ホームマーケット経済指標解説2020年4~6月期実質GDP(第2次速報値)について

2020年4~6月期実質GDP(第2次速報値)について

2020年9月8日

―実質GDP成長率は前期比年率▲28.1%に第1次速報値▲27.8%から下方修正―
―民間設備投資は法人企業統計を受け前期比▲4.7%。▲0.5%から大幅減少に―
―個人消費と民間在庫変動、各々前期比寄与度が0.1㌽、0.3㌽上方修正―

●20年4~6月期実質GDP成長率・第2次速報値は前期比▲7.9%、前期比年率▲28.1%となり、第1次速報値の前期比▲7.8%、前期比年率▲27.8%から下方修正となった。新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞で3四半期連続のマイナス成長であり、法人企業統計を受けて設備投資が大幅に下方修正された。

●20年4~6月期名目GDP成長率・第2次速報値は前期比▲7.6%、前期比年率▲27.2%となり、第1次速報値の前期比▲7.4%、前期比年率▲26.4%から下方修正となった。名目GDPの季節調整値は505.4兆円である。

●4~6月期の個人消費・前期比は、第1次速報値の▲8.2%から前期比▲7.9%へと0.3ポイント上方修正になった。前期比寄与度は▲4.5%から▲4.4%へ0.1ポイント上方修正となった。

●4~6月期の実質住宅投資は前期比▲0.2%から前期比▲0.5%へと0.3ポイント下方修正となった。

●4~6月期の実質設備投資・前期比は第1次速報値の▲1.5%から、新たに加わった需要サイドの法人企業統計のデータが弱かったため、第2次速報値では同▲4.7%へと下方修正された。

●4~6月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.3%と第1次速報値の▲0.0%から上方修正となった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度▲0.2%で第1次速報値と同じであった。流通品在庫は前期比寄与度+0.2%でこちらは第1次速報値の+0.1%から0.1ポイント上方修正となった。原材料在庫前期比寄与度は仮置き値だった第1次速報値の+0.1%から+0.7%に大幅に上方修正。一方、同じく第1次速報値は仮置き値の仕掛品在庫前期比寄与度は▲0.1%から▲0.4%に下方修正となった。

●4~6月期実質政府最終消費支出は前期比▲0.6%で第1次速報値の▲0.3%から下方修正になった。4~6月期実質公共投資は第1次速報値の+1.2%から+1.1%に下方修正となった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%で第1次速報値と変わらなかった。公的需要の前期比寄与度は▲0.0%で第1次速報値と変わらなかった。

●4~6月期の外需(純輸出)の前期比寄与度は第1次速報値と同じ▲3.0%で変わらなかった。実質輸出の前期比▲18.5%で第1次速報値と同じ前期比、また控除項目の実質輸入の前期比は▲0.5%で、こちらも第1次速報値と同じであった。

●4~6月期のGDPデフレーターの前年同期比は+1.3%で第1次速報値の+1.5%から下方修正となった。国内需要デフレーターの前年同期比は▲0.1%でこちらも第1次速報値の0.0%から下方修正となった。

●4~6月期第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.4%であったが、法人企業統計の発表を織り込んだ第2次速報値では同▲0.3%に上方修正になった。この内訳に関しては雰囲気しか教えてもらえないが、第1次速報値では4項目でプラス寄与は原材料在庫だけで、残りはマイナス寄与。マイナス寄与が小さい順に、仕掛品在庫、流通品在庫、製品在庫が続くということだった。法人企業統計のデータが加わった第2次速報値では4項目でプラス寄与は原材料在庫だけで、残りはマイナス寄与であることは変わらなかったが、マイナス寄与が小さい順に、流通品在庫、製品在庫、仕掛品在庫となり、順番が大幅に入れ替わったということだ。

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、7~9月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲3兆1,885億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は1兆5,589億円である。

●20年度実質GDP成長率・内閣府年央試算・前年度比▲4.5%を達成するには、20年度残り3四半期の前期比年率+13.9%(前期比+3.29%)が必要である。見通し達成は厳しい状況にあると言えよう。19年度から20年度へのゲタは▲1.3%である。20年度各四半期前期比+2.0%だと20年度実質GDP成長率・前年度比は▲6.4%のマイナス成長になる。

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の7月分対4~6月平均比は+37.7%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+0.3%の増加だ。また、商業販売額指数・小売業の7月分対4~6月平均比は+5.3%の増加になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7月分対4~6月平均比は+2.9%の増加である。乗用車販売台数の7~8月分対4~6月平均比は+30.2%程度の増加となった。GDP統計の実質個人消費(家計最終消費支出)と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)4~6月期から7~9月期へのゲタは+5.4%の増加である。総合的に考えると、新型コロナウイルス感染症対策での自粛などにより大幅に落ち込んだ4~6月期の反動で、7~9月期第1次速報値の個人消費は、前期比で大幅増加になる可能性が大きいだろう。

●設備投資の関連データである資本財(除.輸送機械)出荷指数の7月分対4~6月平均比は+0.2%の増加になった。また、建設財は同+0.3%の増加になった。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される4~6月期第1次速報値の実質設備投資は前期比増加になる可能性が大きいとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の7月分対4~6月平均比は+6.4%の増加になった。控除項目の輸入は同▲7.4%の減少になっている。7月のモノ分だけでみると、7~9月期の外需の前期比寄与度はかなりのプラスになる可能性が大きいと判断できる。

●7~9月期の鉱工業生産指数の見通しがプラスであるように、実質GDPも前期比年率▲28.1%と大幅なマイナスになった4~6月期の反動から7~9月期は水準に関しては低いものの、伸び率はかなりのプラスの伸び率が予想される。ちなみに8月のESP フォーキャスト調査では7~9月期の実質GDP前期比年率+13.26%が予測平均値だ。現行統計(平成23年基準)で遡れる80年4~6月期以降で実質GDPが前期比年率2ケタの増加になったのは、87年10~12月期+11.2%、89年10~12月期+12.0%、90年4~6月期+11.0%、11年7~9月期+10.3%だけで、ESP フォーキャスト調査の予測平均値になれば、過去最高を更新することになる。