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2018年11月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年12月28日

-11月分鉱工業生産指数前月比▲1.1%と2カ月ぶり減少、前年同月比は2カ月連続増加-
-自然災害による一時的減少から回復し10~12月期生産指数は2四半期ぶり前期比増加に-
-11月分景気動向指数一致CI前月差下降。但し、いざなみ景気に並ぶ12月分では「改善」か-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・11月分速報値・前月比は▲1.1%と2カ月ぶりの減少になった。2015年を100とした季節調整値の水準は104.7と2015年基準(2013年1月以降)の最高水準であった先月10月分の105.9から低下した。また、前年同月比は+1.4%で2カ月連続の増加になった。

●経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値では、11月分の前月比は最頻値で▲2.1%。90%の確率に収まる範囲で▲3.1%~▲1.1%と減少の見込みとなっていた。前月比▲1.1%は、範囲内の上限と同じ伸び率である。

●11月分速報値の生産指数では、生産用機械工業、化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)、石油・石炭製品工業等の7業種が前月比増加、汎用・業務用機械工業、電気・情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業等の8業種が前月比減少となった。

●11月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲1.4%と2カ月ぶりに減少となった。前年同月比は+0.7%で、2カ月連続の増加になった。

●11月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+0.2%と2カ月ぶりに前月比増加となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+0.7%と2カ月ぶりの増加となった。

●11月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲1.8%で2カ月連続前月比低下となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年1~3月期では出荷の前年同期比が+2.1%、在庫が同▲1.4%になり「在庫積み増し局面」に入った。17年4~6月期では出荷の前年同期比が+3.8%、在庫が同▲1.0%、17年7~9月期では出荷の前年同期比が+2.3%、在庫が同▲1.0%で「在庫積み増し局面」だったが、17年10~12月期では出荷の前年同期比が+2.1%、在庫が同+4.1%となり「在庫積み上がり局面」に入った。

●18年4~6月期も出荷の前年同期比が+1.6%、在庫が同+2.4%、18年7~9月期も出荷の前年同期比が▲0.5%、在庫が同+3.5%と「在庫積み上がり局面」であったが、18年10~11月では出荷の前年同月比が+3.1%、在庫が同+0.7%と「在庫積み増し局面」に戻った。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると12月分の前月比+2.2%の増加の後、1月分は前月比▲0.8%と減少に転じる見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、12月分の前月比は最頻値で▲0.7%の減少見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲1.7%~+0.3%の見込みとなっている。

●先行きの鉱工業生産指数12月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.7%)で延長した場合は、10~12月期の前期比は+1.7%の増加になる。また、先行きの鉱工業生産指数12月分を製造工業予測指数の前月比(+2.2%)で延長した場合は、10~12月期の前期比は+2.7%の増加になる。どちらのケースでも10~12月期は2四半期ぶりの前期比増加で、7~9月期の生産の落ち込みが一時的だったことが確認されよう。今後、米中貿易戦争の影響など不透明要因も多く、予断を持つことなく注視していくことが大切な状況に変わりはない。

●経済産業省の基調判断は、17年11月分では「生産は持ち直している」にそれまでの「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」から上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。8月分・9月分でも「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と同じ判断だった。

●前回10月分では「生産は緩やかに持ち直している」という18年6月分以来の判断に上方修正された。今回11月分も同じ判断継続となった。

(10~12月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10~11月分平均対7~9月分平均比は+4.2%の増加になった。一方、非耐久消費財出荷指数は同▲3.6%の減少だ。GDPの個人消費算出には使用されないが、同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の10~11月分平均対7~9月分平均比は+1.1%の増加だ。また、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10月分対7~9月分平均比は+1.7%だ。乗用車販売台数の10~11月分平均対7~9月分平均比は+5.2%の増加である。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数7~9月分から10~12月期へのゲタは+0.3%とプラスの伸び率である。10~12月期第1次速報値では個人消費の前期比が2四半期ぶりに緩やかながらプラスの伸び率になる可能性が大きい状況と言えよう。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の10~11月分平均対7~9月分平均比は+4.6%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+3.0%の増加である。また、建設財は同+3.3%の増加になった。供給サイドから推計される10~12月期第1次速報値の実質設備投資・前期比は2四半期ぶりにプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●実質輸出入の動向をみると10~11月分平均対7~9月分平均比は+1.5%の増加に対し、控除項目の輸入は同+4.4%の増加と高い伸び率になっている。モノの10月分・11月分の動向だけからみると、10~12月期第1次速報値の外需はマイナス寄与になる可能性が大きそうだ。

●19年2月14日に発表される10~12月期の実質GDPは、10月分・11月分のデータからみると設備投資など内需主導でプラス成長に戻る可能性が大きい状況だろう。

(11月分景気動向指数予測)

●11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差0.0程度になると予測する。速報値からデータが利用可能な最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラス寄与、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●11月分の一致CIは前月差▲1.9程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列が前月差マイナス寄与に、有効求人倍率1系列が前月差寄与ゼロになると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていたが、9月分・10月分と2カ月連続「足踏みを示している」となった。11月分が予測通りなら、一致CI前月差は下降だが、3カ月後方移動平均の前月差は2カ月連続の上昇になろう。「改善」に戻るには一致CI前月差上昇かつ3カ月後方移動平均3カ月連続上昇が必要とされるため、早くて12月分でとなる。一致CI前月差が0.1ポイント上昇すればよいことになろう。11月分の基調判断は「足踏み」継続だ。

●11月分の先行DIは55.6%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、中小企業売上げ見通しDIの5系列がプラス符号に、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の4系列がマイナス符号になると予測した。

●11月分の一致DIは64.3%程度と2カ月連続して景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数の4系列がプラス符号に、有効求人倍率1系列が保合いに、商業販売額指数・卸売業、商業販売額指数・小売業の2系列がマイナス符号になると予測した。