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2019年6月分全国消費者物価指数について

2019年7月19日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.6%に鈍化も、30カ月連続上昇―
―生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.6%は、17年7月の+0.5%以来の低い伸び率―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比は前月と同じ+0.5%、24カ月連続上昇―
―食料、宿泊料は前年同月比上昇要因だが、エネルギー、家庭用耐久財、通信料は鈍化要因―

●6月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.6となり、前年同月比は+0.7%と5月分と同じで、33カ月連続の上昇となった。前月比(季節調整値)は0.0%と横這いだった。

●6月分で生鮮食品の前年同月比は+2.8%で、5月分の▲0.1%の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.12%だった。

●6月分では生鮮食品を除く食料の前年同月比は+1.2%で、5月分の+1.0%から伸び率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.05%だった。食料全体では、6月分の前年同月比は+1.4%で、5月分の+0.8%から伸び率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.17%であった。

●6月分のエネルギー全体の前月比は▲0.6%の下落、前年同月比は+1.2%と5月分の+3.7%から鈍化した。総合指数の前年同月比に対するエネルギーの寄与度差は▲0.19%と前年同月比の下落要因になった。

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差の動きは下落要因となった。原油市況や為替動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+2.5%と5月分の+3.6%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.04%となった。また、都市ガス代の前年同月比は+5.0%と、5月分の+6.4%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。また、石油製品をみると、それぞれ総合指数の前年同月比が5月分から鈍化している。前回5月分で+2.2%だったプロパンガスの前年同月比は今回6月分では+2.1%と若干伸び率が鈍化した。ただ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。灯油の前年同月比は、5月分では+5.1%だったが、6月分では+0.3%に鈍化した。前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。ガソリンの前年同月比は、5月分では+2.8%の上昇だったが、今回6月分では▲2.7%と下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.12%になった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は6月分では前年同月比+1.0%と、5月分の前年同月比+1.3%から伸び率が鈍化したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、家庭用耐久財は前年同月比+5.1%で、5月分の+7.8%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。

●6月分の宿泊料は前年同月比+2.1%で、5月分の前年同月比▲0.2%の下落から上昇に転じ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%と上昇要因になった。一方、5月分は前年同月比+6.6%の上昇率だった外国パック旅行費は、6月分では同+6.2%に鈍化したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。通信料(携帯電話)は前年同月比▲5.8%の下落で、5月分の同▲4.3%から下落率が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%の下落要因になった。

●6月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.0%で5月分の+1.1%から上昇率がやや鈍化した。5月分から6月分への総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%と物価下落要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+0.8%と5月分の+1.2%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.17%だった。

●6月分のサービスの前年同月比は+0.4%と5月分の同+0.3%から伸び率がやや上昇し、5月分から6月分にかけて総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%と物価上昇要因になった。内訳をみると、公共サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差が+0.01%で、一般サービスの寄与度差は0.00%と不変であった。

●一般サービスのうち、外食の前年同月比は+1.0%で5月分の+1.1%からやや鈍化したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家事関連サービスの前年同月比は+1.0%で5月分の+1.1%から上昇率やや鈍化したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、通信・教養娯楽関連サービスの前年同月比は▲0.5%で5月分と同じになった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%になった。

●また、実質賃金や実質消費支出等の計算に使用する6月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+0.8%と5月分の+0.9%からやや鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%だった。なお、6月分の持家の帰属家賃は前年同月比0.0%で、5月分の▲0.1%から伸び率をやや高めた。持家の帰属家賃の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●6月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数で101.6、前年同月比は+0.6%で、5月分の+0.8%から0.2ポイント鈍化した。前年同月比+0.6%は、17年7月の+0.5%以来の低い伸び率である。なお、前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、30カ月連続の上昇になった。

●6月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は▲0.1%の下落になった。

●6月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.5で、前年同月比は+0.5%で、5月分と同じだった。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、17年8月分以降19年3月分までの20カ月間は+0.2%~+0.5%の間で推移していたが、4月分で+0.6%と一時的にレンジを上抜けたが、5月分・6月分とも+0.5%になり、再びレンジ内に戻った。これで24カ月連続の上昇である。前月比(季節調整値)は0.0%と横這いになった。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では17年7~9月期は+0.6%、10~12月期は+0.7%、18年1~3月期+0.3%、4~6月期は+0.6%と連続してプラスが続いていたが7~9月期は▲0.3%とマイナスに転じ、10~12月期は▲0.1%になったが、19年1~3月期に+0.2%僅かなプラスに戻った。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.23%、17年1~3月期+0.48%、4~6月期は+0.86%、7~9月期は+1.02%、10~12月期+1.28%、18年1~3月期+1.34%、4~6月期は+1.52、7~9月期は+1.27%、10~12月期は+1.98、%、19年1~3月期+1.30%と10四半期連続でプラスになっている。

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年10月分で87.1%と16年9月の調査開始以来当時の最高になった後、11月分では83.1%、12月分では82.0%とやや鈍化したものの4カ月連続80%台となっていたが、19年1月分では、17年8月の72.9%以来の低水準である73.7%へと大幅に鈍化した。その後、19年2月分では85.3%、3月分では81.2%、4月分では84.6%の後、5月分では87.2%と調査開始以来の最高を更新した。6月分は81.7%と鈍化したが5カ月連続して80%台になった。7月分の集計結果は7月23日公表予定だ。

●6月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」で1年後は+0.9%で3四半期連続して同じ前年比上昇率になった。3年後の前年比上昇率は+1.0%と0.1ポイント低下し9四半期ぶりの伸び率になった。5年後は+1.1%で2四半期連続して同じ前年比上昇率になった。また、「販売価格の見通し」では1年後+0.7%と0.1ポイント低下した。3年後は3四半期連続+1.2%に、5年後は5四半期連続+1.5%になった。9月調査の「企業の物価見通し」は10月2日に発表される。

●ESPフォーキャスト調査・7月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、19年1~3月期実績の+0.8%から、19年4~6月期+0.73%(実績は+0.76%になった)、7~9月期は+0.52%と緩やかに鈍化する見込みだ。しかし、19年10~12月期は消費増税を受けて+1.02%に上昇(消費増税の影響除くと+0.17%)となっている。20年1~3月期も+1.00%(消費増税の影響除くと+0.17%)である。19年度は+0.82%、20年度は+0.79%を見込んでいる。消費増税影響除くベースでは19年度は+0.38%、20年度は+0.36%の見込みである。携帯電話料金の大幅引き下げや、幼児教育無償化の影響が、当面の前年同月比の抑制要因として考えられよう。ESPフォーキャスト調査・7月調査・特別調査によると、平均値として19年度には、携帯電話料金の引き下げの影響として▲0.15%、幼児教育無償化の影響が▲0.28%であることを前提に予測している。