ホームマーケット経済指標解説2019年7月分景気動向指数(速報値)

2019年7月分景気動向指数(速報値)

2019年9月6日

-先行CI前月差は0.0の横這い、一致CI前月差は+0.3の上昇-
-一致CI・3カ月後方移動平均の前月差は▲0.60、2カ月連続の下降に-
-7月の基調判断「下げ止まり」、8月一致CI前月差下降回避なら「下げ止まり」継続だが・・-

●7月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差0.0と横這いになった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数の5系列が前月差マイナス寄与になった。

●7月分の一致CIは前月差+0.3と2カ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な7系列で、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の2系列が前月差マイナス寄与になった。 

●7月分の一致CIの指数水準は2015年=100として99.8となった。なお、直近のピークは17年12月分の105.3で、足元の水準はそれに比べると5.5ポイント低い。18年で最も高かった4月分の104.1に比べると4.3ポイント低い水準である。また、最近で最も低かった19年5月分の102.4に比べると2.6ポイント低い水準である。 

●一致CIの3カ月後方移動平均は前月差▲0.60ポイントと、2カ月連続の下降になった。7カ月後方移動平均は前月差▲0.22ポイント下降し、9カ月連続の下降になった。 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていたが、18年9月分~12月分と4カ月連続「足踏みを示している」となった。19年1月分では、「下方への局面変化」に下方修正された。2月分も同じ判断になった。3月分では景気後退の可能性が高いことを意味する「悪化」にさらに下方修正され、4月分でも「悪化」だったが、5月分で「景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す」意味を持つ「下げ止まり」に上方修正され、6月分、7月分と「下げ止まり」の判断継続になった。

●「下げ止まり」から「悪化」に再び下方修正されるには、「3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスであること」が必要だ。10月7日に発表される8月分の動向だ。5月分の一致CIの指数水準は、5月1日・2日の祝日に工場を稼働させた企業が結構あったことなどもあり今年最も高い水準である。このため8月分で3カ月後方移動平均前月差は3カ月連続下降になる可能性が大きい。「悪化」への下方修正を回避するには8月分の一致CI前月差が下降にならないことが必要だ。前月差が下降になると10月1日の消費税率引き上げ直後に景気動向指数の基調判断が再び「悪化」に転じてしまうことになる。一致CIの第一採用系列の生産指数の前月比が増加になるか減少になるかは、製造工業予測指数からみて微妙な状況だ。消費税率引き上げ直前、9月30日発表の8月分の鉱工業生産指数・速報値などの行方は注目されよう。 

●「下げ止まり」から「上方へ局面変化」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの7カ月後方移動平均の前月差がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累計)が振幅目安の+0.76以上になることが必要だ。過去の数字が変わらないことを前提に、仮に一致CI前月差8月分・9月分・10月分が3カ月連続で各々+1.9ポイント上昇すると10月分で7カ月後方移動平均の3カ月の累計が振幅目安の+0.76を上回る+0.78になるが、近い将来に「上方への局面変化」になることは厳しい状況と言えそうだ。

●7月分の先行DIは11.1%と3カ月連続で景気判断の分岐点の50%割れになった。速報値からデータが利用可能な9系列中、中小企業売上げ見通しDI1系列がプラス符号、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の8系列がマイナス符号になった。 

●一方、7月分の一致DIは14.3%程度と2カ月連続して景気判断の分岐点の50%割れとなった。速報値からデータが利用可能な7系列中、鉱工業生産財出荷指数1系列が前月差プラス符号に、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列がマイナス符号になった。 

●9月24日発表予定の7月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は9月12日である。また在庫率関連データが9月13日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。 

●7月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。7月分速報値の発表日は本日であった。9月20日発表の確報値が、9月24日発表予定の景気動向指数・7月分改訂値では使用される。速報値と同じになれば、一致CIにとっては前月差+0.07程度のプラスの前月差寄与になる。一方で一致DIでは新たに加わるマイナス符号になる。他の系列の符号が変わらなければ、一致DIは速報値の14.3%から12.5%へ下方修正される。また、生産指数関連データなどが9月13日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。 

●8月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。この全系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。 

●また、8月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列は、全系列がマイナス符号になることが判明している。8月分速報値段階の先行DIは0.0%以上55.6%以下になることが確定している。