ホームマーケット経済指標解説2018年7月分全国消費者物価指数について

2018年7月分全国消費者物価指数について

2018年8月24日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.8%で不変、19カ月連続上昇―
―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前月比+0.1%、2カ月連続上昇―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比13カ月連続上昇だが、+0.3%に上昇―

●7月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.0となり、前年同月比は+0.9%と6月分より0.2ポイント上昇し、22カ月連続の上昇となった。一方、前月比(季節調整値)は+0.3%で3カ月連続上昇となった。

●7月分のエネルギー全体の前月比は▲0.1%下落したが、前年同月比は+7.3%と6月分と同じ上昇率になった。総合指数の前年同月比に対するエネルギーの寄与度差は0.00%と総合指数と生鮮食品を除く総合指数の前年同月比中立要因になった。 

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はまちまちだった。原油市況や為替動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+2.5%と6月分の+3.1%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%とマイナスになった。都市ガス代の前年同月比は+3.1%と、6月分の+3.2%から上昇率がやや鈍化したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。石油製品をみると、前回6月分で+1.5%だったプロパンガスの前年同月比は今回7月分では+1.7%に上昇したものの、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、寄与度差がプラスに働いたのは、灯油とガソリンだ。灯油の前年同月比は、6月分では+20.5%だったが、7月分では+22.2%に上昇した。前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。ガソリンの前年同月比は、6月分では+16.1%だったが、今回7月分では+16.8%の上昇率になり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%になった。 

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は7月分では前年同月比▲2.4%と、6月分の前年同月比▲2.9%から下落率が縮小したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家庭用耐久財は前年同月比▲2.1%で、こちらも6月分の前年同月比▲2.9%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。 

●7月分の宿泊料は前年同月比+1.9%で、6月分の前年同月比+2.1%から上昇率が鈍化したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、6月分は前年同月比+11.7%と2ケタの上昇率だった外国パック旅行費は、7月分では同+4.0%まで伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。 

●7月分で前年同月比の上昇に寄与したのは、生鮮食品だった。猛暑や豪雨の影響が出たとみられる。7月分では前年同月比+4.3%と、6月分の前年同月比▲1.2%の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.23%だった。 

●7月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.7%と6月分の同+1.1%から伸びを高め、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、+0.28%と物価上昇要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.5%と6月分の+1.4%から僅かに上昇率が高まり、6月分から7月分への寄与度差は+0.05%だった。

●7月分のサービスの前年同月比は+0.2%と6月分の同+0.3%から上昇率がやや鈍化し、6月分から7月分への寄与度差は▲0.03%だった。内訳は公共サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%で、一般サービスの寄与度差が▲0.03%である。外食の総合指数・前年同月比は6月分・7月分とも+1.0%で寄与度差は0.00%。影響したのは通信・教養娯楽関連サービスだった。総合指数・前年同月比は6月分▲0.7%から7月分▲1.2%へと下落率が拡大し、寄与度差が▲0.03%だった。 

●また、実質賃金等の計算に使用する7月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+1.1%と6月分の+0.8%より上昇した。生鮮食品の寄与が大きい。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.25%だった。7月分の実質賃金・前年同月比の押し下げ要因になる。なお7月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で6月分同▲0.2%と同じだった。詳細にみると持家の帰属家賃(木造)前年同月比が7月分▲0.2%で6月分と同じで、持家の帰属家賃(非木造)前年同月比が7月分▲0.1%で6月分同0.0%の横這いから下落になった。持家の帰属家賃の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●7月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数で100.9、前年同月比は、6月分と同じ+0.8%となった。前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、19カ月連続の上昇になった。

●7月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は+0.1%だった。前月比は2カ月連続プラスになった。消費者物価の判断に関して、季節調整値を中心に判断している「月例経済報告」では7月は「このところ緩やかに上昇している」で変わらなかった。今回の結果が反映される8月の「月例経済報告」でも判断は変わらないと思われる。 

●7月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.9で、前年同月比は6月分の+0.2%から若干上昇し、+0.3%になった。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、17年8月分以降は+0.2%~+0.5%の間で推移し、13カ月連続の上昇になった。前月比(季節調整値)は+0.1%と2カ月ぶりにプラスになった。

 ●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では16年10~12月期▲0.3%の後、17年1~3月期は+0.1%とプラスに転じ、4~6月期は+0.4%、7~9月期は+0.7%、10~12月期は+0.7%、18年1~3月期+0.3%と5四半期連続のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.41%、17年1~3月期+0.80%、4~6月期は+1.17%、7~9月期は+1.28%、10~12月期+1.57%、18年1~3月期+1.71%まで6四半期連続でプラスになっている。需給ギャップ(GDPギャップ)の改善基調はやがて物価上昇要因になると思われる。

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年6月分で86.2%と16年9月の調査開始以来最高になったが7月分で77.1%、8月分で75.7%と鈍化している。まお、暮らし向きに関する8月分の回答もパッとしない状況だ。直近の消費者の予想物価上昇率には頭打ち傾向が見えている。 

●6月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」で1年後が3月調査から0.1ポイント上昇し0.9%になった。3年後と5年後は3月調査と同じ前年比上昇率で下げ止まり感が出ている。また、「販売価格の見通し」では5年後が+1.5%と3期連続で0.1ポイントずつ上昇率が高まった。また1年後と3年後は3月調査と同じ伸び率で下げ止まり感が出ていた。 

●ESPフォーキャスト調査・8月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、18年7~9月期+0.90%、10~12月期は+0.92%、19年1~3月期は+0.95%、4~6月期+0.91%、7~9月期は+0.89%と推移し、19年10~12月期は消費増税を受けて1.77%に上昇(消費増税の影響除くと+0.88%)となっている。しばらく+0.9%程度の伸び率が続くという予測だ。