ホームマーケット経済指標解説2018年9月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年9月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年10月31日

-9月分鉱工業生産指数前月比▲1.1%と2カ月ぶり減少、前年同月比3カ月ぶりに減少-
-9月に上陸した台風の影響が、9月分の生産・出荷・在庫の動向に大きく影響-
-7~9月期生産指数2四半期ぶり前期比減少。10~12月期、増加・減少2つの試算-
-9月分景気動向指数一致CI前月差下降、判断24カ月ぶりに「足踏み」に下方修正か-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・9月分速報値・前月比は▲1.1%と2カ月ぶりの減少になった。2010年を100とした季節調整値の水準は101.4である。一方、前年同月比は▲2.9%で3カ月ぶりの減少になった。北海道胆振東部地震や、2度の台風の上陸の影響などがマイナス要因になったとみられる。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、9月分の前月比は最頻値で+0.2%。90%の確率に収まる範囲で▲0.8%~+1.2%となっていた。前月比▲1.1%は、範囲内の下限を下回る伸び率である。

●9月分速報値の生産指数をみると、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、鉄鋼業等の11業種が前月比減少、化学工業(除.医薬品)、金属製品工業、石油・石炭製品工業等の4業種が前月比増加となった。

●9月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲3.0%と2カ月ぶりに減少となった。前年同月比は▲3.4%で、3カ月ぶりの減少になった。出荷の減少率は生産を上回ったが、需要が大幅に減少した影響と言うよりも、月末の台風の影響などで予定していた出荷が出来ず、出荷待ちの在庫が積み上がった面が大きいように思われる。

●9月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+2.3%と4カ月ぶりに前月比増加となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+5.5%と8月分の+3.0%から大きく伸び率を高め12カ月連続の増加となった。

●9月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+7.8%で2カ月ぶりに前月比上昇となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.6%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.8%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.8%、在庫が同▲2.5%だった。17年10~12月期では出荷の前年比が+3.1%、在庫が同+1.9%と「在庫積み増し局面」だった。 

●18年1~3月期では出荷の前年比が+1.5%、在庫が同+3.9%と「在庫積み上がり局面」に入っていたが、18年4~6月期も出荷の前年比が+2.2%、在庫が同+2.4%と、「在庫積み増し局面」には戻れずに「在庫積み上がり局面」のままになった。18年7~9月期も出荷の前年比が▲0.7%、在庫が同+5.5%と「在庫積み上がり局面」である。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると前月比+6.0%の大幅増加である。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、10月分の前月比は最頻値で+0.9%。90%の確率に収まる範囲で▲0.1%~+1.9%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数10月分を先行き試算値最頻値前月比(+0.9%)で、11月分を前月比▲0.8%(製造工業予測指数の前月比)、12月分を前月比横這いで延長した場合は、10~12月期の前期比は▲0.3%と2四半期連続の減少になる。このケースでは景気が後退局面入りするという見方も出てこよう。一方、先行きの鉱工業生産指数10月分と11月分を製造工業予測指数の前月比(+6.0%、▲0.8%)、12月分を前月比横這いで延長した場合は、10~12月期の前期比は+4.7%と2四半期ぶりの増加になる。このケースでは7~9月期の生産の落ち込みが一時的だったことが確認されよう。米中貿易戦争の影響などがどう表れるか、予断を持つことなく生産の動向を注目したいところだ。

●経済産業省の基調判断は16年11月分では前月までの表現から「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になっていた。17年11月分では「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。前回8月分でも今回9月分でも「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と同じ判断になった。9月分の弱い数字でも判断は変わっていない。

●11月14日に公表される9月分確報値より、現行の2010年基準から2015年基準への改定が行われる。この基準改定に先立ち、改定の概要、13年1月~17年12月のデータ等の公表が11月7日に行われると発表された。

(9月分景気動向指数予測)

 ●9月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.2程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、10月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラス寄与に、消費者態度指数が前月差ゼロに、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、マネーストックの3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積は前月差マイナス寄与になると予測した。 

●9月分の一致CIは前月差▲1.6程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全7系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていた。しかし、9月分一致CIが予測通り前月差▲1.6の下降なら、3カ月後方移動平均前月差の3カ月合計が▲1.20になる。1標準偏差は▲1.02であるので「足踏みを示している」へ24カ月ぶりに基調判断が下方修正されるとみた。

●9月分の先行DIは11.1%程度と3カ月連続して景気判断の分岐点の50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、10月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、全系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは0.0%以上11.1%以下で景気判断の分岐点の50%割れになることが確定している。残る新設住宅着工床面積は微妙だがプラス符号になると予測した。

●9月分の一致DIは42.9%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の4系列がマイナス符号になると予測した。