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2017年10月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年11月30日

-10月分鉱工業生産指数は前月比プラスも、台風の影響などで小幅な増加率-
-基調判断は12カ月連続して「生産は持ち直しの動きがみられる」-
-予測指数からみて10-12月期鉱工業生産指数は7四半期連続前期比増加-
-10月分一致CI前月差下降でも3カ月移動平均上昇、景気判断は13カ月連続「改善」か-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・10月分速報値前月比は+0.5%と2カ月ぶりの増加になったが、10月10日提出の10月分製造工業予測指数の前月比が+4.7%と大幅な伸び率だったことに比べ、かなり小幅な伸び率だった。鉱工業生産指数10月分速報値の季節調整値の水準は103.0になった。前年同月比は+5.9%で12カ月連続の増加になった。

●経済産業省はホームページで、「10月初旬段階の生産計画の調査結果では、10月は前月比4.7%の上昇が見込まれるという結果でしたが、はん用・生産用・業務用機械工業や電気機械工業などの生産計画が大きく下方修正され、10月の生産は想定外に小さい伸びに留まりました。」と述べている。10月は日本に上陸あるいは接近した2つの台風の他に、フィリピンからベトナム方面に抜けた台風もあり、船が着かない、船が出ないと言う状況が10月後半にかけての生産の下振れにつながったようだ。

●なお、一部自動車メーカーの不正検査の影響による自動車生産停止の影響が懸念されたが、生産統計でみるかぎり、影響は限定的だったようだ。

●10月分速報値の生産指数をみると、15業種のうち、電気機械工業、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業など8業種が増加し、窯業・土石製品工業1業種が横這い、化学工業(除.医薬品)、石油・石炭製品工業、電子部品・デバイス工業など6業種が前月比減少となった。

●10月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲0.5%と2カ月連続減少、前年同月比は+2.6%。前年同月比は、生産指数同様に、昨年11月分から12カ月連続して増加が続いている。

●10月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+3.1%で6カ月ぶりの前月比増加となった。出荷指数や在庫指数にも台風の影響で船での輸出が出来ず、出荷待ちの在庫が増えたことが反映している。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.9%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲2.4%になり、引き続き「在庫積み増し局面」にある状況だ。17年10月期では出荷の前年比が+2.6%、在庫が同+1.9%となったが、船待ち在庫による一時的在庫増とみられ、10~12月期全体で局面判断する必要があろう。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、10月分の前月比は最頻値で+2.4%、90%の確率に収まる範囲で+1.4%~+3.4%とプラスの伸び率となっていた。10月分前月比実績の+0.5%は試算値の予想範囲の下限を0.9ポイントも下回った。

●製造工業生産予測指数11月分前月比は+2.8%、12月分前月比は+3.5%で、2カ月連続の増加見込みである。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、11月分の前月比は最頻値で▲0.1%、90%の確率に収まる範囲で▲1.1%~+0.9%となっている。10月分の天候要因の反動と言う特殊要因を考慮すれば、プラスの伸び率になる可能性が大きいだろう。

●先行きの鉱工業生産指数11月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.1%)で延長し、12月分を製造工業予測指数前月比(+3.5%)で延長した場合は10~12月期の前期比は+1.6%の増加になる見込みだ。

●先行きの鉱工業生産指数10月分を製造工業予測指数前月比(+2.8%)で延長し、12月分を製造工業予測指数前月比(+3.5%)で延長した場合は10~12月期の前期比は+3.6%の増加になる見込みだ。11・12月分が横這いでも10~12月期の前期比は+0.5%の増加になる。17年10~12月期まで7四半期連続前期比プラスになる可能性が大きいと考えられる。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年9月分に続き、今回17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になった。この判断は12カ月連続だ。

(10月分景気動向指数予測)

●10月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.3程度と2カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、11月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列だ。日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数の3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新規求人数と新設住宅着工床面積の2系列は前月差マイナス寄与になると予測した。 

●10月分の一致CIは前月差▲0.2程度と2カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、11月30日午前9時時点で数値が判明している6系列では、生産指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差プラス寄与に、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列が前月差マイナス寄与になることがわかっている。残る有効求人倍率1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分で、それまで1年5カ月間もの間続いた「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~17年9月分も同じ基調判断になった。10月分は一致CIの前月差が予測通りなら、3カ月移動平均の前月差は上昇になるとみられ、「改善を示している」という判断が13カ月連続で続くことになろう。

●10月分の先行DIは72.2%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、11月30日午前9時時点で数値が判明している、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列では、鉱工業生産財在庫率指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数1系列がマイナス符号に、消費者態度指数1系列が保合いになることが判明している。先行DIは61.1%以上83.3%以下と50%を上回ることが確定している。残る2系列では、新規求人数がプラス符号、新設住宅着工床面積がマイナス符号になると予測する。

●10月分の一致DIは57.1%程度と、景気判断の分岐点である50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、11月30日午前9時時点で数値が判明している6系列では、生産指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の3系列がプラス符号に、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列がマイナス符号になることがわかっている。残る、有効求人倍率は、10月分は1.53倍と7月分の1.52倍を上回りプラス符号になると予測する。