ホームマーケット経済指標解説2018年8月分景気動向指数(速報値)

2018年8月分景気動向指数(速報値)

2018年10月5日

-先行CI前月差+0.5と3カ月ぶり上昇、一致CI前月差+1.4と4カ月ぶり上昇-
-先行DI・22.2%で50%割れだが、一致DI・64.3%で景気分岐点50%超え-
-一致CI3カ月、7カ月後方移動平均ともに上昇に。基調判断23カ月連続「改善」-

●8月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは前月差+0.5と3カ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、マネーストックの3系列が前月差プラス寄与に、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差マイナス寄与になった。

●一致CIは前月差+1.4と4カ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業の5系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の2系列が前月差マイナス寄与になった。 

●8月分の一致CIの指数水準は117.5になった。なお、直近のピークは17年12月分の119.0で、足元の水準は、1.5ポイント足りない。 

●一致CIの3カ月後方移動平均は前月差+0.13ポイントで、2カ月ぶりの上昇になった。7カ月後方移動平均は前月差+0.35ポイント上昇し、3カ月ぶりの上昇になった。 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、15年5月分~16年9月分の1年5カ月の間、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」という同じ基調判断が続いていたが、16年10月分で「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年7月分まで同じ基調判断だった。 

●「改善を示している」という最上位の景況判断が、一つ下の「足踏みを示している」に転じるには、あと3カ月後方移動平均の前月差の下降幅の大きさ次第というところまで前回7月分では追い込まれたが、何とか持ち堪えた。8月分の景気動向指数では、前月差も、3カ月、7カ月後方移動平均ともに上昇に転じた。23カ月連続して「改善を示している」の判断が続いている。様々な下方要因があっても景気の基調は底堅い。

●12年12月から始まった「アベノミクス景気」は18年8月分で69カ月となり、戦後最長の「いざなみ景気」の73カ月に次ぐ、戦後2番目の長さの景気拡張局面を続けている。 

●基調判断が、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されるには「当月の前月差の符号がマイナス。かつ3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が振幅目安の1標準偏差分(▲1.02)以上」であることが必要だ。 

●また基調判断が、事後的に判定される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正されるには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(▲0.86)以上」であることが必要だ。 

●9月分で「足踏み」への下方修正になるには、まず9月分一致CIが前月差下降となることが条件だが、9月分の製造工業生産予測指数が前月比+2.7%、経産省の試算値・最頻値が+0.2%と増加の見込みなので、下降になる可能性は小さいだろう。万一、9月分が下降になった場合、過去の数字が変わらないとすれば、9月分一致CIの前月差が▲2.6の下降でも、3カ月後方移動平均の前月差の3カ月分累計は▲1.00となり、振幅目安の1標準偏差分(▲1.02)に届かない。「足踏み」への下方修正の可能性はないとみられる。

●今回8月分速報値では、先行DIは22.2%程度と2カ月連続して50%を下回った。一方、一致DIは64.3%で、こちらは景気判断の分岐点の50%を2カ月ぶりに上回った。 

●8月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は10月10日である。また在庫率関連データなどが10月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。 

●8月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。速報値段階の前月差寄与度は▲0.41程度である。また、DIの符号はマイナスである。他の系列の符号が変わらなければ一致DIは56.3%程度と速報値の64.3%から下方修正されると予測されるが、景気判断の分岐点である50%割れは回避されよう。改定値では確報値の数字が使われるが、確報値の発表日は10月23日であるので、どう修正されるか注目される。また、生産指数関連データなどが10月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。 

●9月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、消費者態度指数1系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。他の系列が中立ならば前月差は上昇になる可能性が大きいだろう。 

●また、9月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列は全系列がマイナス符号になることが判明している。9月分速報値段階の先行DIは0.0%以上55.6%以下が確定している。あと1系列マイナス符号になれば3カ月連続して景気判断の分岐点50%割れとなってしまう。