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2018年5月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年6月29日

-5月分鉱工業生産指数前月比▲0.2%4カ月ぶり減少。前年比は19カ月連続増加-
-4~6月期の生産は2四半期ぶり前期比増加の可能性大で7~9月期も増加見込み-
-4~6月期実質GDPは、設備投資など主要項目増加で2四半期ぶり前期比プラスか-
-5月分景気動向指数一致CI前月差下降だが、判断は20カ月連続「改善」に-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・5月分速報値・前月比は▲0.2%と4カ月ぶりの減少になった。2010年を100とした季節調整値の水準は104.4である。一方、前年同月比は+4.2%で19カ月連続の増加になった。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、5月分の前月比は最頻値で▲1.3%、90%の確率に収まる範囲で▲2.3%~▲0.3%となっていた。前月比▲0.2%は、先行き試算値90%の確率に収まる範囲の上限▲0.3%を上回る数字である。

●5月分速報値の生産指数をみると、電子部品・デバイス工業、はん用・生産用・業務用機械工業、情報通信機械工業等の8業種が前月比増加、輸送機械工業、鉄鋼業、電気機械工業等の6業種が前月比減少、化学工業(除、医薬品)が横這いとなった。

●5月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲1.6%と4カ月ぶりに減少した。前年同月比は+3.2%になり、19カ月連続で増加した。

●5月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+0.6%で2カ月ぶりに前月比増加となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+2.5%と8カ月連続の増加となった。

●5月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+0.2%で2カ月ぶりに前月比上昇となった。業種別にみると、電子部品・デバイス工業の在庫率指数が前月比+5.4%と大幅に上昇し144.1になったことは、最近のスマホ需要が一服していることの影響ではないかと懸念される。但し、IoT等の新たな需要などのプラス面もあるので今後の動向を注視したい。また、同じく在庫調整局面にある化学工業(除、医薬品)の在庫率指数は前月比▲5.1%と2カ月連続で低下している。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.6%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.8%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.8%、在庫が同▲2.5%だった。17年10~12月期では出荷の前年比が+3.1%、在庫が同+1.9%と「在庫積み増し局面」だった。

●18年1~3月期では出荷の前年比が+1.5%、在庫が同+3.9%と「在庫積み上がり局面」に入っていたが、18年4~5月分では出荷の前年比が+3.4%、在庫が同+2.5%と「在庫積み増し局面」に戻った。

●鉱工業生産指数の先行き試算値でみると、6月分の前月比は最頻値で▲0.1%。90%の確率に収まる範囲で▲1.1%~+0.9%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数6月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.1%)で延長した場合は、4~6月期の前期比は+1.9%になる。

●先行きの鉱工業生産指数6月分を前月比(+0.4%:製造工業予測指数の前月比)で延長した場合、4~6月期の前期比は+2.0%になる。2ケースとも4~6月期の生産は2四半期ぶりの前期比増加に戻ることを示唆している数字だろう。

●さらに、この2ケースで、先行き7月分を前月比(+0.8%:製造工業予測指数の前月比)で、8・9月分を各々前月比0.0%で延長した場合は、7~9月期の前期比は各々+0.8%、+1.0%の増加になる。7~9月期の前期比は今のところ2四半期連続の増加になる可能性が大きいようだ。

●なお、先行きの生産動向の懸念材料として、トランプ大統領が保護主義的な政策を打ち出していることが指摘される。

●経済産業省の基調判断は16年11月分では前月までの表現から「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になっていた。17年11月分では「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降、今回5月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっている。

(4~6月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4~5月分平均の対1~3月分平均比は+5.6%の増加になった。非耐久消費財出荷指数は同+2.7%の増加だ。GDPの個人消費算出には直接使用されないが、同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の4~5月分平均の対1~3月分平均比は+0.2%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の4月分の対1~3月分平均比は▲1.9%の減少だ。乗用車販売台数の4~5月分平均の対1~3月分平均比は+6.6%の増加だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の4月分の対1~3月分平均比は+0.8%である。まだ6月分について予断を持つことなく見る必要はあるが、4~6月期第1次速報値では個人消費の前期比は2四半期ぶりにプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の4~5月分平均の対1~3月分平均比は+0.3%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+1.7%の増加である。また、建設財は同+4.1%の増加になった。供給サイドから推計される4~6月期第1次速報値の実質設備投資・前期比はプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の4~5月分平均の対1~3月分平均比は+1.5%の増加になった。輸入は同▲0.2%の減少になっている。モノの4~5月分の動向だけからみると、4~6月期第1次速報値の外需はプラス寄与になりそうだ。

●8月13日に発表される4~6月期の実質GDP第1次速報値・前期比は個人消費、設備投資、輸出の主要項目がプラス寄与となり、しっかりしたプラスの伸び率になる可能性があるとみる。

(5月分景気動向指数予測)

●5月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差0.0程度と横這いになると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、6月29日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数の3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●5月分の一致CIは前月差▲1.5程度と4カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、商業販売額指数・卸売業1系列が前月差寄与ゼロに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の6系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●景気動向指数を使った基調判断は、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年4月分まで同じ最高の基調判断で推移してきている。5月分の一致CI前月差は下降とみるが、一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は+0.07程度と2カ月連続の上昇になると予測する。このため20カ月連続して「改善を示している」という同じ判断が続くことになろう。景気の基調はしっかりしているとみられる。

●5月分の先行DIは72.2%程度と50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、マネーストック1系列が保合いに、鉱工業生産財在庫率指数1系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは72.2%以上83.3%以下で50%超になることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測した。 

●5月分の一致DIは71.4%程度と予測する。2カ月連続して景気判断の分岐点の50%を上回ることになろう。速報値からデータが利用可能な7系列は、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の5系列がプラス符号に耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の2系列がマイナス符号になると予測した。