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2020年11月分鉱工業生産指数・速報値について

2020年12月28日

-鉱工業生産指数・前月比0.0%、自動車一服だが、9業種が前月比上昇-
-経済産業省の生産指数・基調判断は「生産は持ち直している」で据え置き-
-12月分生産予測指数・前月比は▲1.1%下降。経産省試算値は▲2.3%-
-11月分一致CI前月差下降、基調判断「下げ止まり」。一致DIは100.0に-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・11月分速報値・前月比は0.0%と、6カ月連続上昇にならず、横ばいになった。季節調整値の水準は95.2で、20年3月の95.8にまだ届かない。前年同月比は▲3.4%で14カ月連続の低下となったが、マイナス幅は9月分~11月分は3カ月連続1ケタになった。

●11月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、9業種が前月比上昇、5業種が前月比低下、1業種が横ばい。自動車工業、無機・有機化学工業、プラスチック製品工業等は低下に寄与したが、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業等が上昇に寄与した。

●経済産業省の基調判断は20年4月分・5月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」だったが、6月分で、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。7月分では、下げ止まりが外れ、「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分で、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、今回の11月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっている。

●先月発表された製造工業予測指数11月分は前月比+2.7%上昇の見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、11月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.4%の上昇、90%の確率に収まる範囲は▲1.3%の下落~+2.1%の上昇の見込みであった。実際には、鉱工業生産指数の前月比が0.0%になったわけだが、これは試算値の範囲内で最頻値を下回る伸び率である。

●11月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲0.9%と6カ月ぶりの下降になった。前年同月比は▲3.8%で14カ月連続の低下となった。

●11月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.1%と8カ月連続の低下になった。前年同月比は▲8.7%と7カ月連続の低下となった。

●11月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲1.8%で、6カ月連続の低下になった。前年同月比は▲1.2%と2カ月連続の低下となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年10~12月期、出荷の前年同期比が▲6.5%、在庫が同+1.2%、20年1~3月期、出荷の前年同期比が▲5.2%、在庫が同+2.9%と、どちらも「在庫調整局面」であった。20年4~6月期は、出荷の前年同月比が▲19.9%、在庫が同▲3.4%と、出荷は大幅に減少したものの在庫調整がさらに進んだ。20年7~9月期は、出荷の前年同期比が▲13.5%、在庫が同▲5.7%と、引き続き「在庫調整局面」の状態にあったが、10~11月分速報値では出荷の前年同月比が▲3.4%、在庫が同▲8.7%と在庫調整が進んで「意図せざる在庫減局面」に入った。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると12月分は前月比▲1.1%の下降、1月分は前月比+7.1%の大幅上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、12月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲2.3%になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲4.0%~▲0.6%の下降になっている。

●先行きの鉱工業生産指数、12月分を先行き試算値最頻値前月比(▲2.3%)で延長すると、10~12月期の前期比は+6.3%の上昇になる。さらに1月分を製造工業予測指数前月比(+7.1%)で、2・3月を前月比横這いで延長すると、1~3月期の前期比は+5.4%の上昇になる。また12月分を製造工業予測指数前月比(▲1.1%)で延長すると、10~12月期の前期比は+6.7%の上昇になる。さらに1月分を製造工業予測指数前月比(+7.1%)で、2・3月を前月比横這いで延長すると、1~3月期の前期比は+6.3%の上昇になる。10~12月期は後半に減速しても、期全体でみると2四半期連続の前期比上昇になり、1~3月期も引き続きそれなりの上昇が期待される状況だ。

(11月分の景気動向指数・速報値予測)

●11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+2.5程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全系列が前月差プラスになると予測した。

●11月分の一致CIは前月差▲0.5程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の3系列が前月差プラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数の2系列が前月差横這い、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差マイナスになると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は11月分でも、10月分までと同様「下げ止まり」にとどまるとみられる。事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す「上方への局面変化」への上方修正は見送られよう。一致CIの7か月後方移動平均(前月差)の符号がプラスでプラス幅(1か月と2か月の累積)が1標準偏差分以上振幅目安の+0.76以上になるものの、一致CI前月差が下降になるとみられるからだ。

●11月分の先行DIは100.0%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全系列がプラス符号になると予測した。

●11月分の一致DIは100.0%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の全系列がプラス符号になると予測した。