ホームマーケット経済指標解説2018年12月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年12月分鉱工業生産指数・速報値について

2019年1月31日

-12月分鉱工業生産指数前月比▲0.1%と2カ月連続減少、前年同月比は3カ月ぶり減少-
-7~9月期の自然災害による減少から回復し10~12月期生産指数は2四半期ぶり前期比増加-
-12月分景気動向指数一致CI前月差は下降。12月分での景気の基調判断は「足踏み」継続に-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・12月分速報値・前月比は▲0.1%と2カ月連続の減少になった。2015年を100とした季節調整値の水準は104.7と2015年基準(2013年1月以降)の最高水準であった先々月10月分の105.9から1.2ポイント低い水準になった。また、前年同月比は▲1.9%で3カ月ぶりの減少になった。

●経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値では、12月分の前月比は最頻値で▲0.7%。90%の確率に収まる範囲で▲1.7%~+0.3%の見込みとなっていた。前月比▲0.1%は、範囲内の中ではやや良い方の伸び率ではある。

●12月分速報値の生産指数では、汎用・業務用機械工業、自動車工業、電気・情報通信機械工業等の9業種が前月比増加、生産用機械工業、化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)、電子部品・デバイス工業等の6業種が前月比減少となった。

●12月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+0.3%と2カ月ぶりに増加となった。前年同月比は▲2.8%で、3カ月ぶりの減少になった。

●12月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+1.0と2カ月連続して前月比増加となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+1.3%と2カ月連続の増加となった。

●12月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+2.2%で3カ月ぶり前月比上昇となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年1~3月期から17年7~9月期までは「在庫積み増し局面」だったが、17年10~12月期では出荷の前年同期比が+2.1%、在庫が同+4.1%となり「在庫積み上がり局面」に入った。18年1~3月期は出荷の前年同期比が+0.8%、在庫が同+5.2%、18年4~6月期は出荷の前年同期比が+1.6%、在庫が同+2.4%、18年7~9月期も出荷の前年同期比が▲0.5%、在庫が同+3.5%と「在庫積み上がり局面」であった。18年10~12月期は、10~11月分までは出荷の前年同月比が在庫の前年同月比を上回り「在庫積み増し局面」に戻ることが一時的に期待されたものの、最終的に10~12月期全体では出荷の前年同期比が+1.1%、在庫が同+1.3%となった。ほぼ45°線上だが、依然として「在庫積み上がり局面」という微妙な状態にあることが確認された。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると1月分は前月比▲0.1%の減少、2月分は同+2.6%の増加という見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、1月分の前月比は最頻値で▲2.3%の減少見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲3.3%~▲1.4%の減少見込みとなっている。

●先行きの鉱工業生産指数を、1月分は先行き試算値最頻値前月比(▲2.3%)、2月分は前月比(+2.6%:製造工業予測指数)で、3月分を前月比横這いで延長した1~3月期の前期比は▲1.0%の減少になる。また、先行きの鉱工業生産指数を、1月分・2月分を製造工業予測指数前月比(▲0.1%、+2.6%)で、3月分を前月比横這いで延長した場合は、1~3月期の前期比は+1.2%の増加になる。足元、米中貿易戦争の影響など不透明要因も多く、どちらのケースになっても不思議ではない。予断を持つことなく注視していくことが大切な状況に変わりはないとみられる。

●経済産業省の基調判断は、17年11月分では「生産は持ち直している」にそれまでの「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」から上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。8月分・9月分でも「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と同じ判断だった。

●18年10月分では「生産は緩やかに持ち直している」という18年6月分以来の判断に上方修正された。前回11月分も、12月分でも同じ判断継続となった。

(12月分景気動向指数予測)

●12月分の景気動向指数・速報値では、一致CIが前月差▲0.6程度と2カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列中、耐久消費財出荷指数1系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列が前月差マイナス寄与になると予測した。明日発表される有効求人倍率は1.63倍と11月分と同じ数字と仮定した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていたが、18年9月分・10月分・11月分と3カ月連続「足踏みを示している」となった。12月分が予測通りなら、一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は3カ月連続の上昇になるが、一致CI前月差は下降である。「改善」に戻るには一致CI前月差上昇かつ3カ月後方移動平均3カ月連続上昇が必要とされるため、条件を満たさない。有効求人倍率が予測に反し上昇しても難しいだろう。12月分の基調判断は「足踏み」継続と思われる。

●12月分の一致DIは57.1%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数の4系列がプラス符号に、商業販売額指数・卸売業、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列がマイナス符号になると予測した。