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2019年4月分全国消費者物価指数について

2019年5月24日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.9%に上昇、28カ月連続上昇―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比+0.6%に上昇、20カ月続いたレンジを上抜ける―
―「消費者マインドアンケート調査」物価が上がるとみる割合(上昇+やや上昇)は5月分で過去最高に―

●4月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.8となり、前年同月比は+0.9%と3月分の+0.5%より伸び率が高まり、31カ月連続の上昇となった。一方、前月比(季節調整値)は+0.1%上昇した。

●4月分で生鮮食品の前年同月比は▲0.3%で、3月分の▲6.0%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.25%だった。

●4月分では生鮮食品を除く食料の前年同月比は+0.9%で、3月分の+0.8%から伸び率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●4月分のエネルギー全体の前月比は▲0.1%下落した。前年同月比は+4.6%と3月分の+5.1%から鈍化した。総合指数の前年同月比に対するエネルギーの寄与度差は▲0.04%と前年同月比で若干の下落要因になった。

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差の動きはまちまちだった。原油市況や為替動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+5.8%と3月分の+7.3%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%となった。また、都市ガス代の前年同月比は+7.7%と、3月分の+9.1%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。一方、石油製品をみると、前回3月分で+1.9%だったプロパンガスの前年同月比は今回4月分では+2.1%と若干伸び率を高めたが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。総合指数の前年同月比が3月分から上昇したのは、灯油とガソリンだ。灯油の前年同月比は、3月分では+2.5%だったが、4月分では+3.0%に上昇した。ただ、前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。ガソリンの前年同月比は、3月分では+1.3%の上昇だったが、今回4月分では+2.2%に伸び率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%になった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は4月分では前年同月比+1.3%と、3月分の前年同月比▲0.1%の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。また、家庭用耐久財は前年同月比+6.2%で、3月分の+5.5%から上昇率が高まり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●4月分の宿泊料は前年同月比+3.8%で、3月分の前年同月比+0.9%から伸び率が高まり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%と上昇要因になった。また、3月分は前年同月比+5.2%の上昇率だった外国パック旅行費は、4月分では同+15.1%に上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.05%の上昇要因になった。

●4月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.2%で3月分の+0.7%から上昇率が高まった。3月分から4月分への総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.27%と物価上昇要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.4%と3月分の+1.3%から伸び率が若干高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●4月分のサービスの前年同月比は+0.5%と3月分の同+0.3%から伸び率が上昇し、3月分から4月分にかけて総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.08%と物価上昇要因になった。内訳は公共サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差が▲0.02%で下落に寄与したが、一般サービスの寄与度差が+0.10%と上昇に寄与した。

●一般サービスのうち、外食の前年同月比は+1.1%で3月分と同じ上昇率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家事関連サービスの前年同月比は+0.9%で3月分の+0.6%から上昇率が高まり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。通信・教養娯楽関連サービスの前年同月比は+0.6%で3月分の▲0.6%の下落から上昇に転じ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.08%と物価下落の要因になった。

●また、実質賃金や実質消費支出等の計算に使用する4月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+1.0%と3月分の+0.6%から上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.34%だった。なお、4月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.1%で3月分と同じ減少率で、持家の帰属家賃の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●4月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数で101.8、前年同月比は+0.9%で、3月分の+0.8%から0.1ポイント上昇した。前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、28カ月連続の上昇になった。

●4月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は+0.1%の上昇になった。

●4月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.6で、前年同月比は3月分と同じ+0.6%になった。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、17年8月分以降19年3月分までの20カ月間は+0.2%~+0.5%の間で推移していたが、4月分でレンジを上抜けた。これで22カ月連続の上昇になった。前月比(季節調整値)は+0.1%の上昇になった。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では17年4~6月期は+0.3%、7~9月期は+0.6%、10~12月期は+0.8%、18年1~3月期+0.4%、4~6月期は+0.7%と連続してプラスが続いていたが7~9月期は▲0.2%とマイナスに転じ、10~12月期は0.0%になった。足元の動きは、物価上昇圧力にはなっていないと言える。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.28%、17年1~3月期+0.45%、4~6月期は+0.83%、7~9月期は+1.00%、10~12月期+1.27%、18年1~3月期+1.26%、4~6月期は+1.46、7~9月期は+1.26%、10~12月期は+2.23%と9四半期連続でプラスになっている。

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年10月分で87.1%と16年9月の調査開始以来当時の最高になった後、11月分では83.1%、12月分では82.0%とやや鈍化したものの4カ月連続80%台となっていたが、19年1月分では、17年8月の72.9%以来の低水準である73.7%へと大幅に鈍化した。その後、19年2月分では85.3%、3月分では81.2%、4月分では84.6%、5月分では87.2%と4カ月連続して80%台になった。19年5月分で調査開始以来の最高を7カ月ぶりに更新した。

●3月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」で1年後は+0.9%で2四半期連続して、3年後は+1.1%と7四半期連続して同じ前年比上昇率になった。5年後は+1.1%で12月調査から0.1ポイント鈍化した。また、「販売価格の見通し」では1年後+0.8%(3四半期連続)、3年後+1.2%(2四半期連続)、5年後+1.5%と(4四半期連続)と3つとも12月調査と同じになった。

●ESPフォーキャスト調査・5月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、19年4~6月期+0.62%、7~9月期は+0.54%と緩やかに鈍化する見込みだ。しかし、19年10~12月期は消費増税を受けて+1.05%に上昇(消費増税の影響除くと+0.16%)となっている。20年1~3月期は+1.09%に上昇(消費増税の影響除くと+0.22%)である。19年度は+0.82%、20年度は+0.86%を見込んでいる。消費増税影響除くベースでは19年度は+0.36%、20年度は+0.42%を見込んでいる。携帯電話料金の大幅引き下げや、幼児教育無償化の影響が、当面の前年同月比の抑制要因として考えられよう。ESPフォーキャスト調査・5月調査・特別調査・織り込んだ場合の平均値によると、19年度には、携帯電話料金の大幅引き下げの影響が▲0.17%、幼児教育無償化の影響が▲0.27%出る見込みである。2%は遠い目標水準になっている。