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2018年10月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年11月30日

-10月分鉱工業生産指数前月比+2.9%と2カ月ぶり増加、前年同月比2カ月ぶり増加-
-9月の自然災害の影響が、9月分・10月分の生産・出荷・在庫の動向に大きく影響-
-10~12月期生産指数2四半期ぶり前期比増加の可能性を裏付ける11・12月分予測指数-
-10月分景気動向指数一致CI前月差大幅上昇、いざなみ景気に並ぶ12月分で「改善」へ-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・10月分速報値・前月比は+2.9%と2カ月ぶりの増加になった。2015年を100とした季節調整値の水準は105.9と2015年基準(2013年1月以降)の最高水準である。また、前年同月比は+4.2%で2カ月ぶりの増加になった。北海道胆振東部地震や、2度の台風の上陸の影響などの自然災害がマイナスに作用した9月分の反動が大きいとみられる。

●自然災害の影響などを考慮せずに機械的に求める、経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値では、10月分の前月比は最頻値で+0.9%。90%の確率に収まる範囲で▲0.1%~+1.9%となっていた。前月比+2.9%は、範囲内の上限を1ポイント上回る伸び率である。

●10月分速報値の生産指数では、汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、自動車工業等の13業種が前月比増加、生産用機械工業、石油・石炭製品工業の2業種が前月比減少となった。なお、生産用機械工業の中で、半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置が大きく減少した点は中止する必要があろう。

●10月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+5.4%と2カ月ぶりに増加となった。前年同月比は+7.7%で、2カ月ぶりに増加になった。出荷の増加率は生産を上回ったが、需要が大幅に増加した影響と言うよりも、9月末の台風の影響などで予定していた出荷が出来ず、積み上がっていた在庫がはけた面が大きいように思われる。

●10月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.4%と2カ月ぶりに前月比減少となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は▲0.8%と13カ月ぶりの減少となった。

●10月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲7.4%で2カ月ぶりに前月比低下となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年1~3月期では出荷の前年同期比が+2.1%、在庫が同▲1.4%になり「在庫積み増し局面」に入った。17年4~6月期では出荷の前年同期比が+3.8%、在庫が同▲1.0%、17年7~9月期では出荷の前年同期比が+2.3%、在庫が同▲1.0%で「在庫積み増し局面」だったが、17年10~12月期では出荷の前年同期比が+2.1%、在庫が同+4.1%となり「在庫積み上がり局面」に入った。

●18年4~6月期も出荷の前年同期比が+1.6%、在庫が同+2.4%、18年7~9月期も出荷の前年同期比が▲0.5%、在庫が同+3.5%と「在庫積み上がり局面」であったが、18年10月では出荷の前年同月比が+7.7%、在庫が同▲0.8%と「在庫積み増し局面」に戻った。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると11月分の前月比+0.6%、12月分の前月比+2.2%の増加基調が継続する見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、11月分の前月比は最頻値で▲2.1%。90%の確率に収まる範囲で▲3.1%~▲1.1%と減少の見込みとなっている。

●先行きの鉱工業生産指数11月分を先行き試算値最頻値前月比(▲2.1%)で、12月分を前月比+2.2%(製造工業予測指数の前月比)で延長した場合は、10~12月期の前期比は+2.0%の増加になる。また、先行きの鉱工業生産指数11月分と12月分を製造工業予測指数の前月比(+0.6%、+2.2%)延長した場合は、10~12月期の前期比は+3.9%の増加になる。どちらのケースでも7~9月期の生産の落ち込みが一時的だったことが確認されよう。なお、米中貿易戦争の影響などは足元の生産統計にはあまり出ているようにはみられないが、今後どうなるかは不透明要因も多く、予断を持つことなく注視していくことが大切な状況に変わりはない。

●経済産業省の基調判断は、17年11月分では「生産は持ち直している」にそれまでの「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」から上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。8月分・9月分でも「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と同じ判断だった。

●今回10月分では「生産は緩やかに持ち直している」という18年6月分以来の判断に上方修正された。

(10~12月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10月分対7~9月分平均比は+4.7%の増加になった。非耐久消費財出荷指数は同+6.8%の増加だ。GDPの個人消費算出には使用されないが、同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の10月分対7~9月分平均比は+1.2%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7~9月分から10~12月期へのゲタは▲0.3%だ。乗用車販売台数の10月分対7~9月分平均比は+5.8%の増加だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数7~9月分から10~12月期へのゲタは▲0.1%と僅かなマイナスである。10~12月期第1次速報値では個人消費の前期比が2四半期ぶりにプラスの伸び率になる可能性が大きい状況と言えよう。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の10月分対7~9月分平均比は+6.5%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+5.1%の増加である。また、建設財は同+3.7%の増加になった。供給サイドから推計される10~12月期第1次速報値の実質設備投資・前期比はプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●実質輸出入の動向をみると10月分対7~9月分平均比は+3.0%の増加に対し、控除項目の輸入は同+5.8%の増加と高い伸び率になっている。モノの10月分の動向だけからみると、10~12月期第1次速報値の外需はマイナス寄与になる可能性が大きそうだ。

●19年2月14日に発表される10~12月期の実質GDPは、四半期の初めの10月分のデータからみるとプラス成長になる可能性が大きい状況だろう。 

(10月分景気動向指数予測)

●10月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.9程度と2カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、11月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数の2系列が前月差プラス寄与に、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積は前月差寄与ゼロになると予測した。

●10月分の一致CIは前月差+2.3程度と2カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列が前月差プラス寄与に、有効求人倍率1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていた。しかし、18年9月分で「足踏みを示している」へ24カ月ぶりに基調判断が下方修正された。10月分以降で上方修正の条件を満たせれば「改善を示している」に戻る。最短では12月分速報値が公表される19年2月7日になる。10月分では「足踏みを示している」という判断継続となろう。

●10月分の先行DIは44.4%程度と4カ月連続して景気判断の分岐点の50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、10月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、の4系列がプラス符号に、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは44.4%以上55.6%以下になることが確定している。残る新設住宅着工床面積は微妙だがマイナス符号になると予測した。

●9月分の一致DIは85.7%程度と4カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がプラス符号に、有効求人倍率1系列がマイナス符号になると予測した。