2017年7月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年8月31日

-7月分鉱工業生産指数は前月比減少に転じ、前年同月比は増加基調継続-
-基調判断は9カ月連続して「生産は持ち直しの動きがみられる」-
-7月期の在庫サイクルは「在庫積み増し局面」、在庫の前年比はマイナス-
-7月分一致CI前月差と3カ月移動平均前月差下降でも、景気判断10カ月連続「改善」-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数7月分速報値前月比は▲0.8%と2カ月ぶりの減少になった。6月分が前月比+2.2%だったので、反動的な低下としては小幅である。鉱工業生産指数7月分速報値の季節調整値は101.5になった。前年同月比は+4.7%で9カ月連続の増加になった。

●鉱工業生産指数は、昨年12月分以降、前月比は増減を繰り返しているが前年同月比は増加が継続している。前月比も、移動平均をとるなどして均してみると増加基調が続いている。はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、化学工業(除.医薬品)といった業種は同じパターンである。

●東日本大震災があった2011年前後で電力不足などへの対応から月ごとの生産パターンが大きく変わった可能性がある。鉱工業生産指数の季節指数は8年間のデータで算出される。東日本大震災前後の異なる生産パターンが季節指数に反映されているため、前月比の振れが生じている可能性が大きいとみられる。もう数年経つと季節指数も東日本大震災後のパターンを反映し、落ち着いたものになるのではないかと思われる。それまで少しの間は、均してみるなどの工夫がデータを読むときに必要になろう。

●7月分速報値の生産指数をみると、15業種のうち電子部品・デバイス工業、窯業・土石製品工業、石油・石炭製品工業など4業種が増加し、はん用・生産用・業務用機械工業、電気機械工業、化学工業(除.医薬品)など11業種が前月比減少となった。

●7月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲0.7%、前年同月比は4.1%で、生産指数同様に、昨年11月分から9カ月連続して前年同月比増加が続いている。

●7月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.2%で2カ月連続して前月比減少が続いている。昨年12月分から4月分まで5カ月連続して前月比増加と積みあがった在庫のかなりの部分が解消され、7月分速報値の季節調整値は107.8で1月分の107.4以来の水準まで低下した。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、7月分の前月比は最頻値で▲0.3%、90%の確率に収まる範囲で▲1.3%~+0.7%となっていた。7月分前月比実績の▲0.8%は試算値の予想範囲内の低い方の前月比になった。

●製造工業生産予測指数8月分前月比は+6.0%、9月分前月比は▲3.1%で、増減を繰り返している。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、8月分の前月比は最頻値で+1.4%、90%の確率に収まる範囲で+0.4%~+2.4%の伸び率となっている。製造工業生産予測指数前月比+6.0%よりはだいぶ低いがプラスの伸び率が見込まれる。

●今回、経済産業省は初めて9月分の見通しに関して「8月の生産がこの程度の伸びとなれば、9月の生産水準は8月水準に対し横ばいないし微減という程度になるものと思われます」とコメントした。これは7月分の生産指数を、8月分は最頻値の前月比+1.4%で、9月分を予測指数の前月比▲3.1%で延長すると「7~9月期の前期比が▲0.7%程度になり6四半期ぶりの減少になる」という表層的な分析がなされることを回避したものではないかと推察される。

●先行きの鉱工業生産指数8月分を先行き試算値最頻値前月比(+1.4%)、9月分は前月比▲0.1%の微減で延長した場合は7~9月期の前期比は+0.3%の増加になる見込みだ。一方、8月分・9月分を製造工業予測指数前月比(+6.0%、▲3.1%)で延長した場合は7~9月期の前期比は+2.4%の増加になる見込みだ。17年7~9月期は6四半期連続前期比プラスになる可能性の方が大きいと考える。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年6月分に続き、今回17年7月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になった。この判断は9カ月連続だ。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、16年4~6月期(出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同▲0.5%)までは45度線を上回ったままだった。16年7~9月期で出荷の前年比が▲0.5%、在庫が同▲2.7%と45度線を下回った。10~12月期では出荷の前年比が+1.8%、在庫が同▲5.3%とさらに右下に動いた。17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.9%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7月では出荷の前年比が+4.1%、在庫が同▲2.4%になり、原点方向に近づく動きになった。

(7月分景気動向指数予測)

●7月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.7程度と3カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、8月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列だ。消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、東証株価指数の4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●7月分の一致CIは前月差▲1.3程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。最近、前月差は交互に上昇・下降を繰り返しているが、採用系列の生産指数(鉱工業)の影響を受けているとみられる。速報値からデータが利用可能な7系列の、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全てが前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分で、それまで1年5カ月間もの間続いた「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~17年6月分も同じ基調判断になった。7月分も、一致CIの前月差が予測通りなら3カ月移動平均の前月差が小幅下降にとどまるとみられるので、「改善を示している」という判断が10カ月連続で続くことになろう。

●7月分の先行DIは61.1%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、8月31日午前9時時点で数値が判明している8系列中、最終需要財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の5系列がプラス符号、マネーストック1系列が保合い、鉱工業生産財在庫率指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは61.1%以上72.2%以下と50%を上回ることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測する。

●7月分の一致DIは28.6%程度と、景気判断の分岐点である50%を6カ月ぶりに下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の2系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業の5系列がマイナス符号になると予測する。

(7~9月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の7月分対4~6月分平均比は▲2.9%の減少になった。また非耐久消費財出荷指数は同▲0.1%の減少だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の7月分対4~6月分平均比は+0.7%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7月分対4~6月分平均比は▲0.1%の減少だ。乗用車販売台数の7月分対4~6月分平均比は▲8.5%の減少だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の4~6月期から7~9月期へのゲタは+0.1%だ。8月の天候不順、北朝鮮のミサイル発射の消費者マインドへの影響など7~9月期の個人消費に影響を与えそうな不透明要素も多い。総合的に判断すると、7~9月期の個人消費の前期比は4~6月期の前期比+0.9%のようなしっかりしたプラスの伸び率になる可能性は小さいように思われる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の7月分対4~6月分平均比は▲0.4%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲4.3%の減少である。一方、建設財は同+1.2%の増加になった。また資本財(除.輸送機械)の生産予測指数は8月分前月比が+12.1%である。供給サイドから推計される7~9月期の実質設備投資・前期比の符号がどうなるかはまだはっきりしない状況だろう。

●実質輸出入の動向をみると輸出の7月分対4~6月分平均比は+1.7%の増加になった。輸入は同▲0.7%の減少になっている。7月分のモノの動向だけからみると、7~9月期の外需は2四半期ぶりにプラス寄与になりそうなスタートだ。

●7~9月期の実質GDP第1次速報値は、11月15日に発表される。