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2018年9月分全国消費者物価指数について

2018年10月19日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+1.0%に上昇、21カ月連続上昇―
―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前月比+0.1%、4カ月連続上昇―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比+0.4%で変わらず、15カ月連続上昇―

●9月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.7となり、前年同月比は+1.2%と8月分より0.1ポイント低下したが、24カ月連続の上昇となった。一方、前月比(季節調整値)は0.0%で横這いとなった。

●9月分で前年同月比の低下に寄与したのは生鮮食品だ。この夏の豪雨・猛暑・台風などの異常気象の影響が出た生鮮食品の前年同月比は8月分では+8.7%だったが、9月分ではまだ高めの伸び率ながら+5.6%に鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.12%だった。 

●9月分のエネルギー全体の前月比は+0.8%上昇し、前年同月比は+8.1%と8月分の+7.4%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対するエネルギーの寄与度差は+0.05%と総合指数と生鮮食品を除く総合指数の前年同月比上昇要因になった。 

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は概ね上昇要因になったものが多かった。原油市況や為替動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+3.6%と8月分の+3.1%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%となった。都市ガス代の前年同月比は+3.4%と、8月分の+3.1%から上昇率がやや上昇したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。石油製品をみると、前回8月分で+1.9%だったプロパンガスの前年同月比は今回9月分でも同じ伸び率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。前年同月比が上昇したのは、灯油とガソリンだ。灯油の前年同月比は、8月分では+22.3%だったが、9月分では+23.2%に上昇した。前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。ガソリンの前年同月比は、8月分では+16.2%だったが、今回9月分では+17.3%の上昇率になり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%になった。 

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は9月分では前年同月比+1.7%と、8月分の前年同月比▲2.1%の下落から上昇に転じ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%になった。また、家庭用耐久財は前年同月比▲2.0%で、こちらは8月分の前年同月比▲2.5%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。 

●9月分の宿泊料は前年同月比+0.8%で、8月分の前年同月比+10.2%から上昇率が大きく鈍化し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.12%と下落要因になった。また、8月分は前年同月比+3.9%と1ケタの上昇率だった外国パック旅行費は、9月分では同+13.0%と2ケタの上昇率になった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%の上昇要因になった。 

●9月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+2.1%と8月分の同+2.1%と小数点第1位でみた伸び率は同じだが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%と僅かな物価上昇要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.7%と8月分の+1.5%から上昇率が高まり、8月分から9月分への総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.13%だった。

●9月分のサービスの前年同月比は+0.2%と8月分の同+0.5%から上昇率が鈍化し、8月分から9月分にかけて総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.11%だった。内訳は公共サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%で、一般サービスの寄与度差が▲0.10%である。外食の総合指数・前年同月比は8月分の+1.1%から9月分で+1.0%と鈍化したが、寄与度差は0.00%。影響したのは通信・教養娯楽関連サービスだった。総合指数・前年同月比は8月分+1.1%から9月分▲0.2%と上昇から下落に転じ、寄与度差が▲0.10%だった。9月分の通信料(携帯電話)の前年同月比は▲4.2%であった。 

●また、実質賃金等の計算に使用する9月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+1.4%と8月分の+1.5%から僅かに鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.10%だった。9月分の実質賃金・前年同月比の押し上げ要因になる。なお9月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で8月分同▲0.2%と同じだった。詳細にみると持家の帰属家賃(木造)前年同月比が9月分▲0.2%で8月分と同じで、持家の帰属家賃(非木造)前年同月比が9月分▲0.1%で8月分と同じであった。持家の帰属家賃の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●9月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数で101.3、前年同月比は、8月分の+0.9%から0.1ポイント高まり、+1.0%となった。前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、21カ月連続の上昇になった。+1.0%の前年同月比は今年2月分の+1.0%以来7カ月ぶりである。 

●9月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は+0.1%だった。前月比は4カ月連続プラスになった。 

●9月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.1で、前年同月比は8月分と同じ、+0.4%になった。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、17年8月分以降は+0.2%~+0.5%の間で推移し、15カ月連続の上昇になった。前月比(季節調整値)は0.0%と横這いになった。 

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では16年10~12月期▲0.3%の後、17年1~3月期は+0.1%とプラスに転じ、4~6月期は+0.3%、7~9月期は+0.6%、10~12月期は+0.5%、18年1~3月期+0.1%、4~6月期は+0.5%と6四半期連続のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.33%、17年1~3月期+0.72%、4~6月期は+1.06%、7~9月期は+1.16%、10~12月期+1.45%、18年1~3月期+1.63%、4~6月期は+1.86%まで7四半期連続でプラスになっている。需給ギャップ(GDPギャップ)の改善基調はやがて物価上昇要因になると思われる。

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年6月分で86.2%と16年9月の調査開始以来最高になったが、18年7月分で77.1%、8月分で75.7%まで一時鈍化した。しかし、18年9月分で81.1%と3カ月ぶりに80台をつけた。直近の消費者の予想物価上昇率には持ち直し傾向が見えている。 

●9月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」で1年後が6月調査から0.1ポイント低下し0.8%になった。3年後と5年後は6月調査と同じ前年比上昇率で下げ止まり感が出ている。また、「販売価格の見通し」では3年後と5年後が0.1ポイントずつ上昇率を高め、各々0.8%、1.3%になった。また5年後は6月調査と同じ1.5%の伸び率であった。総じて企業の予想物価上昇率に下げ止まり感が出ている。 

●ESPフォーキャスト調査・10月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、18年7~9月期+0.89%、10~12月期は+0.91%、19年1~3月期は+0.95%、4~6月期+0.91%、7~9月期は+0.89%と推移し、19年10~12月期は消費増税を受けて1.73%に上昇(消費増税の影響除くと+0.84%)となっている。しばらく+0.9%程度の伸び率が続くという予測だ。