ホームマーケット経済指標解説2018年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2018年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2018年5月16日

―実質GDP成長率は前期比年率▲0.6%、9四半期ぶりのマイナス成長―
―冬場の寒波・大雪で個人消費が鈍るなど、季節的要因が大きく影響―
―直近の経済統計は回復基調のもの多く、4~6月期にはプラス成長に戻りそう―
―18年度政府経済見通し+1.8%は各前期比年率+2.7%程度必要で、下振れか―

●18年1~3月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比▲0.2%、前期比年率▲0.6%となった。15年10~12月期以来、9四半期ぶりのマイナス成長になった。 

●1~3月期は外需の前期比寄与度は+0.1%で、2四半期ぶりのプラス寄与になった。一方、内需は同▲0.2%と2四半期ぶりのマイナス寄与になった。民間需要の前期比寄与度は▲0.3%で、個人消費、設備投資とも前期比寄与度は▲0.0%と若干のマイナスなった。在庫投資の同▲0.1%でマイナスに寄与した。公的需要の前期比寄与度は0.0%である。 

●1~3月期の名目GDP成長率は前期比▲0.4%、前期比年率▲1.5%と、6四半期ぶりのマイナス成長になった。

●1~3月期の実質個人消費・前期比は▲0.0%と2四半期ぶりの減少になった。寒波などの影響で野菜価格が高騰し、ガソリン価格なども上昇した結果、消費者心理が冷え込み、消費者の節約志向が高まった感がある。 

●1~3月期の実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は▲0.3%と2四半期ぶりの減少になった。半耐久財の前期比は▲2.0%と3四半期ぶりの減少に、非耐久財の前期比は▲0.3%と3四半期連続の減少になったが、サービスの前期比は+0.3%と2四半期連続の増加になった。 

●1~3月期では、実質雇用者報酬の前期比が+0.7%と2四半期ぶりの増加になった。 

●1~3月期の実質設備投資・前期比は▲0.1%と6四半期ぶりの減少になった。名目の前期比(季節調整済み)は▲0.0%とこちらも6四半期ぶりの減少になった。 

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+11.4%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+26.4%であると公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、1~3月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。なお、第1次速報値から第2次速報値への改定幅の絶対値平均(10年4~6四半期以降)は0.18%ということであり、法人企業統計次第で、増加に転じる可能性も十分ありそうだ。 

●1~3月期実質住宅投資は前期比▲2.1%と、3四半期連続の減少になった。金融機関のアパートローンに関する融資態度が抑制的になったことから、貸家の着工が減少傾向にある。 

●1~3月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、流通在庫は前期比寄与度+0.1%、製品在庫が前期比寄与度+0.0%、また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は▲0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同▲0.1%だった。なお、原材料在庫の方がマイナス寄与度は大きいということだ。 

●1~3月期実質政府最終消費支出は前期比+0.0%と微増だが、2四半期ぶりの増加。実質公共投資も前期比+0.0%と微増だが、3四半期ぶりの増加になった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%であった。 

●1~3月期外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.1%と2四半期ぶりのプラス寄与になった。実質輸出は前期比+0.6%と3四半期連続の増加になった。財は前期比+1.2%と3四半期連続の増加になったが、サービスは前期比▲1.7%と2四半期ぶりの減少になった。実質輸入の前期比は+0.3%と2四半期連続の増加になった。財に関しては前期比+0.3%と2四半期連続の増加、サービスは前期比+0.4%とこちらも2四半期連続の増加になった。

●実質GDPに海外からの実質純所得と交易利得を加えた実質GNI(国民総所得)は1~3月期・前期比▲0.7%と2四半期連続の減少になった。原油価格の上昇などで交易利得が▲0.3%分押し下げている。 

●1~3月期のGDPデフレーターの前年同期比は+0.5%と10~12月期の+0.1%から伸び率を高め、3四半期連続のプラスの伸び率になった。控除項目の輸入のデフレーター・前年同期比が+2.7%と10~12月期の+8.5%から鈍化したことも影響している。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.9%と4四半期連続のプラスの伸び率になった。一方、1~3月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは▲0.2%で、2四半期連続してマイナスの伸び率になった。国内需要デフレーターの前期比は+0.1%と4四半期連続のプラスの伸び率になった。 

●17年度の実質GDP成長率は+1.5%となった。15年度以降3年度連続のプラス成長だ。 

●3月分鉱工業生産指数、4月分製造工業予測指数、4月の景気ウォッチャー調査、主要百貨店売上高など、直近の経済統計は回復基調のものが多く、4~6月期にはプラス成長に戻りそうだ。 

●政府経済見通しの18年度実質GDP成長率見通し+1.8%を達成するには各四半期の前期比年率が+2.7%程度と高めの伸び率になることが必要でハードルが高い。ESPフォーキャスト調査(5月調査)では18年度実質GDP成長率見通しの平均値は+1.21%、高位8人の平均でも、+1.46%であり、実績は政府見通しの+1.8%を下回りそうだ。ちなみに、17年度から18年度へのゲタは+0.1%だ。

●6月8日に発表される1~3月期第2次速報値では、6月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定される。 

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.3%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、プラス寄与は大きい順に原材料在庫、製品在庫。マイナス寄与は大きい順に流通在庫、仕掛品在庫である模様だ。