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2019年1月分鉱工業生産指数・速報値について

2019年2月28日

-1月分鉱工業生産指数前月比▲3.7%と3カ月連続減少、前年同月比は0.0%と横這い-
-経済産業省の基調判断は、1月分で「総じてみれば、生産は足踏みをしている」に下方修正-
-1~3月期生産指数は、だいぶ低い水準からスタート、2四半期ぶり前期比減少の可能性-
-1月分景気動向指数一致CI前月差は大幅下降の見込み。基調判断は「下方への局面変化」に-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・1月分速報値・前月比は▲3.7%と3カ月連続の減少になった。2015年を100とした季節調整値の水準は100.8と、2015年基準(2013年1月以降)の最高水準であった18年10月分の105.9から5.1ポイント低い水準で、18年で最低だった1月分と同じ水準になった。また、前年同月比は横這いの0.0%になった。

●経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値では、1月分の前月比は最頻値で▲2.3%。90%の確率に収まる範囲で▲3.3%~▲1.4%の見込みとなっていた。前月比▲3.7%は、下限値を下回る伸び率となった。

●1月分速報値の生産指数では、輸送機械工業(除.自動車工業)、無機・有機化学工業、石油・石炭製品工業の3業種だけが前月比増加で、自動車工業、電気・情報通信機械工業、そして生産用機械工業等の12業種が前月比減少と、幅広い業種がマイナスとなった。

●1月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲4.0%と2カ月ぶりに減少となった。前年同月比は▲0.9%で、2カ月連続の減少になった。

●1月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.5と3カ月ぶりの前月比減少となった。出荷は減少したものの生産も減少する中で、在庫は前月比でみて積み上がる姿にはならなかった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+1.2%と3カ月連続の増加となった。

●1月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+0.8%で2カ月連続の前月比上昇となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年1~3月期から17年7~9月期までは「在庫積み増し局面」だったが、17年10~12月期では出荷の前年同期比が+2.1%、在庫が同+4.1%となり「在庫積み上がり局面」に入った。18年1~3月期は出荷の前年同期比が+0.8%、在庫が同+5.2%、18年4~6月期は出荷の前年同期比が+1.6%、在庫が同+2.4%、18年7~9月期も出荷の前年同期比が▲0.5%、在庫が同+3.5%と「在庫積み上がり局面」であった。18年10~12月期は、10~11月分までは出荷の前年同月比が在庫の前年同月比を上回り「在庫積み増し局面」に戻ることが一時的に期待されたものの、最終的に10~12月期全体では出荷の前年同期比が+1.0%、在庫が同+1.9%となった。18年1月は出荷の前年同期比が▲0.9%、在庫が同+1.2%で、依然として「在庫積み上がり局面」の状態にあることが確認された。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると2月分は前月比+5.0%の増加、3月分は同▲1.6%の減少の見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、2月分の前月比は最頻値で+0.4%の増加見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲0.6%~+1.4%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数を、2月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.4%)、3月分は前月比(▲1.6%:製造工業予測指数)で延長した1~3月期の前期比は▲4.4%の減少になる。また、先行きの鉱工業生産指数を、2月分・3月分を製造工業予測指数前月比(+5.0%、▲1.6%)で延長した場合は、1~3月期の前期比は▲1.4%の減少になる。18年には中国での携帯電話の普及が一服したため世界的に情報関連財が弱い。また。中国の景気減速の影響で中国向け工作機械の生産も頭打ちになっているなど弱含み要因が多い。どちらのケースになっても、スタートの1月が弱いので昨年に続き1~3月期の生産は前期比減少となってしまいそうだ。

●経済産業省の基調判断は、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が17年12月分までの「生産は持ち直している」から下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。8月分・9月分でも「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と同じ判断だった。

●18年10月分では「生産は緩やかに持ち直している」という18年6月分以来の判断に上方修正された。前回11月分も、12月分でも同じ判断継続となった。

●19年1月分では「生産は足踏みをしている」に下方修正となった。

(1月分景気動向指数予測)

●1月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.4程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの9系列中、2月28日午前9時現在までに判明している7系列では、最終需要財在庫率指数、マネーストックの2系列が前月差プラス寄与、日経商品指数が前月差寄与ゼロ、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残りの新規求人数、新設住宅着工床面積の2系列が前月差マイナス寄与になると予測する。

●1月分の景気動向指数・速報値では、一致CIが前月差▲2.5程度と3カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列中、2月28日午前9時現在までに判明している生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列は全て前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、有効求人倍率1系列が前月差寄与ゼロになると予測した。3月1日に発表される有効求人倍率は1.64倍と12月分から0.01ポイント上昇すると予測している。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていたが、18年9月分・10月分・11月分・12月分と4カ月連続「足踏みを示している」となった。1月分が予測通りなら、一致CI前月差は下降、かつ一致CIの7カ月後方移動平均の前月差の2カ月の累計と3カ月の累計が振幅目安の▲0.77を超えるマイナス幅となり、「下方への局面変化」に下方修正されることになろう。「下方への局面変化」は事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す判断である。

●1月分の先行DIは11.1%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、これまでに判明している最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列はマイナス符号になることが、判明している。その結果1月分の先行DIは0.0%以上22.2%以下になることが決定している。残る2系列の、新規求人数がマイナス符号に、新設住宅着工床面積がプラス符号になると微妙だが予測した。

●1月分の一致DIは14.3%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、これまでに判明している生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、商業販売額指数・小売業の6系列はマイナス符号になることが判明している。このため、1月分の一致DIは0.0以上14.3%以下が確定している。残りの有効求人倍率の1系列はプラス符号になると予測した。