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2018年4~6月期法人企業統計・設備投資などについて

2018年9月3日

―設備投資(除くソフトウェア)前期比+6.9%、前年同期比+14.0%―
―4~6月期実質GDP成長率、第2次速報値は設備投資主因に上方修正に―

●18年4~6月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+14.0%と1~3月期の前年同期比+2.1%からは11.9ポイントと伸び率が大幅に高まり、7四半期連続の増加になった。前期比は+6.9%で4四半期連続の増加になった。また、ソフトウェア投資額を含むベースでは4~6月期の全産業の前年同期比は+12.8%だった。1~3月期の前年同期比+3.4%からは9.4ポイント伸び率が高まった。

●資本金1,000万円以上1億円未満の中小企業の前年同期比は▲1.2%で減少したが、1~3月期の前年同期比▲4.2%からは3.0ポイント改善した。資本金1億円以上10億円未満の前年同期比は+3.5%で、1~3月期の前年同期比+2.4%から1.1ポイント改善した。一方、資本金10億円以上の大企業では前年同期比は+23.5%と、1~3月期の前年同期比+6.8%からは16.7ポイントと大幅に改善した。しっかりした内容だった日銀短観や政策投資銀行の18年度の設備投資計画調査と整合的な結果となった。

●供給サイドのデータに基づいて算出した18年4~6月期GDP第1次速報値では、名目設備投資の前年同期比は+5.1%で1~3月期の+3.7%から増加率が1.4ポイント改善していたが、今回の法人企業統計の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の1~3月期から4~6月期への前年同期比の改善幅は11.9ポイントとGDPに比べ法人企業統計の方が大きい。18年4~6月期GDP第1次速報値の名目設備投資の前期比(季節調整済み)は+2.0%と7四半期連続の増加であるが、法人企業統計の前期比は+6.9%でこちらは4四半期連続の増加だった。 

●4~6月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲13.5%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は▲30.9%であると公表されている。4~6月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の名目原系列前期比は単純に計算すると、▲27.0%で3.9ポイント増加率が大きくなった。 

●その他のデータをみると、4~6月期の個人企業の設備投資は業種により動きはまちまちだが総じてみると製造業中心に上方修正要因になりそうだ。また、6月分が4・5月分よりしっかりした前年同月比が反映されるソフトウェア開発・プログラム作成も上方修正要因になりそうだ。 

●なお、GDPベースの設備投資の算出には固定資産の当期末・前期末の関係などを考慮する断層補正が加味されるが、大企業の前年同期比の改善が大きいことから全体としてはそれほど鈍化要因としては働かないとみた。

(在庫投資)

●法人企業統計の仕掛品在庫をみると18年4~6月期は1兆9,419億円で17年4~6月期の2兆0,417億円から▲999億円の減少となった。原材料在庫は18年4~6月期は1兆3,298億円で17年4~6月期の5,992億円から7,307億円の増加となった。合わせて6,308億円、前年同期に比べ増加した。 

●一方、18年4~6月期GDP第1次速報値の名目在庫投資・原数値は1兆6,604億円で17年4~6月期の1兆1,386億円から5,218億円の増加であった。18年4~6月期GDP第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.4%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、全てプラス寄与で、寄与の大きい順に流通在庫、製品在庫、原材料在庫、仕掛品在庫となっている模様だ。今回の法人企業統計からみると、仕掛品在庫は下方修正だが、原材料在庫は大幅上方修正になるとみられる。

●18年4~6月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は0.0%だった。民間在庫投資の内訳をみると、流通在庫は前期比寄与度+0.1%、製品在庫が前期比寄与度▲0.0%、また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は+0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同▲0.1%だった。同じ+0.1%でも原材料在庫の寄与度の方が大きいということだった。

(18年4~6月期GDP・第2次速報値)

●18年4~6月期GDP第2次速報値では、実質設備投資は前期比+2.8%程度と第1次速報値の同+1.3%から上方修正になるとみた。また、実質在庫投資の前期比寄与度は0.0%程度で、第1次速報値と同程度になろう。原材料在庫の上方修正に在庫投資全体の寄与度を変える力はないとみた。 

●また、公共工事出来高の前年同月比は4月分+0.3%、5月分▲3.3%だったが、6月分の伸び率は▲1.7%であった。このことからみて第2次速報値での実質公共投資の前期比は▲0.1%程度と第1次速報値と同程度になるとみた。 

●18年4~6月期GDP第2次速報値で、実質GDPは前期比+0.7%程度、前期比年率+2.9%程度と予測する。季節調整替えなどの影響もあり多少の振れはあるとしても、第1次速報値の前期比+0.5%、前期比年率+1.9%から上方修正されるとみた。