ホームマーケット経済指標解説2019年1月分景気動向指数(速報値)

2019年1月分景気動向指数(速報値)

2019年3月7日

-先行CI前月差▲1.3と5カ月連続下降、一致CI前月差▲2.7と3カ月連続下降-
-先行DI・11.1%、一致DI・14.3%とどちらも景気分岐点の50%割りこむ-
-一致CIを使った景気の基調判断は、「下方への局面変化」に下方修正-

●1月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.3と5カ月連続の下降になった。速報値からデータが利用可能な最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの9系列中、最終需要財在庫率指数、新規求人数、マネーストックの3系列が前月差プラス寄与、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差マイナス寄与になった。

●1月分の一致CIは前月差▲2.7と3カ月連続の下降になった。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列は全て前月差マイナス寄与である。中国経済の成長鈍化などに伴い、国内生産の伸びが鈍くなっているのが主因だ。但し、中国は19年に2兆元(約33兆円)規模の減税などの経済対策が実施される予定で年央以降の景気浮揚効果が期待される。

●1月分の一致CIの指数水準は2015年=100として97.9になった。なお、直近のピークは17年12月分の105.2で、足元の水準は、7.3ポイント低い。18年では最も高かった4月分の104.3に比べて6.4ポイント低い水準になった。97.9という水準は13年6月の97.0以来の低水準である。

●一致CIの3カ月後方移動平均は前月差▲1.94ポイント下降し、3カ月連続の下降になった。昨年夏の自然災害などによるもたつきが反映される7カ月後方移動平均は前月差▲0.73ポイントの下降で、3カ月連続の下降になった。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分~18年8月分まで23カ月連続して「改善を示している」という最高の基調判断で推移してきていた。しかし、18年9月分で「足踏みを示している」へ24カ月ぶりに基調判断が下方修正され、前回18年12月分まで4カ月連続して同じ判断だった。

●1月分の一致CI前月差は下降、かつ一致CIの7カ月後方移動平均の前月差の2カ月の累計が▲1.14、3カ月の累計が▲1.48と振幅目安の▲0.77を超えるマイナス幅となり、「下方への局面変化」に下方修正された。「下方への局面変化」は事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す判断である。にわかに、「戦後最長の景気拡張は幻で、昨年秋から景気後退局面に入っている可能性がある」という見方が出てくるかもしれない。

●但し、7カ月後方移動平均の足元の弱さは、昨年夏の自然災害の影響を大きく受けたものである。景気動向指数に基づく機械的判断の推移が今回と似ているケースがある。14年4月から7月にかけて4カ月連続で「足踏み」のあと8月に「下方への局面変化」に下方修正したケースだ。14年8月から11月にかけて4カ月連続「下方への局面変化」なったが、14年12月に「改善」に戻した。最終的にこの時は、景気拡張局面継続と判断された。今回もしばらく、「下方への局面変化」を続けたあとで、「改善」に戻ることを期待したい。

●景気動向指数の基調判断が「改善を示している」という最上位の景況判断に戻るには、3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラスであることが必要だ。「改善」に戻るのには時間がかかる。一方、「悪化」という判断になるためには、3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスであることが必要だ。

●今回1月分の先行DIは11.1%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列がマイナス符号になった。

●一方、1月分の一致DIは14.3%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な7系列中、有効求人倍率1系列はプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、商業販売額指数・小売業の6系列はマイナス符号になった。

●1月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は3月13日である。また在庫率関連データが3月18日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●1月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。速報値段階の所定外労働時間指数は3月8日に発表される。確報値の公表日は今回遅く、4月5日発表なので、3月下旬発表予定の景気動向指数・改定値では所定外労働時間指数は速報値が使用されると思われる。また、生産指数関連データなどが3月18日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●2月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。この4系列の中で、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、消費者態度指数1系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。先行CIの前月差が6カ月ぶりに上昇に転じる可能性がある。

●また、2月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列は、日経商品指数1系列がプラス符号に、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になることが判明している。1月分速報値段階の先行DIは11.1%以上66.7%以下が確定している。