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2019年5月分全国消費者物価指数について

2019年6月21日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.8%上昇に鈍化も29カ月連続上昇―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比は+0.5%に上昇鈍化も、23カ月連続上昇―
―生鮮食品を除く食料は前年同月比の上昇要因だが、宿泊費、外国パック旅行費、携帯電話機は鈍化要因―

●5月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.8となり、前年同月比は+0.7%と4月分の+0.9%より伸び率が鈍化したが、32カ月連続の上昇となった。一方、前月比(季節調整値)は0.0%と横這いだった。

●5月分で生鮮食品の前年同月比は▲0.1%で、4月分の▲0.3%から下落率が若干縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●5月分では生鮮食品を除く食料の前年同月比は+1.0%で、4月分の+0.9%から伸び率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●5月分のエネルギー全体の前月比は+0.6%上昇したが前年の5月分がその倍以上の伸び率だった反動で、前年同月比は+3.7%と4月分の+4.6%から鈍化した。総合指数の前年同月比に対するエネルギーの寄与度差は▲0.07%と前年同月比の下落要因になった。

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差の動きはまちまちだった。原油市況や為替動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+3.6%と4月分の+5.8%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.08%となった。また、都市ガス代の前年同月比は+6.4%と、4月分の+7.7%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。一方、石油製品をみると、それぞれ総合指数の前年同月比が4月分から上昇している。前回4月分で+2.1%だったプロパンガスの前年同月比は今回5月分では+2.2%と若干伸び率を高めた。ただ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。灯油の前年同月比は、4月分では+3.0%だったが、5月分では+5.1%に上昇した。前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。ガソリンの前年同月比は、4月分では+2.2%の上昇だったが、今回5月分では+2.8%に伸び率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%になった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は5月分では前年同月比+1.3%と、4月分の前年同月比と同じ伸び率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、家庭用耐久財は前年同月比+7.8%で、4月分の+6.2%から上昇率が高まり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●5月分の宿泊料は前年同月比▲0.2%で、4月分の前年同月比+3.8%の上昇から下落に転じ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%と下落要因になった。また、4月分は前年同月比+15.1%の2ケタの上昇率だった外国パック旅行費は、5月分では同+6.6%に鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.04%の下落要因になった。携帯電話機は前年同月比▲10.6%と2ケタの下落で、4月分の同▲4.8%から下落率が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.04%の下落要因になった。

●5月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.1%で4月分の+1.2%から上昇率がやや鈍化した。4月分から5月分への総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.06%と物価下落要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.2%と4月分の+1.4%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.07%だった。

●5月分のサービスの前年同月比は+0.3%と4月分の同+0.5%から伸び率が鈍化し、4月分から5月分にかけて総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.07%と物価下落要因になった。内訳をみると、公共サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%で不変だったが、一般サービスの寄与度差が▲0.08%と下落に寄与した。

●一般サービスのうち、外食の前年同月比は+1.1%で4月分と同じ上昇率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家事関連サービスの前年同月比は+1.1%で4月分の+0.9%から上昇率が高まり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。一方、通信・教養娯楽関連サービスの前年同月比は▲0.5%で4月分の+0.6%の上昇から下落に転じ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.08%と物価下落の要因になった。

●また、実質賃金や実質消費支出等の計算に使用する5月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+0.9%と4月分の+1.0%からやや鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.13%だった。なお、5月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.1%で4月分と同じ減少率で、持家の帰属家賃の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●5月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数で101.8、前年同月比は+0.8%で、4月分の+0.9%から0.1ポイント鈍化した。前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、29カ月連続の上昇になった。

●5月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は▲0.1%の下落になった。

●5月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.6で、前年同月比は+0.5%で、4月分の+0.6%から0.1ポイント鈍化した。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、17年8月分以降19年3月分までの20カ月間は+0.2%~+0.5%の間で推移していたが、4月分で+0.6%と一時的にレンジを上抜けたが、5月分で再びレンジ内に戻った。これで23カ月連続の上昇になった。前月比(季節調整値)は▲0.1%の下落になった。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では17年7~9月期は+0.6%、10~12月期は+0.7%、18年1~3月期+0.3%、4~6月期は+0.6%と連続してプラスが続いていたが7~9月期は▲0.3%とマイナスに転じ、10~12月期は▲0.1%になったが、19年1~3月期に+0.2%僅かなプラスに戻った。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.28%、17年1~3月期+0.45%、4~6月期は+0.83%、7~9月期は+1.00%、10~12月期+1.27%、18年1~3月期+1.26%、4~6月期は+1.46、7~9月期は+1.26%、10~12月期は+2.23%と9四半期連続でプラスになっている。

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年10月分で87.1%と16年9月の調査開始以来当時の最高になった後、11月分では83.1%、12月分では82.0%とやや鈍化したものの4カ月連続80%台となっていたが、19年1月分では、17年8月の72.9%以来の低水準である73.7%へと大幅に鈍化した。その後、19年2月分では85.3%、3月分では81.2%、4月分では84.6%、5月分では87.2%と4カ月連続して80%台になった。19年5月分で調査開始以来の最高を7カ月ぶりに更新した。6月分の集計結果は6月24日公表予定だ。

●3月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」で1年後は+0.9%で2四半期連続して、3年後は+1.1%と7四半期連続して同じ前年比上昇率になった。5年後は+1.1%で12月調査から0.1ポイント鈍化した。また、「販売価格の見通し」では1年後+0.8%(3四半期連続)、3年後+1.2%(2四半期連続)、5年後+1.5%と(4四半期連続)と3つとも12月調査と同じになった。6月調査の「企業の物価見通し」は7月2日に発表される。

●ESPフォーキャスト調査・6月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、19年4~6月期+0.68%、7~9月期は+0.52%と緩やかに鈍化する見込みだ。しかし、19年10~12月期は消費増税を受けて+1.02%に上昇(消費増税の影響除くと+0.18%)となっている。20年1~3月期は+1.03%に上昇(消費増税の影響除くと+0.19%)である。19年度は+0.82%、20年度は+0.80%を見込んでいる。消費増税影響除くベースでは19年度は+0.39%、20年度は+0.38%を見込んでいる。携帯電話料金の大幅引き下げや、幼児教育無償化の影響が、当面の前年同月比の抑制要因として考えられよう。ESPフォーキャスト調査・5月調査・特別調査・織り込んだ場合の平均値によると、19年度には、携帯電話料金の大幅引き下げの影響が▲0.16%、幼児教育無償化の影響が▲0.28%出る見込みである。