ホームマーケット経済指標解説2019年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2019年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2019年5月20日

―実質GDP成長率は前期比年率+2.1%、2四半期連続のプラス成長―
―実質個人消費:前期比▲0.1%、設備投資:同▲0.3%、輸出:同▲2.4%と弱い―
―控除項目の輸入の前期比が大幅マイナスで、外需寄与前期比+0.4%。―
―政府経済見通し19年度見通し+1.3%には、各四半期前期比年率+1.3%
(前期比+0.32%)が必要。18年度から19年度へのゲタは+0.5%―

●19年1~3月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比+0.5%、前期比年率+2.1%となった。事前予想ではマイナスか横這いという見方が多かったので、表面的な数字はポジティヴ・サプライズとなった。しかし、個人消費、設備投資、輸出といった主要項目は事前の予想通り前期比マイナスという厳しい内容になった。中国経済の減速などの影響が出ている。住宅投資、公共投資は予想通り前期比プラスとなった。輸入の前期比が▲4.6%と大幅マイナスだったので、外需の寄与度は▲0.4%と4四半期ぶりのプラス寄与になった。

●18年度のGDP成長率は前年比+0.6%、名目GDP成長率は前年比+0.5%になった。実質GDP成長率前年比は4年連続、名目GDP成長率前年比は7年連続の増加となった。

●先行きについては、改元によるプラス効果が期待され、消費税率引き上げの駆け込み需要が期待される個人消費や、国土強靭化対応の公共投資は成長率を下支えしよう。米中貿易戦争の行方が懸念される中、足元の外需は厳しい状況が続きそうだ。通商問題の動向が小康状態になれば、中国景気が持ち直し、情報関連財の調整が終了することが期待される年度後半には外需の持ち直しが期待される。設備投資は日銀短観3月調査の計画の強さがそのまま出るか、足元の機械受注統計の弱さが出るか、足元の動きが注目される局面だ。

●1~3月期の実質個人消費・前期比は▲0.1%と2四半期ぶりの減少になった。消費総合指数の前期比▲0.2%より小幅になったのは、昨年の自然災害の影響などが季節調整替えで均されたため10~12月期の前期比が+0.4%から+0.2%に鈍化した反動が大きそうだ。

●実質家計最終消費支出の前期比も▲0.1%と減少である。実質国内家計最終消費支出の内訳をみると、耐久財の前期比は▲2.2%と2四半期ぶりの減少になった。半耐久財の前期比は▲3.7%と4四半期ぶりの減少になった。サービスの前期比が▲0.1%と2四半期ぶりの減少になった。一方、非耐久財の前期比は+1.2%と2四半期ぶりの増加になった。

●1~3月期では、実質雇用者報酬の前期比が+0.1%と2四半期連続の増加になった。

●1~3月期の実質設備投資・前期比は▲0.3%と2四半期ぶりの減少になった。名目の前期比(季節調整済み)は▲1.0%とこちらも2四半期ぶりの減少になった。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+4.5%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+25.9%であると公表された。法人企業統計が出た時に前年同期比が+3.4%程度より高いかどうか比較することで、1~3月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。

●1~3月期実質住宅投資は前期比+1.1%と、3四半期連続の増加になった。消費増税の駆け込み需要に対応した動きがみられたようだ。

●1~3月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫と流通品在庫はともに前期比寄与度+0.1%とプラス寄与となった。また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同▲0.1%だった。

●1~3月期実質政府最終消費支出は前期比▲0.2%だった。一方、実質公共投資は前期比+1.5%の増加になった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は0.0%であった。

●1~3月期外需(純輸出)の前期比寄与度は▲0.4%と4四半期ぶりのプラス寄与になった。実質輸出は前期比▲2.4%と2四半期ぶりの減少になった。財は前期比▲3.5%、サービスは前期比+2.0%だった。実質輸入の前期比は▲4.6%と2四半期ぶりの減少になった。財に関しては前期比▲5.7%となった10~12月期が同+3.3%と9月末の台風の影響などもあり大幅増加になった反動も出ていそうだ。サービスは前期比▲0.0%の減少になった。

●1~3月期のGDPデフレーターの前年同期比は+0.2%のプラスの伸び率になった。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.3とプラスの伸び率になった。一方、1~3月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは+0.3%で、国内需要デフレーターの前期比は▲0.1%になった。

●19年度政府経済見通し+1.3%程度達成には、各四半期前期比年率+1.3%(前期比+0.32%)になることが必要だ。18年度から19年度へのゲタは+0.5%になった。ESPファーキャスト調査5月調査で19年度実質GDP成長率の平均が+0.5%だったので、19年度の成長率見通しが6月調査で上方修正される可能性が出てきたと思われる。

●6月10日に発表される1~3月期第2次速報値では、6月3日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定される。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.4%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、プラス寄与の大きい順に原材料在庫、流通品在庫、製品在庫で、仕掛品在庫はマイナス寄与となっている模様だ。