+0.9%、控除項目の実質輸入は同▲3.2%である。モノの外需のゲタだけからみると、4~6月期純輸出の前期比寄与度はプラスになりそうだ。