2018年7月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年8月31日

-7月分鉱工業生産指数前月比▲0.1%と3カ月連続減少。前年比は2カ月ぶり増加-
-平成30年7月豪雨や鉄鋼追加関税が響く。半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置の戻り弱い-
-7~9月期鉱工業生産指数2四半期ぶり前期比減少の可能性。GDPマイナス予想も-
-7月分景気動向指数一致CI前月差3カ月連続下降も、判断22カ月連続「改善」に-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・7月分速報値・前月比は▲0.1%と3カ月連続の減少になった。2010年を100とした季節調整値の水準は102.4である。一方、前年同月比は+2.3%で2カ月ぶりの増加になった。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、7月分の前月比は最頻値で+0.2%。90%の確率に収まる範囲で▲0.8%~+1.2%となっていた。前月比▲0.1%は、先行き試算値90%の確率に収まる範囲ではあるがやや弱めの数字である。

●7月分速報値の生産指数をみると、化学工業(除.医薬品)、電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業等の7業種が前月比増加、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、鉄鋼業等の8業種が前月比減少となった。

●7月分で最も減少寄与が大きかった「輸送機械工業」の要因について、「欧米向け輸出が低下したことに加え、やはり7月の西日本豪雨の影響」と経済産業省がHP上で分析している。

●また、「はん用・生産用・業務用機械工業」では「増産計画の主役であった、半導体・フラットパネル製造装置の生産回復の勢いが弱く、他の機械類の減産を補えなかったようです。また、一部の建設機械類については、豪雨の影響で部品供給に支障が」あったと経済産業省は分析している。

●「鉄鋼業」について、経済産業省は「アメリカの鉄鋼輸入に対する追加関税の影響はやはり出てきて」いること、また「一部については、台風の影響で、工場操業に支障が出て」いたと指摘している。日本鉄鋼連盟が公表している7月分粗鋼生産が3カ月ぶりに前年同月比で減少したのは、平成30年7月豪雨の影響で日新製鋼やJFEスチールの製鉄所が一部で生産を停止した影響があると報じられた。

●7月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲1.9%と2カ月ぶりに減少した。前年同月比は+1.3%になり、2カ月ぶりに増加となった。

●7月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲0.2%と2カ月連続で前月比減少となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+2.8%と10カ月連続の増加となった。

●7月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+0.4%で3カ月連続前月比上昇となった。業種別にみると、電子部品・デバイス工業の在庫率指数が前月比+3.6%と6カ月連続上昇し157.0になった。今後の動向を注視したい局面だ。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.6%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.8%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.8%、在庫が同▲2.5%だった。17年10~12月期では出荷の前年比が+3.1%、在庫が同+1.9%と「在庫積み増し局面」だった。

●18年1~3月期では出荷の前年比が+1.5%、在庫が同+3.9%と「在庫積み上がり局面」に入っていたが、18年4~6月期も出荷の前年比が+2.2%、在庫が同+2.4%と、「在庫積み増し局面」には戻れずに「在庫積み上がり局面」のままになった。18年7月も出荷の前年比が+1.3%、在庫が同+2.8%と「在庫積み上がり局面」である。

●鉱工業生産指数の先行き試算値でみると、8月分の前月比は最頻値で+1.2%。90%の確率に収まる範囲で+0.1%~+2.2%となっている。4カ月ぶりの増加にはなりそうだ。

●先行きの鉱工業生産指数8月分を先行き試算値最頻値前月比(+1.2%)で、9月分を前月比(+0.5%:製造工業予測指数の前月比)で延長した場合は、7~9月期の前期比は▲0.4%と2四半期ぶりの減少になってしまう。

●また、先行きの鉱工業生産指数8月分と9月分を製造工業予測指数の前月比(+5.6%、+0.5%)で延長した場合は、7~9月期の前期比は+2.5%になる。こちらのケースでは7~9月期の生産は2四半期連続の前期比増加になる。

●なお、当面の生産動向の懸念材料として、引き続き、トランプ大統領が保護主義的な政策を打ち出していることや、豪雨、台風などの天候要因などが指摘されよう。

●経済産業省の基調判断は16年11月分では前月までの表現から「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になっていた。17年11月分では「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、今回7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。

(7~9月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の7月分対4~6月分平均比は▲8.5%の減少になった。非耐久消費財出荷指数は同+1.7%の増加だ。GDPの個人消費算出には直接使用されないが、同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の7月分対4~6月分平均比は+0.5%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7~9月期へのゲタは+0.4%である。乗用車販売台数の7月分対4~6月分平均比は▲0.8%の減少だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の7~9月期へのゲタは0.0%である。7~9月期第1次速報値では個人消費の前期比が2四半期連続プラスの伸び率になるかどうかは微妙な状況だ。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の7月分対4~6月分平均比は▲4.3%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲3.0%の減少である。また、建設財は同▲1.0%の減少になった。7月分の供給サイドから推計される7~9月期第1次速報値の実質設備投資・前期比はマイナスの伸び率になる可能性があるとみられる。 

●実質輸出入の動向をみると輸出の7月分対4~6月分平均比は▲1.5%の減少になった。輸入は同+1.3%の増加になっている。モノの7月分の動向だけからみると、7~9月期第1次速報値の外需はマイナス寄与になる可能性がありそうだ。

●11月14日に発表される7~9月期の実質GDP第1次速報値・前期比は、マイナス成長になる可能性さえ現時点ではある微妙な状況だろう。

(7月分景気動向指数予測)

 ●7月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.7程度と2カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、8月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、全系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列の前月差はプラス寄与になっても、マイナス寄与になってもさほど大きくはないと予測した。

●7月分の一致CIは前月差▲0.7程度と3カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、商業販売額指数・卸売業1系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の6系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年6月分まで21カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきている。7月分一致CIは、3カ月後方移動平均の前月差は下降になり、前月差も下降が見込まれるものの▲0.60程度にとどまり▲1.02に届かないため、7月分で「改善を示している」の判断は22カ月連続となろう。

●7月分の先行DIは22.2%程度と2カ月連続して景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、8月31日午前9時時点で数値が判明している8系列中、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは22.2%以上33.3%以下になることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測した。

●7月分の一致DIは21.4%程度と景気判断の分岐点の50%を4カ月ぶりに下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、有効求人倍率1系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業1系列が保合い。生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列がマイナス符号になると予測した。